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#それでもスポーツで生きていく・#23

~各論【第2章】
スポーツの『自治』から『自主経営』へ

「ボランティア」と「労務」の違いを考える

こんにちは、スポーツエッセイスト・岡田浩志です。

第2章に入り、「やりがい搾取」になりがちなスポーツ界において、それでも自ら主体的に志願して、スポーツの自立のために立ち上がるスポーツボランティアの方々のお力添えも得て、いかに未来のスポーツ界を描いていくか、というテーマでお届けしています。

今回は、スポーツボランティアと労働者(スポーツ界の職員)の間にある「差」に着目して文章を書いて参ります。

ボランティアと労務の間の「差」について

この「差」が具体的にイメージできる、できないは、スポーツ組織への貢献を考える上で、かなり重要なポイントになる、と僕は考えます。

何故なら、スポーツ界の職員の業務というのは、一般の方が思う以上に、とても複雑な業務であり、かつそれを少人数でこなしていることが常であるからです。

ボランティアの方々が、現場の末端に立ち、見える景色以上に、スポーツ界の職員の方々は多忙であり、業務過多なのです。

当件についての詳細は、これから書くであろう【第4章】でも重要なテーマになりますが、今回は身近なスポーツボランティアの例から、ボランティアと労務の違いについて詳しく触れていきます。

スポーツボランティアの定義 
地域におけるスポーツクラブやスポーツ団体において、報酬を目的としないで、クラブ・団体の運営や指導活動を日常的に支えたり、また、国際競技大会や地域スポーツ大会などにおいて、専門的能力や時間などを進んで提供し、大会の運営を支える人のこと (文部省,2000)

上記は、2014年に文部科学省の委託事業として、笹川スポーツ財団が発行した、イベント主催者向けのスポーツ・ボランティア運営ガイドブックの一節です。

そこで触れられていることとして、警備や金銭管理など、リスク(危険や大きな責任)を伴うものは、ボランティアとしてお願いすることを原則として避けてください、とあります。

警備業務は警備業法の兼ね合いがある

スポーツイベントにも警備のお仕事がありますが、こちらはリスク管理上の問題以上に、法的な兼ね合いを押さえる必要があります。

スポーツイベントなどで行われる警備は、雑踏警備と呼ばれ、事故や混乱の防止のために、イベントの主催者が警察との連携や、警備会社に委託して、案内、誘導、通路の確保、緊急対応などを行います。

警察が関係してくれば、警察法の第2条が、警備会社が関係すれば、警備業法の第2条第2項に規定があります。警備業法は人材派遣業とは異なるため、労働者派遣業の業者が警備にあたることは許されません。

つまり、警備業務にボランティアが配備されることはもってのほか、ということになります。

金銭管理などは人材派遣業への依頼が一般的

スポーツ界では、スポーツイベントの業務委託先として、イベント運営業者と連携するケースが一般的で、それらの業者は労働者派遣業の許可を受けています。

昨日お邪魔した会場の場合は、ゲーティング業務や列整理の業務イベント運営会社に委託され、物販関係は、親会社の人材派遣会社から、販売スタッフを補充している、とのこと。

それ以外のエコステーションでのゴミの仕分けや、関係者チケット受け渡しなどの業務、お客様からの問い合わせ業務などが、ボランティアのお手伝いの領域として割り当てられていました。

業務のステップアップをイメージする

あくまで無報酬のお手伝いで構わないと領域を決めて、ボランティアとして関わって頂けることも、スポーツ業界にとっては充分に有難い話で、まったくもって問題はないのですが、今後スポーツ界がよりパワフルに成長を遂げて行くにあたっては、ボランティアの先にある、有償の業務により関心が増していくようなことも重要でしょう。

先にあげたような雑踏警備の資格を取ろうとするような熱心な方がいても良いでしょうし、スポーツ団体の運営アシスタントとして素質を認められるようなケースも充分にあり得るのです。

ボランティアの熱意の受け皿作りを

僕が重要だと思うのは、こうしたボランティアの方々の成長したい、という意欲に対し、受け入れる側が、ステップアップの道筋を描いてあげて有償で協力を仰ぐことにも門戸を開くような仕組みを作ることが、発展の鍵になると思うのです。

学生のインターンシップから就職への流れなどは、少しずつ世間で道筋が整ってきているようにも思うのですが、こうしたレール作りに積極的な団体と、そうでない団体の差も、かなり開きがあるように感じられます。

今回は、たまたま運営ボランティアからのステップアップのイメージについて、文章にしてみましたが、チケッティングマーチャンダイジング会員管理などの業務についても、同じようにボランティアの方々にとって見えていない、職員の側だけが抱え込んでいる諸業務がたくさんあります。

そうした業務の「見える化」については、後々【第4章】を通じて丁寧に纏めていく所存です。

興味ある方は楽しみにして頂けたら、僕としても嬉しく思います。

スポーツエッセイスト
岡田浩志

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