見出し画像

後悔なんてしなくていい

先日、イリヤンと国際コンクール声楽部門の本選の様子をYouTubeで観ていました。

それを眺めながらふと、「私は年齢的にも、これから先こういう大きなコンクールに挑戦することはないんだろうな。オペラ歌手として大きな歌劇場で歌っていくこともないんだろうな。」と呟いている自分がいました。

私は基本的には前向きで、生徒さんたちにも「夢は大きく持った方が良い!」と言い続けていますが、そんな私ですらも、現実を悟るように思ってしまったんですよね。

それを遮るようにものすごい熱量でイリヤンがこう言いました。

「君の人生で後悔することなんてひとつもないんだよ。後悔することなんてなにもない。後悔なんてする必要がない。後悔しちゃだめだ。」

続けてイリヤンが話してくれたことです。


もし君が15年前にフランコに出会っていなかったら、そして声を学び直さなかったら、君はとっくの昔に歌うことすらできなくなっていたはずだよ。

君がそう悟ったことは、ある意味大事な気づきかもしれない。コンクールに挑戦すること、大きな歌劇場で歌うこと。これが目標だとするならば、それを達成することは現実には難しいかもしれない。

だけど考えてみてごらん。君は今、しっかりと歌えているんだよ。それだけでなく指導だってできる。

それは君がここまで努力し続けてきたからだよ。

それにあのコンクールの本選で歌ってる人たちが、特別すごい人たちってわけでもない。顔や歌声にはFear(恐れ)が表れてる。技術や音楽が特別素晴らしいわけでもない。ただ運よく選ばれた人たちなだけだ。


僕は30歳過ぎまでは音楽家として順風満帆な人生を歩んでいた。
お金もたくさん稼いでいた。
エージェントも僕を売り出すことに力を入れていた。

あのまま順調に進んでいれば、今頃僕は、名実ともに世界トップのクラリネット奏者になっていただろう。

でも、事故で吹けなくなった。
そこから15年間苦しんだ。

苦しみながら、いろいろな経験を経て、今こうして演奏ができるまでになった。

だけどそれだけじゃなくて、僕には今、慢心でも自惚でもない、確かな自信があるんだ。

それは、『僕がひとりの人間を、世界トップクラスの音楽家に育て上げることができる』ということだ。

これこそが僕にとっての大きなachievement(功績)と言わずしてなんと言おう。

それは、今まで僕が苦しんだ経験があるからだ。
経験の中で培ってきたものが、全て今の指導に生かされているからだ。


僕たちは一緒に協力して、生徒たちを一流の音楽家に育てていくんだよ。
これからは指導を通して、光を見出していくんだよ。


以上が私とイリヤンとの会話です。

ときに現実を受け入れることも大事なことです。けれどもそれは、諦めるということでも、後ろ向きなことでもありません。

私たちは世の中で測られた価値に惑わされて、ある人を「成功者」と崇めたり、人や自分に批判的な目を向けることがあります。

けれども大事なことは、自分自身が、自分の道をどれだけ納得して歩んでいけるかだと思います。

どれだけ「成功者」と崇められたとしても、自分の生き方に心の底から納得していなければ、どこか満たされない人生になってしまいます。

今の自分に「納得」する生き方ができていれば、過去を振り返って後悔する必要なんて全くないのです。


ということで、これからもたくさん歌っていきたいし、もっともっと指導もしていきたいと思います。

最後まで読んで下さってありがとうございます😊

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?