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私だけオロオロしていた

4月25日(木)
朝、目が覚める。小鳥の声と鳩の声が重なって聞こえてくる。素敵だ。

玄関の戸を開けて朝のぜんぶに「おはよう!」と、あいさつをする。

ウーちゃんとルーちゃんにエサをあげる。
最近、ウーちゃんはタブレットのエサをあげるとペッと吐き出す。ちょっと痩せたような気がする。冷凍アカムシをあげることにする。以前ほど食べなくなった。ちょっと気になる。

カカオが帰ってきた。ご飯をあげる。おやつのカニカマをあげる。

残りのレースのカーテンを取り付ける。廊下に置いてあるタニクちゃんたちに陽があたるように、昼間はそこだけカーテンを開けておくことにする。

廊下が明るくなった。

母と電話で話す。私が今度帰省したときに作ってくれるだし巻き卵の話になる。昆布が使えないので、干し椎茸と切り干し大根の出汁で作ってくれるということ。ありがたいなぁと思う。

仕事をする。もくもく。

夕食の下ごしらえをしておく。
だし巻き卵の話をしていたので卵焼きを焼きたくなった。卵焼き器で くるくる転がしながら焼く。

夕方、修一郎が起きてきた。食事の仕上げをする。

お散歩に行く。
ぽかぽか晴れていて、風が爽やかで本当にきもちがいい。霊園のツツジが どんどん咲きはじめている。きれい。鮮やかなピンク色。青い空に白い雲が ぷかぷか浮かんでいる。平和だ。幸せだ。と、うっとりしながら てくてく歩く。

家の前まで来たとき、子供たちが 10人くらいやってきた。近所の小学生の女の子とそのクラスメイトだ。わが家のクローバー畑の前で

「四葉のクローバー探していいですか?」と、口々に言う。

「いいよ〜。中に入ってもいいよ。」と、私。そのとき、背の高い男の子が私の近くに来て言った。

「サッカーボールがあの家の庭に入ったんですけど、どうしたらいいですか?」

それは ご近所の家だった。

「いっしょに行ってあげるよ。ボール取らせてもらおう。」と、私。

ピンポーン。と、チャイムを鳴らす。
男の子が離れたところにいるので、

「こっちおいで。」と呼ぶ。神妙な顔をしている。

「オレ、前もここの人に怒られたから…。」と、モゴモゴ。

そうこうしているうちに、その家の人が出てきた。

「こんにちは〜。」と、私。

「あら、さかいさん。こんにちは。」と、ご近所さん。

「あのね、この男の子のボールがそちらのお庭に入っちゃったみたいなので…。」と、言い終わらないうちに

「返さんよ!これで 2度目やろ!」と、ご近所さん。

びっくりした。視線は私を通り越してその男の子に真っ直ぐ伸びている。
どうやら、先日もこういうことがあって注意をしたらしい。

ふたりが言い合いを始めた。
オロオロする私。子供たちも集まってきた。

「どうしたらいいの?私、どうしたらいいの?何かできる?」と、オロオロしながらキョロキョロして言う。

子供たちが、

「何もしなくていいよ。大丈夫、何もしなくていい。」と一生懸命言ってくれる。落ち着いている。小学生なのに私よりずっと大人な感じだ。

ご近所さんも

「さかいさん、何もしなくていいよ。巻き込んでごめんね。」と言う。

「でも、でも…。」オロオロ。キョロキョロ。オタオタ。別の男の子が私の腕を引っ張って

「ほら、女の子たちと四葉のクローバー探して。」と言ってくれる。

「え、でもでも…。」汗かいてきた。

そこへ ごはんさんがお仕事から帰ってきた。Oさんもやってきた。クラクラする。

くるっとした可愛い女の子とクローバー畑を眺める。

「どうしよう〜。」と言っていると、その女の子がそばに来て、

「あの子、いつもああだから。先生にも反抗するの。ほっといていいよ。」と冷静に言った。みんな落ち着いているなぁ。なんの関係もない私だけオロオロしている。

ごはんさんがやってきたので、かいつまんで説明をする。ご近所さんは家の中に入ってしまった。

ごはんさんが、

「オレのとこサッカーボールあるかも。それあげてコトが済むならあげるけど。」と言って家の中にボールを探しに行った。

言い合いをしていたサッカーボールの持ち主の男の子と、くるっとした可愛い女の子だけ残り、他の子供たちは別の場所へ移動した。さっき私の腕を引っ張ってくれた男の子が心配そうにこちらを何度も振り返っている。とほほ。

女の子といっしょに四葉のクローバーを探す。てんとう虫が何匹もいた。可愛い。

「四葉なんてないよ。」と、むすっとしている男の子。

ふと足元を見ると、大きな四葉のクローバーがこっちを見ていた。ちょっと でこぼこの葉っぱだけれど大きな四つ葉。

「あったよ!」と、私。女の子が寄ってきた。

「ほんとだ!四つ葉あったよ!」と、男の子に向かって叫んだ。男の子が急いでやってきた。

「ほんとだ。」と言って笑顔になった。あぁよかった。

そのうち ふたりはクローバー畑にジャンプをして遊びはじめた。ボールが見つからなかったと言って ごはんさんが戻ってきた。

ちょうど炊き込みご飯が炊きあがる頃だったので家に戻る。炊き上がってすぐ混ぜて蒸らした方が断然おいしい。

あれこれ用事をして外に出るともう誰もいなかった。
ごはんさんとお買い物に行こうと車に乗り込もうとしていると、さっきの背の高い男の子が自転車でやってきた。

「どうしたの?」と聞く。

「明日、サッカーの試合がある…。」と、うなだれている。

ごはんさんがもう一度サッカーボールを探しに家の中に入った。

「お母さんが、ボールを返してもらってきなさい。って。」と、男の子。

「いっしょに行こうか?」と、私。

「うん。」と、男の子。

ご近所さんの家の前で くるりと男の子の方を向く。

「ちゃんと謝ってボール返してもらおうね。反抗しないでね。」と言って背中をさする。男の子は

「うん。」と言った。

ピンポーン。とチャイムを鳴らす。男の子がちょっと離れているところに立っているので「もっとこっちにおいで。」と呼ぶ。男の子の顔が緊張で固くなっている。私もドキドキするぞ。大人だけど。

ご近所さんが出てきた。男の子が、

「さっきは申し訳ありませんでした。」と、はっきり謝ってお辞儀をした。おぉ。立派な謝罪だ。私は心の中で拍手をした。ぱちぱちぱち。

私ひとり笑顔で両方の顔を交互に見る。

「もうひとつ言うことがあるよね。」と、ご近所さん。私はポカンとしていた。すると、男の子がすぐに

「さっきは反抗的なこと言ってごめんなさい。」と言ってお辞儀をした。おぉ。えらいぞ。ぱちぱちぱち。

そして、無事に男の子はサッカーボールを返してもらえた。明日の試合、いい試合になるといいなと思った。

ご近所さんが笑いながら、

「さかいさん、たまたま歩いてただけなのに巻き込んでごめんね〜。あぁいう子って頭いいから、もうこれから同じことしないと思うのよ。私、学童保育してたことあるから分かるのよね。」と言った。そうだったんだ。ほっとした。

一件落着して ごはんさんとお買い物に行く。

お買い物が終わり帰りつくと、ミャウさんがアランくんと玄関前でのんびりしていた。

ミャウさんと ごはんさんと私とで おしゃべり。ほとんどニャンコとワンコの話になった。

暗くなったので家に帰る。

夜、庭に出る。
北斗七星がすっきりと輝いている。きれい。新星が出るあたりに星の輝きがある。小さいけれど強い輝き。新星なのかな。きれい。なんでもいいな。と思う。夜のぜんぶに「おやすみ。」を言う。

カカオは遊びに出かけている。明け方また私のベッドにやってくるのかな。

オロオロしたけれど、今日もいい一日だった。

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