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おっさんだけど、仕事辞めてアジアでブラブラするよ\(^o^)/ Vol, 57 林檎

タジキスタン Pamir Highway Try 13日目 
2023.0909 Sat

実を言うと、キルギスに入国以来、わたしは微妙に不機嫌でした。

まず、タジクとキルギスの国境緩衝地帯で出会った宿屋の青年。なぜか彼は、あきらかな嘘をわたしに言いました。
いわく、『キルギスの入国管理局は25km先にある。チャリでも3時間かかるよ』 入国管理局は15km先、チャリで1時間でした。
『今日中にキルギスに入国しなければダメだ』 これも嘘です。タジクとキルギスの国境は20km離れているので、1日の猶予が認められているのです。緩衝地帯のこの地で宿を開く彼が、いくらなんでもそれを知らないはずがありません。

そして、キルギス入国に関するゴタゴタ。というか、2時間近くも待たされたのです、書類の不備もないのに! 『お待たせしてすいませんね』の一言もなく、なんなら椅子すら勧められずに地べたで待たされたのです。ちなみに入国管理局って、標高3500mありますからね。当然、夕方からは激寒ですよ!

牛、ヤク、ヤギ、ヒツジに、キルギスから馬も加わりました。“馬は人の翼” そんなことわざがあるほどキルギスには騎馬文化が根付いています。

国境から最初の村サリータシュに到着し、久々のホットシャワーと軽くて暖かい布団(パミールでは重い布団で温かさを逃がさないようにしていた)に気を良くしたのも束の間、パソコンの充電不良が発覚。本当はこの村で2~3日休んでから再出発しようと考えていたのに、すぐさまの出立を余儀なくされました。

そこから同日の標高3600m越え×2。いやいや、こっちはもう、キルギス入国でパミールTryは終了の気分なのです。すっかり気を抜いてしまっているのに(これは完全にわたしの勝手なのですが)…。しかもキルギスの道路はパミールハイウェイと違って、勾配がめちゃくちゃ急! そしてこれまたパミールハイウェイと違って、キルギス側は完全に単なる幹線道路なので、“チャリ旅の冒険感”がゼロなのです。つまり、走っていても特に高揚感などなく、ただただひたすらに辛いだけ…。

キルギス側のパミールハイウェイは普通の幹線道路なのが特徴。こんな感じで急勾配もあり、且つクルマやトラックもバンバン走る道路の隅っこをチャリで走るのです。実はなかなかに過酷。

その夜のホームステイはファミリー感満載の素敵な宿で、やっと機嫌が直ったと思ったら、次の日は標高2400m越えの峠です。しかもこれ、いったん1500mに下ってからの2400mですよ、つまり標高差900m! おいおいおいおい! 早うOshの街に行きたいねん、こっちは! しんどいねんマジで…。

死ぬ思いで2400mの峠を越え、フラフラの状態で今夜の宿に到着すると、その宿はclosed。雑貨屋で話を聞くと、『この町には宿は無いよ』とのこと。
仕方がないので、川べりまで降りてキャンプすることにしました。

タジク側のパミールハイウェイほど特別感はありませんが、それでも充分に美しく走っていて楽しいキルギス側ハイウェイ。民家が多い分、安心感も増します。

もうOshの街にあと約40kmと近いので、僻地感はありません。川べりにも牛の糞があり、川向いにも家が何件か見えます。
下見を済ませたわたしは、自転車を取りに道路へと戻り、そしてそこからまた川べりへと下って行きました。そのとき、向こうから10頭くらいの牛が、そして続いて少年二人がやってきました。死ぬほど疲れていたわたしは一人目に適当に挨拶し、二人目にもそうして遣り過ごそうとしていたのですが…。二人目の少年が、手に持っていた果物を手渡してきたのです。それは、小振りの青りんごでした。
「ラフマット!(ありがとう)」
咄嗟にそう叫びました。意外なわたしの歓びに、少年も嬉しそうに少し笑いました。
自分たちの土地に見知らぬガイジンがやってきて一晩を過ごす。そのおっさんに自分用に捥いだ青りんごを手渡す。それって、普通のことなんですかね? 当たり前にできることなんですかね? 

翌朝、たっぷり寝たわたしは、起き抜けにその青りんごに齧り付きました。程よい酸味と自然な甘さ、そしてたっぷり含まれた水分。サイコーに旨かった! 
貰った青りんごが旨かった。それだけの理由で、わたしの機嫌はすっかり直ったのでした。

休憩していたら、「一緒に喰おうぜ!」と内装屋の昼飯に誘っていただきました。ちなみにビールもいただきましたよ。彼らムスリムのはずなんですが…。 
旨いか不味いかより、嬉しいかどうか、楽しいかどうか。わたしはそれを重視します。


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