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デジタルが蔓延る今こそ、アナログに生きるべき

代々木上原にあるレストラン・sioに行ってきた。

もともと、3月末に、新R25で内定者インターンをしていた川西くんの、卒業制作と称した取材にカメラマンとして同行したことがきっかけだった。

そのときの編集長との約束は、わたしは先輩として一切取材の手助けをしないことだった。

そんなことをしなくても、sioのオーナーである鳥羽さんと彼は途切れることなく会話を続けた。32歳からシェフを目指したこと。込み上げる眠気はオーブンに腕を当てて吹き飛ばしたこと。

カメラマンという立場は不思議である。別に何かを喋ることもなく、淡々と対談の様子をおさめていく。

でも、そのなかで、スパーン!と耳に入ってきたキラーフレーズがあった。

「年齢が若くないから、3倍速で動いたんですよ」

わたしは、永遠の17歳として時を止めた。それは、年齢を言い訳にしてチャレンジをやめてしまうことが嫌だったから。

一方で、彼は時を止める代わりに倍速で進むことを選んだ。

やり方は違うけど、やろうとしていることはまったく同じだった。

そこから、ファインダーを覗くのをやめて、彼の言葉に耳を傾けた。

鳥羽さんは、めちゃくちゃ泥臭かった。

アナログ、リアルを大切にしていて、人の目を見てじっくりと話す。一期一会を重んじる。人へのリスペクトを忘れない。ご恩を大切にする。

なんだかすっぽり抜けていたことを思い出したような気がした。

わたしは、17歳のくせに割とドライだ。

あんまり人を信じていなくて、ひとりでふらふらとしてしまいがちだ。でも、それは昔からそうだったわけじゃない。多分経験を重ねるにつれて、人の嫌なところを見るにつれて、そうなっていってしまったんだと思う。

今は固く結ばれた絆でも、どうせいつかは解けてしまう、なんて思っていた。

でも、目の前に、人との繋がりを大事にし続けて、ここまで来た人がいた。


取材後、sioの常連だというすがけんさんに連絡を取った。普段だったら、誘われない限り自分からこんなことはしない。何ならすがけんさんとごはんを食べたこともない。でも、そのときは衝動的に身体が動いた。

そして、結果的にsioでの食事会が実現して、独立をお祝いしてもらった。最後にお店を出るとき、鳥羽さんに「またよろしくお願いします」と握手をしたら、

「さすが、17歳!」

とあたたかく握り返された。

たぶん、かつては大事にしていたもの。返ってくるかもわからない年賀状を、ひたすら書き続けていた過去の自分が持っていたものの、片鱗を思い出せたような気がした。

人との縁。リアルでの繋がり。対話。

これからますますネット完結が増えていくからこそ、それらをもっと大切にしたいと思った。

リアルにしかないものが、きっとある。


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