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ピアノを教える、教わる7(レッスン料編)

タブー視されがちなこのトピックですが、音楽家を守るために大事なことなのでよく聞かれる質問だったり自身の経験から語ろうと思います。

あくまでも私個人の意見ですのでご了承ください。


まだ学生の時


まず元々音楽院を卒業したからといってピアノ教師になろうとは最初から考えてませんでした。
音楽院の学生中でメソッドという教える授業があり、そこで人生初の生徒を一人受け持って一年ほど教えて最後先生たちの前で公開レッスンをしてそれが試験として反映されるというものでした。
受け持った生徒は当初4小節を一週間かけてやるのがやっとの子でした。しかも15歳。
大変な子を任されたなと内心思いましたが、一年レッスンをしているうちに最後はベートーヴェンのソナタ1楽章は楽に弾けるようになりました。
実はお父様がピアニストで音楽院で伴奏院を務めるほどなので元々の耳はあったのですよね。
だからきっかけややり方をちょっと工夫するだけでメキメキと上達し、発表会でベートーヴェンを弾き、また彼女の学内クリスマスイベントでは歌かなんかの伴奏を務め、お父様は大喜びされてました。彼女にとってもそれが自信となり最終的には私と同じ音楽院を歌科で卒業し今生徒を取って教えているようです。

当時自分がどのように彼女に教えていたのかはもう覚えていません。とにかく最初の生徒で無我夢中で教え、なんとかして一曲は仕上げないとという責任が強かったから色々なことをしたんだと思います。
そこでレッスン料の話。
学生といえどこちらの時間と勉強してきた知恵、知識、技能を全て差し出すわけですから無料とはいきませんし、メソッドの授業としてもこれから仕事として繋げるためにレッスン料は取らないといけないのです。
でも初めてだし学生だからということもあり、1時間レッスンで€20(当時の日本円は今と同じくらいだったので¥3000、しかし感覚としては€1=¥100で考えます)。これは破格の値段ですが良いのです。
経験がないから。
試験は無事合格しましたし、先生達からもよくここまで成長させたとお褒めの言葉を頂きました。
嬉しかったですがピアノ教師としての道は全く考えませんでした。

卒業した直後

就職難です。
音楽院を卒業してもどこかにコネがあるわけでもなく、演奏家としての技量があってもオランダ社会に精通してない日本人にはなかなかその中に入っていく術がありません。
メソッドで良い成績を貰おうが音楽院をマスターまで出てデュプロマを持とうが、それを提示する場所は皆無。
結局オランダ語も出来ず地元コネクションがない自分は一時行き先を見失います。
ただ、音楽をもっと勉強し続けるとか絵の方で学校に行こうとかも考えていたので学校をあたってみたりしましたが、もう六年間の密な勉強で力尽きてしまい、それ以上の勉強をしたくなくなってしまいました。
ヨーロッパに滞在し続けるためにもビザが必要だし、卒業した当時はまさに外国人排除が始まった時期でもありオランダ以外の国は一斉にビザ取得が厳しくなりました。
オランダも厳しくなったのですが、日本人枠は比較的取りやすく、そこも視野に入れて卒業後一年就活ビザが下りるのでそれを利用して就職先を見つけることにしました。
偶然知り合った日本食料理屋の社長から雇用依頼を受けて半年ほど働いていましたがあまりにもブラックすぎて辞めました。
この話はまたおいおい別枠で話すとして。。。
しかしこの期間、個人レッスンも開始して合間に演奏活動も始めました。すると口コミで生徒さんが徐々に増えていき、料理屋を辞めてもなんとか細々と食い繋いでいくことができました。
その時の駆け出しレッスン料はこちら💁
30分=€20
45分=€25
60分=€30
周りにも聞いて相場を崩さないような値段で始めました。これ大事です。
ただ、経験やスキルなどが年齢と共に違うので、その人個人で決めて全然良いのですが、プロで経験あるのに無料でどんどん教えるとか、アマチュアなのに高い値段で内容のないものを教えているとかだと相場も質もめちゃくちゃになるのでちょっとここは考えてもらいたいところです。

卒業してから7年

社会の経済状況、自信の経験、技量などからまたレッスン料を上げなければと思っていたのに個人的に値段を引き上げるというのが苦手だし嫌いで、ずるずると決められず7年が過ぎてしまいしまた笑
それぞれの値段を€5ずつ引き上げました。
30分=€25
45分=€30
60分=€35

特に目指していなかったピアノ教師ですが、実はこれがまず1番自分にとって手っ取り早く稼いで生活する方法でした。オランダ語ができていない当初は英語と日本語でなんとかやりくりしていましたがそれにも限界を感じ、とうとうオランダ語の生徒を取って無理やり自分にオランダ語を課したのもこの時期。
ものすごく大変でした。
生徒に何言ってるのかわかんないと言われたし、自分が伝えたいことが充分に言えずもどかしくてストレスになりました。
でも結果オランダ語を話せるようになるきっかけとなったし、現在地元と密着して仕事が出来るようになったので何事も経験だなと感じています。

ピアノ教師を始めて12年現在

生徒さん達に料金引き上げの旨を伝えました。
ただロックダウン中にも一度上げているので2019〜2024年の間に2度上げることになります。
現在インフレなどオランダの物価が高騰しすぎてレッスン料も心を痛めながらも引き上げた結果こんな感じになります。
30分=€30
45分=€45
60分=€50
家族、兄弟割もやっています。
出張する場合交通費は別です。

お互いに注意すべきこと

レッスンは需要と供給。
教えて欲しいという側と、提供しますよ、という双方がいて成り立つビジネスです。
なので、そこで教えてほしいのにレッスン料を以前の先生はかの値段だったからあなたのは高いとか、これだけ提供してるんだからこんだけ取ってもいいだろと傲ったりするのはNGと私は考えてます。
事実、何度かレッスン料を比べられたことがありますが、その都度私はこの値段でやっており私はその前の先生ではありません、と丁寧に説明をしています😇
自分が学んできた内容、提供できる質、それは他人と同じことは絶対にありえません。もちろん良くも悪くも。私の質が他の先生より悪いかもしれません。でしたらレッスンされたあとに辞められれば良いと思います。レッスン料に見合わないのだから。
スーパーに行ってそのスーパーの手作り唐揚げを手に取り、他のスーパーでも手作り唐揚げあったけどあそこではもっと安かったから値引きしてくださる?と言いますか?
見た目は同じでも全く内容は違いますよね?
作り方も作っている人も違うのだから。
少し材料を変えたり作り人の経験や技量が高くなり、質のいい唐揚げを提供したいとなったら必然的に値段も上がります。
ピアノのレッスンも同じことだと思っています。
ただし先生にも注意が必要で、良いレッスンを提供し続けるためには自分の企業努力も必要です。
それは私個人が思うのは、
・演奏をし続けることで自分の向上を絶やさないこと
・生徒との信頼関係をきちんと築くこと
・100%自分の持っているものをレッスンで出し切ること

他にもあるかもしれませんがこの3点は常に大事にしていることです。
自分が100%惜しみなくやったことに対して人は絶対に反応します。
レッスン料はただのお金ではなく、人同士の信頼関係が上乗せされた料金です。
相場もありますが、個人単位で支払う場合、相場よりもその人に習いたいからとかその人を教えたいからで成り立つものです。

ミュージックスクールもスクールごとに一時間あたりの相場が全く違います。
私は2軒で教えていますが、一つは60分=€39、一つは60分=€45、聞いたところでは他のスクールは60分=€25、かと思えば60分=€50のところも。
経済的に余裕のあるスクールだったり、行政から支援がもらえている貰えていないなど様々なのでこればかりはピンからキリなのです。
よって個人レッスンの料金に差があっても仕方ないことなのです。
私は最初半額で体験レッスンをしてもらいます。
そのあと家で話し合って決めて下さいね、と無理矢理私のレッスンにしなくてもいいよう伝えています。

ちなみに日本のピアノのレッスン料を分かりやすくまとめておられる方がいましたので参考までに貼り付けておきますね。

ピアノのレッスンは楽しくやりつつ向上をしていくものです。楽しくやるためにはそれなりの知識と技術が必要。それを教えてくれる先生の選び方もまた縁や運がありますが、色々な先生を最初に体験レッスンなどで試されるのが1番良いと思います。
そして先生側も自分が選ばれなかったからと言って生徒に嫌がらせをしないこと。
たまたま合わなかったのだから、合わないものを無理矢理合わせる無駄な時間を過ごさなくて良かったと思えばよいのです😇

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