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あなたへ届け ~フジ子さんの話あとがき~

フジ子さんの話、を久々に書いた。

このフジ子さんの話は、わたしがとても大切にしている想い出で、彼女との出逢いがなければnoteで文章を書くということもなかったかもしれない。
それだけに思い入れが深くて、一話一話書くのにとても時間がかかる。

わたしが今暮らしている町は、フジ子さんが暮らしていた町とは別のところで、今ではたまに近くを車で通りかかったりするくらいだ。
だから、彼女と通ったあのスーパーや、足を延ばした商店街を訪れることは、ほとんどない。

それなのに、わたしはしょっちゅうフジ子さんのことを想い出す。

いつものスーパーでフジ子さんと食べたものをたまたま見かけたとき。
フジ子さんと通った、少し離れた町のあの病院の前を通るとき。
コンビニでカウンターの奥に、フジ子さんに言われて買いに走ったタバコの箱を見つけたとき。
それから、痛み止めのカロナールという文字を見たとき。

フジ子さん、元気にしてるかな。

滑稽かもしれないが、わたしはいつもそんな風に彼女のことを想ってしまう。

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そんなわたしのフジ子さんのお話をたくさん読んで、感想文を書いてくださった方がいる。

折星かおりさん

わたしが彼女と出逢ったきっかけは、編集部のおすすめからだった。


ある日ふと開いたおすすめのページに、とても素敵な文章が綴られていて、もっとこのひとの書くものを知りたい、そう感じてそのまま指が流れるように彼女の投稿を追っていた。

そのうちのひとつにコメントさせてもらったことから彼女との交流がはじまった。

そうしたらなんと、彼女のnoteへ初コメントを書いたのがわたしだったのだと言う。



感想文で取り上げてくださったこの投稿。

奇しくもわたしがnoteを始めた時に、初コメントをもらったお話だ。

扉をひらいてくれた、大切なひと。

わたしがその方からコメントをいただいたのは、オムライスにまつわるフジ子さんのことを書いたお話だった。


そうしてかおりさんが感想文を書いてくださったおかげで、今ごろになってまた、フジ子さんのことを書いたお話たちにぽつり、ぽつり、とスキのハートが点るようになった。


なんだろう、このnoteの環は。


不思議なご縁がつながって、ぐるぐるまわる。

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わたしはこれまでにも何度も触れているが、このnoteたちを自分のために書いている。

もちろん誰かに読んでもらえて、スキやコメントをいただけることは非常に嬉しいし、また書こう!という最大の励みになる。
けれど、わたしを動かす一番大きな力は、いまのわたしが、いつかのわたしに向けて書いているということ。

自分の書いたものを読み返して、ああ、あの時こんな風に思っていたんだなぁ…とか、今はこんな風に感じているのになぁ…とか、思い返すことで自分のことを再発見できる。

だからわたしの書くものは、自分への手紙としての要素が強いなと思っている。


けれど、今回のこのフジ子さんのお話だけは、自分のためにではなく、どうしても届けたいひとがいたから書くことができた。

あのひとへ、届けたい。

その強い想いが、原動力となってフジ子さんの新しいお話が降りてきた。


いま、書かなきゃ。

そんな想いで書くのは、はじめてだった。

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このところ、わたしの中に書きたいと思うことが多くて、優先順位が難しい。

フジ子さんのお話も、実はまだ他にも書きたいエピソードがいくつも残っているし、なんちゃってレシピの話や、家族とのなんでもない毎日の話なんかも入れたら、もう次から次へとキリがない。

ただ、書きたいと思うものを書けるというある種の贅沢さに、わたしは慣れてしまいたくない。それを手にするまでに通ってきた道のりを思うと、ただ書くということで満足してしまって終わらせたくはないから。


書くということ、読むということ、それはわたしたちに与えられたとても恵まれた賜物なのだ。

ここにいると、誰かと触れ合っていられて、時にふわっと優しい心で包まれたりして、とても居心地が良くて、つい忘れてしまいそうになる。


書くことは、誰しもに与えられた賜物で、それを生かすも殺すも自分次第。

使い方を間違えると、ことばの刃で誰かを傷つけたり、飲み込んだ毒で自らを殺すこともできてしまう。

ことばを使うというこの特別な能力を、過大にも過少にも評価しないで、自分に与えられた分は惜しみなく出していきたいと思う。


それを誰かと比べたり、むやみに武器のように使うのではなく。

自分と、そのまわりに広がる小さな円の中に入っているひとたちのために。


まあるく、やさしく。

傷つけようと牙をむくものには、時に鋭く。



ことばでしか繋がったことがないあなたにも。

まだ顔を合わせて話したことがないあなたにも。


届け。


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わたしリスト/フジ子さんのお話

フジ子さんというひと ~フジ子さんの話1~

フジ子さんのオムライス ~フジ子さんの話2~

しょっぱい西瓜のうすみどり ~フジ子さんの話3~

さんかくおやまのおいなりさん ~フジ子さんの話4~

真っ赤な薔薇を一輪、あなたのために ~フジ子さんの話5~

いろんなものを、ちょっとずつ ~フジ子さんの話6~

ふうわり、桜の香り ~フジ子さんの話7~

紅色の宝石 ~フジ子さんの話8~


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追記:今日、紅秀峰の入っていた黒い箱を畳んで捨てようとしたら、底面にこんな素敵なメッセージを発見しました。

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誰かに届けたい、と願う心に、思わず胸がじいんとしました。

まわそう、やさしい気持ち。


サポートというかたちの愛が嬉しいです。素直に受け取って、大切なひとや届けたい気持ちのために、循環させてもらいますね。読んでくださったあなたに、幸ありますよう。