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ひたすら「まえがき」を見比べる

書き出しはじっくり考えるべき、とはよく言われることだ。

とくに書籍ともなると、「まえがき」や「はじめに」は一冊10万字を読み通してもらえるかどうかのカギを握るパートになる。書店でまえがきを立ち読みして、本を買うか買わないかを決める人もいる。ここでおもしろいと思ってもらえるかどうかが大事なのだ。

ただ、まえがきや書き出しにはいつも悩むものの、その型をあらためて分析したことはなかった。構成案をつくる段階で、まえがきに盛り込む素材を決めたら、こんな感じかな、といくつか書き分けてみたり、最初に書いたものを何度も書き直したりすることで仕上げていた。

先日、お客様から「まえがきにはパターンってあるんですか?」とストレートに問われて、うっ、と詰まってしまった。あらためて、パターンを挙げてみろ、と言われるとアドリブに弱い私は困ってしまう。

悔しいので、研究することにした。

手持ちのビジネス書や実用書を開き、まえがきや書き出しを見比べていった。その後は、著名なライターさんが出版している文章術の本を何冊か本棚から抜き出し、まえがきや書き出しに関してそれぞれどんなアドバイスをしているかを調べていった。

こうして、ある程度の「まえがきの型」が出揃う。それらを見比べながら、今回のテーマにはどの型がふさわしくないか、どの型なら合いそうかを見きわめることにした。

今回はテーマに合わせて3つの型を選択した。型ごとに、どんな素材をどういう順番で並べるか、構成案をつくってから書いてみた。当然、型が変われば、使う素材も並べ方も変わる。あたりまえのことながら、ここまで型を明確に意識して書き分けたことはなく、新鮮に感じた。

取りかかる前は「3パターンも書き分けるのはなかなか大変だな……自分で決めたこととはいえ」と思ったが、やり始めたらだんだんおもしろくなってきた。

これまで、まえがき(あとがきも)に苦手意識があった。今も得意とはとても言えない。ただ、こうして型を整理しておくと、「今回はどの型でいこうかな?」と考えるのが楽しくなる。最近では、新しい本を開くと「これはどの型だろう」と考えながら読むようにもなった。

どんな仕事も、自分の考え方ひとつでおもしろくなる。お客様からいいきっかけをいただいた。