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図書館員の《のはなし》、「け」は「肩甲骨」の「け」

『肩甲骨は翼の名残り』という本を見つけたのはビレッジバンガードであった。デイヴィッド・アーモンドによって書かれた児童文学で、ビレバンの黄色いポップには某超有名監督がこの本を高く評価している旨が書かれていたのを覚えている。引っ越した先のガレージに住み着いている翼の生えた謎の男と子供たちの交流の話で、男が謎の数字「27番と53番」と唱えてアスピリンやビールを求めてくる。隣家の少女と翼の男との交流の末……えーと、その先は覚えていない、何せ読んだのが20年近く前だ。ただタイトルが印象的で、肩が凝るたびに《肩甲骨が翼になりそうだ》と思うのだ。

 図書館員という仕事、非常に肩が凝る。本を運んでは戻し、端末で探しものをするのが常なので、肩凝り、ぎっくり腰、腱鞘炎にならないよう気をつけざるを得ないのである。
 そんなものだから同僚とはマッサージやストレッチがしばしば話題にあがり、女性職員同士で肩を揉み解しあったりする光景もちょいちょい見かける。マッチョ館長が居た頃は、たまに最近どうよ的に揉んでくれたりした。マッチョなだけあって握力があってちょうど良い揉み解し力だった……館長に何をさせているのか。

 肩凝りを放置しておくと肩甲骨が翼になるどころかプテラノドンの化石みたいに変形していくんじゃないかって心地を味わう羽目になる。コナン・ドイルの『失われた世界』のラストの如くカゴの中からぴやーーーっと飛んでってしまいそうである。

 そんな日々におさらばできたのが他でもない、コロナ禍で一時期品薄にもなっていたNintendo Switchのゲーム『あつまれどうぶつの森』!……ではなくて、『RingFitAdventure』だ。たぬきちと島を開発しても肩凝りは消えない。ちゃちゃまるの腹筋も自分の腹筋も割れない。
『RingFitAdventure』……今更自分が説明をするまでも無いヒット作、ゲームながら運動効果もある。少なくとも何もしないよりは絶対に良い。名前の通りリング型のコントローラーを使って筋トレやストレッチをしつつ道中を遮るフィットネスモンスターと戦いマッチョドラゴン(某プロレスラーの歌ではない)ことドラコを倒すゲーム。ストーリーモードの他に自分でプログラムを決めてやれるカスタマイズモードがあり、これをやるだけでも肩凝りがかなり楽になる。というか、3日サボると肩が気持ち悪くて眠れなくなるほどだ。睡眠不足になるのが嫌なおかげで継続できるようになった。不健康なのか健康なのかよくわからない。

 そういうわけで同僚に勧めたら、既に持っている人も購入した人も居た。が、半月後にはリングコンはオブジェになってしまったらしい……そして肩が凝ったと今日も首を回している……あなや。
 と、言いつつ、3日サボってまったく眠れなかった夜明けにこのnoteは書いている。帰ってきたら肩凝り改善のグルグルアームと英雄2のポーズをやってよく眠ろう……

 追伸、遊べる本屋さんビレッジバンガードではその他にもたくさんの、後々お気に入りになる本や漫画に出会った。『かもめのジョナサン』や『ライ麦畑でつかまえて』を買ったのもビレバンだったし、『ドロヘドロ』の林田球や『西荻夫婦』のやまだないと、『Blue』の魚喃キリコ、『帝一の國』の古屋兎丸などを知ったのもビレバンだった。オンライン書店も充実していなかった時代に見事な品揃え、少年誌青年誌しか知らなかった人間を新天地に導いてくれた、ああいうお店の役割は大きいと思う。

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