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素晴らしい日

4月1日(月)
朝、ぱちりと目が覚める。

玄関の戸を開けて朝のぜんぶに「おはよう!」と、あいさつをする。

カカオにご飯をあげる。
ウーちゃんとルーちゃんにエサをあげて水を換える。

ごはんさんのメダカちゃんたちにエサをあげに行く。
Oさんがやってきた。神妙な顔をしている。ちょっとカピバラに似ている。お話をする。

Oさんが可愛がっている黒猫クロちゃんが昨日の朝から姿が見えなかったという。夕方には雷雨になりOさんは心配で心配でたまらなかったそうだ。目に浮かぶ。

Oさんが雨の中、傘をさして「クロー!クロー!」と呼びながら探し回っている姿が。

そして今朝、車のバックドアを開けたら、なんと、そこでクロちゃんが まるくなって眠っていたそうだ。

昨日の朝、Oさんは車のバックドアを開けたまま お茶を飲みに家の中に入ったらしい。その間にクロちゃんが車に入ってしまい、それに気がつかなかったOさんがドアを閉めてしまったようだ。

「ほっとしたよ〜。」と、真っ赤な顔をしたOさんから笑顔がこぼれる。泣きそうになっている。よかったなぁと思った。それにしてもクロちゃんは丸一日車の中に閉じ込められていたけれどスースー眠っていて度胸があるなぁと感心した。

今日は ”こもれびの森” へ行く。
眠っている修一郎の食事を用意して仕事部屋の机の上に置いておく。

暖かい日だ。
生成りのワンピースに赤いカーデガンを羽織ってしゅっぱーつ!

きぶんよく車を走らせる。
緑が、木々が、桜が、山が、空が、すべてが輝いている。幸せがあふれる。私が幸せのかたまりになったみたい。山のいろいろな緑色に山桜の淡いピンク色が混ざっている。キラキラしている。

「きれい!きれい!」と、50回くらい叫んだと思う。最高に美しい。こういうとき、世界を愛していて世界に愛されていると感じる。ちょうど "What a wonderful world" が流れてきた。いまのきもちそのままだ。胸がふるえる。

こもれびの森に到着。
大きな満開の桜が迎えてくれた。歓迎してくれているように感じる。優しい風が吹いた。花吹雪が舞った。あまりに美しくて呆然と立ち尽くす。猫がやってきた。足元にまとわりついている。幸せ。

用事を済ませて車に乗り込む。
以前、ごはんさんが走ってくれた何キロも枝垂れ桜が続く道に行ってみようと思う。そんなに遠くなかったはず。枝垂れ桜の道に向かってしゅっぱーつ!

迷った。
ぐるぐる回ってどこを走っているのか分からなくなった。行き止まり。でも、迷っている最中も桜がきれいなので うっとりしながら迷う。枝垂れ桜はあきらめて、川が流れている ”水辺公園” と書かれている駐車場に車を停めることにした。

川沿いに満開の桜が並んでいて、ものすごくきれい。川の音色と輝き、桜の可憐さ、極楽みたいだ。と、思う。

車から降りて、川沿いをのんびり歩く。カメラを持った年配のグループや福祉施設のご高齢の方たちが来ていた。ラグを敷いてお弁当を食べている人たちもいた。

川縁まで下りていって石の上を歩く。水が透きとおっている。石のまわりに桜の花びらがすいよせられるように集まっていて現代アートみたい。可愛い。

奥の方まで歩いてゆく。大きな石の上を歩く。楽しい。ものすごく楽しい。我慢ができなくなって靴を脱いで靴下も脱いだ。レギンスをまくって川の中に足を浸ける。ひやっとしていて思わず「つめたっ。」と声を出す。でもとてもきもちがいい。

滑って転ばないように、踏ん張りながら足を浸けて遊ぶ。別の川で滑って転んでずぶ濡れになったことがあるのだ。

ゆらゆら輝きながら美しい模様を描いて水が流れてゆく。桜貝みたいな愛らしい桜の花びらが流れてくる。足にくっつく。可愛くて素敵で くすぐったくって楽しい。

楽しすぎる!思わず笑顔がこぼれる。笑いながら ひとりで遊ぶ。

ひとしきり遊んで裸足のまま木陰の石の上まで歩いてゆく。裸足で歩くのもきもちがいい。風が髪を顔を撫でてゆく。ぜんぶきもちがいい。

幸せいっぱいで木陰に座り、しばらく川を桜を山を眺める。ここに来れてよかったなぁ。と和んでいると、知らない年配の男性がやってきた。

私の前で止まった。じっとこちらを見ている。感じのいい笑顔。

「さっき、川に足を浸けていたでしょう。」と、その男性が言った。

「はい。」と、私。

「写真、撮らせてもらったんです。」と、その男性。

全く気がつかなかった。ふと見ると手には一眼レフの重そうなカメラを持っていた。

「すごく小さいから。でも、断っておかないといけないなと思ったので。」と言って、写真を見せてくれた。

すごくいい写真だった。輝く川の向こうに満開の桜が並んでいる。後ろは山。青い空。そして川で遊んでいる私が小さく写っていた。全体がキラキラしていた。

なんと言っていいか分からなかったので、うなずいて笑顔を返した。

男性も笑顔で立ち去った。

それから少しの間、景色と空気を楽しんで靴下と靴を履いて川を後にした。
足しか浸けていないけれど、心も身体も清らかな川で洗われたようにリフレッシュされた。

軽やかな足取りで車に乗って、K市の病院へしゅっぱーつ!

ごはんさんと会う。
顔色がいい。ずいぶんよくなっている。すごい回復力だ。さすがだ。驚異的だ。

素晴らしい今日の中でいちばん素晴らしいこと。
それは、なんと、ごはんさんが明日 退院できるのだ。

びっくりして、ものすごくうれしかった。

入院当初は、どうなるんだろう。と本当に心配した。まだちょっと痛々しい部分はあるけれど、こんなに早く、11日間で退院できるなんて。みなさま ありがとうございます。

もう使わない荷物を持って帰ることにする。
ごはんさんが 1階まで運んでくれる。

「じゃ、明日!」と言って手を振る。

ごはんさんも手を振っている。駐車場に向かう途中で振り返る。ごはんさんも こっちを見ていた。また手を振りあう。

ほっとして車に乗り込む。

家に帰り着く。お散歩に行く。霊園の桜も満開だった。今日はきれいな桜をたくさん見た。こんなに桜を見たのは初めてだと思う。

家に帰り庭仕事をして中に入ると、修一郎が起きてきた。
「ごはんさんが明日退院できるよ。」と話すと「よかったなぁ。」と言った。

夕食の支度をする。
仕事のやり取りをする。

夜、庭に出る。
深く濃い夜空。ぽつりぽつりと星が瞬いていた。かそけき光。可愛らしい。あまりに真っ暗で Eさんのお家と夜空の境目が分からないくらいだった。夜に溶けているみたい。朝も昼も夕方も夜も表情豊かだ。夜のぜんぶに「おやすみ。」を言う。

カカオは甘えた声を出していたけれど、いつもの椅子で眠りはじめた。

今日もいい一日だった。

川と桜と山と空…きれい。うっとり。
石のまわりに桜の花びらが♪ おもしろ〜い。
川に浮かんで流れてゆく花びらたち。ときめく。
滑らないように踏ん張っている足に桜の花びらが流れてきた。きゅん。
ここ、どこだろう…。
分からないけれど、きれいだから車を停めてカシャ。
どこか分からないけれど、うっとり。

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