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彼女と私の7年間①苦しい介護
最後まで自立した人の、
最後まで認知症のない人の介護は、
本当に苦しいです。
心臓がもう絶え絶えで、
何をするのも苦しい彼女の介護をすることは、
まるで自分自身が彼女自身のようになり、
苦しいです。本当に苦しい。
寝ても覚めても彼女が気になる。
彼女のそばで彼女の介護をすることが、
すごく苦しいのに、
出来るだけ彼女のそばにいたい。
私には、彼女の苦しみを軽減する介護ができる。
そんな揺る
彼女と私の7年間②介助方法の変換
彼女の旅立ちのときが近いと感じ始めた4月。
彼女が毎年楽しみにしていた地元のお祭り。
今回は車から降りることなく施設にとんぼ返りだった。
「死んじゃう、死んじゃう、早く部屋に連れて行って」
施設の入り口についた彼女は顰めっ面でそう言った。
「全くおばあちゃん、車から降りもせずに」
そう娘さんは笑った。
その日の彼女はよほど疲れたのか、
一日中寝ていた。
*****
この頃から彼女の
彼女と私の7年間③最高のおにぎり
今日は、最高のおにぎりを、
つくることができました!
自己満足かもしれない。
そう、わたしは満足です!
*****
私はお昼ご飯を施設で注文してくれるお弁当を食べています。
バランスが良くて彩りが良くて、
そして美味しい☆
施設がほぼ半額負担してくれるので、
200円ちょっとで美味しいお弁当が食べられるのです。
私は毎日、おかずは全部食べるけど、
ご飯は3分の1量食べて、
残り3分の2量
彼女と私の7年間④死への恐怖
居室のナースコールが鳴った。
訪室すると、
彼女は端座位で前傾にかがみこみ、
息が苦しい。
息が止まっちゃうと、
険しい表情をしていた。
彼女の顔色は異常なく、
脈も正常。
血圧も問題なく、
spo2も正常値。
バイタルサインに何ら問題はない。
それを確認後、
ナースに報告し、
彼女の部屋に戻る。
彼女の背中をさすり、
回復を待つ。
しばらくすると落ち着いて、
横になることができた。
彼女と私の7年間⑤命の水1
彼女の死は完全たる尊厳死だった。
彼女が死の数時間前まで、
一口単位で飲んでいたのが冷水だ。
彼女が亡くなる二週間前くらいに、
私は確信した。
彼女に残された日はもうわずか。
呼吸状態、身体状況、バイタルサイン、
酸素飽和濃度、排尿の変化、
それ以外の死のサイン。
それは、死が近い人から漂う死臭。
死臭は、死が近い生きている人間から発生するにおい。きっと、多臓器不全や細
彼女と私の7年間⑥命の水2
「おばあちゃんは心臓を患っているから
死ぬ時をみるのが怖いのよ。
父の時もそうだった。
心臓を患うと、死ぬ時に酷い苦しみをする」
そう彼女の娘さんは言った。
慢性心不全でペースメーカー使用。
彼女は97歳。
認知症はない。
年相応の物忘れもない。
だから彼女は、
迫り来る死を沸々と感じている。
亡くなる一週間くらいから、
彼女はもう冷水しか飲まなくなった。
まずは、取っ手のついたコップに
彼女と私の7年間⑦最後の桜
今年の桜はきっと彼女にとって、
最後の桜になるかもしれない…
そう思って、私は彼女をお花見に誘った。
枝振りの良い美しい格好をした桜の木の下で、
私は彼女とセルフィーで写真を撮った。
桜の木をバックに。
カメラを自分たちに向けて彼女に言う。
「Tさん、写真撮ろう、ほら、ここ見て、ここ見て」
この日は本当に良い天気で、
桜吹雪が雪のように舞っていた。
桜を中心に、花壇に赤と白のチューリップ、
彼女と私の7年間⑧後悔
10年間介護士として勤めた施設を辞めたのは2019年の6月。
コロナ禍の真っ只中で娘の学校は休校が決まった。尋常ではない事態の長い休み。
当時娘は中学2年生。
私は…
娘を一人にしたくない。
だから休みを申請して休校が終わるまで休むことにした。
やはり人手不足だ。
チームはみんなで協力し仲がよかった。
だけど、多分この状況下が招いたことなのか少しずつ介護士のメンタルが崩れて行く。
私はそれ