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頭の中に浮かんでは消えていくイメージは、映画みたいだ。

「一人で歩いている人を見ると、いいな~と思うことがある」と以前付き合っていた人に話したとき、「どうして?」と彼は不思議な顔を浮かべました。

そりゃ、私だって大体の場合一人で歩くのだけど、友だちやパートナーと一緒に街中などを歩いているときや、食事をしているときに、一人でいる人を見かけると、どうしても羨ましさを感じてしまいます。

だって、一人でいるときって隣の誰かに、自分が今何を考えているか伝えたり、「あなたはどう?」と相手に配慮しなくてもいい。何も言葉にしなくていい。ただただ頭の中で浮かんでは消えていくことを感じとるだけでいい。ただ浮かんでは消えていくイメージを感じることは、映画を観ているような感覚にも似ているような気がします。

映画のシーンが移り変わるように、頭の中のイメージもパンッパンッと変わっていく。

最近観た映画、寺山修司脚本・監督の『書を捨てよ町へ出よう』(1971)という映画は、最近の映画のような「わかりやすさ」がなく、場面の移り変わりが多かったです。場面の移り変わりの多さが、頭の中で浮かんでは消えていくイメージに近いように思いました。

この映画を観て、今まで自分が観てきた映画は、いかにわかりやすかったかを感じました。でも、本来人間が頭に思い描くものなんて、よくわからないものだと思うんです。その頭に思い描かれたイメージを映像で表現している人たちはすごいな~と初めて今感じました。

ちなみに、ドイツの映画監督ヴィム・ヴェンダースの『ベルリン天使の詩』(1987)の最初のあたりのシーンでは、電車に乗っている人や街中を歩く人の頭の中で考えていることが「天使」には聞こえており、それが観る人にも聴きとれるように撮られています。

私たち人間は、自分の頭の中に湧き出てくるイメージをみて、感じるだけでも案外楽しめるのかも。だから私は一人で街中を歩く人や、喫茶店で一人で過ごす人を見て、羨ましいと感じるのかもしれません。


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