HARD TO EXPLAIN

部屋を掃除していたら、2006年のフジロックでストロークスを見たときの走り書きが出てきた。今読み返すと文章は稚拙だが、あのときの熱を少し思い出したので、ここに載せて残しておこうと思う。


HARD TO EXPLAIN - ジュリアン・カサブランカスという光 -

今年の夏、初めて THE STROKES を体験した。2001年に『IS THIS IT』がリリースされたときから THE STROKES の虜になっていたが、ライブを見るのは初めてだった。フジロック3日目、グリーンステージのトリ、このときを待ち侘びていた。

いきなり『JUICE BOX』から始まり、ラストの『TAKE IT OR LEAVE IT』まであっという間に駆け抜けたこの日のライブの評価は絶賛のものが多かったが、正直私は小さかったギターの音や出切らないジュリアンの声に満足とも最高とも思えなかった。

だが、フジロックから帰ってきてから、頭の中はずっと THE STROKES でいっぱいだった。そしてそれは10月になる今でも続いている。それは今まで見たどんなライブとも違い、最高だとも思わず涙を流したりすることもなかったのに、あのときの音を、いや、あのとき起きていたすべてのことをいつまでも求め彷徨わせてしまう、とんでもなく強い光を見てしまった後の目眩のような後遺症だった。

あの夏の日に私の細胞のひとつひとつに傷をつけたあの強い光の正体は一体なんだったのだろう。
それは結局のところ、ジュリアン・カサブランカスという存在そのものだったのではないか、と最近思う。これまで「これはそれなのか?」「取るか、去るか」と、いつもクールでリスナーに判断を委ねてきたジュリアンが、あの日不思議なほど滾らせていた情熱とオーディエンスの心に踏み込んできた強引さ。あの場にいたすべての人が彼に釘付けだったように感じた。ジュリアンがマイクを投げたこと、掻きむしるようにジャケットを掴んでいたこと、オーディエンスのことをクレイジーだと言ったこと、そのすべてが焼きついて離れない。ジュリアンはその存在すべてで人を戸惑わせ、人の心をぐしゃりと掴み、掻き乱していく。
彼は紛れもなく、21世紀のロックスターなのだ。バカみたいな答えだが、それがこの夏初めて THE STROKES を体験した私の答えだった。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?