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4年半の在籍を経て起業を決意したミーミル執行役員が語る、ミーミルに入ったからこそ向き合えた「自己変革」

2023年6月、ミーミル執行役員・SPEEDA JAPANのマーケティングチームリーダーを兼任してきた中川裕章が、起業のためミーミル(ユーザベースグループ)を退職しました。

2023年1月にミーミルとSPEEDAの一部組織が融合して以降、ミーミルの執行役員とSPEEDA JAPANのマーケティング組織のリーダーを兼任してきた彼は、これまでの社会人人生を通じて、多くの葛藤を抱えてきたと言います。

そんな彼が出社最終日に、ユーザベース全社員の集まるミーティングで、カルチャーと仲間たちによって支えられた4年半、繰り返す葛藤を乗り越えて得た「ME(わたし)からWE(わたしたち)へ」という景色の転換の軌跡について大いに語ってくれました。

(※以下は、6月に行われたユーザベース全社員に向けたプレゼンテーションを再編集したものです)

おはようございます。
今日はあいにくの大雨・台風ですが、雨にも嵐にも負けずにお話しできればと思っています。
約4年半をユーザベースで過ごしてきて、本日が最終出社となります。

今回僕がお話しするテーマ、それは「MEからWEへ」です。


MEの時代

まず、ミーミルを含むユーザベースグループでのキャリアから簡単に触れたいと思います。
2019年2月にミーミルにセールス職としてジョインしました。
当時会社は10人程度の規模でしたが、その後急拡大を続け、リーダーという役割を任されるようになり、去年ミーミルの執行役員制度導入と同時に執行役員に就任しました。

そして2023年、今日に至るまでの約半年間は、ミーミルの執行役員をやりながら、SPEEDA JAPANのマーケティングチームのリーダーという役目を任せていただきました。

そんな中で、たくさん悩みました。
今思えば、器が小さかったなと思うこともたくさんありました。

しかし、ユーザベースにいたからこそ、僕は今「自己変革の道を歩めている」と感じています。本当に救われたなと。

ユーザベース/ミーミルでのキャリア変遷


突然ですが、僕には新卒当時から、社会人人生のモットーがありました。
「モテる男たれ」というものです。

「一人でも多くの人間から好かれ、頼られ、必要とされる存在になる。」
そんな願望がありました。

しかし、実際のところは違いました。
いつも人からどう思われるかを気にしたり、立場や権力が上の方に対しては迎合したりと、自分の思っていることを言えなかった時代がありました。

ミーミルに入社する前に複数社を経験しましたが、そういったことが原因で問題を何度か起こしてしまいました。

そして、当時の解決策は、「自分か相手が異動するまたは辞める」こと、つまり「直接当事者と関わらないようにする」ことだったんです。

そして広告代理店やコンサルティングファーム時代は、「圧倒的なロジカルさ」を身につけさえすれば、強い人に対しても萎縮せずに乗り越えられると信じている自分がいました。

ミーミルに入社してからも、色々ありました。
共同創業者の守屋さんとは、入社当時、セールスの方針で意見が合わず、僕が一方的に1週間ほど口をきかなかったことがありました。

自分の斜め上のポジションに新しい方が入ってこられ「使えない奴」と思われないようにと必死になっていたら精神的に辛くなってしまい、最終的にはその方が退職されるという事態にまで発展してしまいました。

また、ある時ミーミルで隣の組織のリーダー同士だった方と、うまくコミュニケーションが取れず、他のメンバーに仲裁に入ってもらったなんてことも。

そんなふうにして、ミーミルに入社して以降も、本質的には組織の中で以前と同様の問題を抱えていました。
渦中では、当然のごとく、自分が被害者だと思っていました。
しかも、それを周囲に漏らすなど、より悪い状況を作ってしまっていました。

今振り返ると、「自分の思い通りにしたい」という考えが強かったと思いますし、一方同時に、集団やコミュニティに所属していたいが故に自分の気持ちを押し殺し、望まない自分になっていたのも事実です。

先ほど話した「モテる男たれ」というモットーの裏返しとして、その存在を脅かす対象に対する保身のため、「MEの視点」でしか生きられていなかったんです。
そして結果的に、自分は他者の中の人生を生きていた、ということにだんだんと気付くようになりました。


どうして変わることができたのか

繰り返しになりますが、これまでは人にどう思われるかを気にして萎縮し、迎合して生きてきました。
そんなくだらないことにマインドシェアを奪われている自分が嫌だ!と、コップの水が溢れるような感覚になりました。

そんな僕の変化を支えてくれたのは、まさにミーミルやユーザベースのカルチャーやメンバーたちでした。

入社後、会社が創業当初から掲げる6つのバリューに関して、代表の川口さんや守屋さんと共に考える時間を定期的に持たせてもらっていました。
そして、2020年にミーミルはユーザベースのグループ会社となり、それ以降、双方のそれぞれのバリューが、僕自身の心理的安全性の土台にあることを感じていました。
ミーミル入社前は「バリュー経営」というものを全く知らなかった自分が、バリューの価値に気付くことができ、それに支えられているということは、大きな変化でした。

そして、具体的な転機は2022年の3月頃からです。
2022年を「自己変革の年」と位置付け、取り組んできたことがありました。

それは、コーチングや稲垣さん(ユーザベース代表取締役Co-CEO 稲垣 裕介)のメンタリング、川口さんとの毎週の1on1です。

コーチングにも、はじめは全く期待をしていなかったんです。
けれど、周囲の多くのメンバーがその重要性を教えてくれ、背中を押してくれました。
そのおかげで一歩踏み出すことができ、自分自身ときちんと向き合うことができました。

一つ言えることとして、バリューの解釈や受け取り方に悩んだり、自分自身をアップデートしたいと感じたりしたときに声をあげれば、この会社は誰かが手を差し伸べてくれる環境です。
変わりたいと願う僕に対して、あらゆる人々が、手を差し伸べてくれました。大変感謝しています。


どのように変化したのか

そんなふうに、周囲のサポートを受けながら自分自身と対峙し、自己のありたい姿を追求する過程で得た最大の学びがあります。

「物差し自体の多様性を受容できるようになった」ことです。

これまでは、自分の物差し・尺度で、他人のことを捉えることしかできていませんでした。
ユーザベースの7つのバリューの内の一つ「異能は才能」も、理解して受け入れるまでは至っていませんでした。

ユーザベースの7つのバリュー

実際、コミュニケーションに関して過去の自分自身を振り返ってみても、自分の物差しで測れない・受容できない人や意見があった際に、無理に自分側に引き込もうとしていました。
自分の価値観でしか、物事の良し悪しを判断していなかったんですね。

でも、今は違います。
自分と異なる価値観を持った人達も内包した大きな円をイメージして、その中に自分もいる=「WE・私たち」という共存・共創の視点で、他者と向き合えるようになりました。

具体例を2つお伝えします。
1つ目。例えば、自己主張が強いと感じた相手に対して、物怖じして意見を言えないとします。それを内省していくと、「嫌われるんじゃないか?と思うから、恐れて言えない」という事実に気付きました。
そこで、相手との理想の関係をセットで伝えるということを意識するようになりました。

「僕自身はあなたのことが好きだし、信頼したいと思っている」ということを、感情も交えて自己開示することで、少しずつ言いたいことが言えるようになってきたんです。

2つ目の例で言うと、メンバーから提案されるプランや企画に対し、「2歩手前のものが上がってくるんじゃないか?」と不安に思い、故に、担当者に任せきれなかったり、メンバーにやる気やコミットメントをもっと向上させてほしいと思うことが何度かありました。

けれど、それは自分自身の価値観や仕事に対するスタンスを基準にした、自分中心の考え方だったことに気付きました。

皆が同じ価値観を共有しあっているわけではないですよね。
僕は勝手に、好きでがむしゃらに働いているけれど、そうはできない・したくないと感じている人もいるはずです。

人それぞれのWill(意志)や考え方、個性を知った上で、あくまでチームとして目指すべき目標に向き合うことの重要性を学びました。

結果、業務においても異なる視点が掛け合わさって新たな施策が生まれることにも繋がり、本当の意味で「異能は才能」に共感できたと、今では感じています。

加えて、逆説的ではありますが、多様性に耳を傾けることで、以前よりも自分自身で見聞きした情報や感覚に対して、正直になれている感覚もあります。
WEの視点で生きることで、その中に居る自分自身を、より大切にできるようになったのだと思います。

奥さんからも変わったねと言ってもらいました。

最後に伝えたいこと

WEの円を広げ、影響の輪を大きくするための僕なりのTipsを6つお伝えします。

①相手の頭の中を自分と同じ景色にする
意見を言ったり企画を提案したりするときは、そのアイデアに自信を持って話すわけですが、その具体的なイメージが頭の中に浮かんでいるのは自分だけです。なので、全てが完璧に伝わるわけではなくても、できる限り、相手の頭の中にも自分と同じ景色が浮かぶように、「伝え方」を工夫すると良いと思います。

②規定演技と自由演技の関係を意識する
自由というものは責任から生まれてくるものだと思っています。
フィギュアスケートでもショートプログラムとフリープログラムがあるように、まずは規定の演技にベストを尽くす。我々の仕事に置き換えるならば、目標に対する成果やコミットメントそのものと言えます。そしてその先に、自身の企画を提案したり新たな施策に自由度高く挑戦するという、本当の意味での自由があると思っているので、それらのバランスを意識して業務に向き合うことが大切だと考えています。

③変わるきっかけを提供する
人は、他人の意見や判断を変えさせることはできません。相手を変えようと頑張るのではなく、ヒントやアドバイスを通じて、相手が自分自身で変わる必要性に気付くための機会を提供する、という意識でチームメンバーと向き合うことを意識すると良いと思います。

④メンバーのこだわりを掛け合わせて独自の強みにする
一つ例を挙げると、SPEEDAとの組織融合があってから半年間、JJさん(SaaS事業CMO 兼 NewsPicks Stage.事業責任者 酒居 潤平)と共に仕事をしてきました。しかし、彼と僕とは強みや特性が全く異なり、その上でお互いそれぞれに強いこだわりがあります。全てお互いのことを理解することは難しい前提で、それでも互いを認め合いながら対話を重ねることで、新しいアイデアが生まれることがありました。そのようにして異能がかけ合わさることで、きっと価値あるものを創出できると考えています。

⑤実現したい願いもセットで伝える
何か意見を提案する際に、whatを伝えるだけでは受け手の同意や協力は引き出しにくいことがあります。
そんなときは、「なぜ自分はこうしたいと考えるのか」というwhyや、その根底にある「願い(=自分より上位にある、きっとみんなの何かが良くなるという願い)」をセットで伝えることをお勧めします。
それだけで受け手が見える景色は変わり、納得・共感しやすくなります。
先ほどの同じ景色を共有するということにも繋がります。

⑥誰しもが「仲間」と考えてみること
自分にとって不都合なことが起きたときに、自分が被害者・その相手が加害者といった二項対立の概念で捉えるのではなく、そんなときこそ仲間と捉える工夫をお勧めします。
WEの視点で目の前の事象を俯瞰してみると、相手の立場をより想像できたり、その不都合さえも自分の糧になると感じられたりするかもしれません。


そして最後に、かつて苦しかったときの自分に対して手紙を届ける気持ちで、メッセージを書いてみました。
こんなふうに胸を張って、大勢の前でオープンに思いを言えるようになったのは、何よりもの成長だと実感しています。

経済情報の力で誰もがビジネスを楽しめる世界、「Play Business」を掲げるユーザベース、そして、「経験知に価値を与える」というミッションに端を発して生まれたミーミルの、素晴らしいバリューと仲間がいたからこそです。
これからは起業し独立しますが、ゆくゆくは、ユーザベースのような素晴らしい組織をつくっていきたいと思います。

皆さん、ありがとうございました!

【コメント】ミーミル代表 川口 荘史さん:

入社当時はイキった兄ちゃんみたいな感じでした(笑)。
声は大きく、プレーヤーとしても成果が出ていて優秀だった反面、はじめは事業や組織に対して自分の色の出し方はわかっていなかったように思います。
先ほどの話にもあったように、上司の顔色を伺って自分を出せていなかったと思うことはありました。
また、他人を気にし過ぎて、それ故に無意識に政治的な振る舞いが強くなったりと、周囲を巻き込んでしまうこともあったように思います。

一方、彼の特徴として人の心を読むのがとても上手です。
感受性も非常に高いですし、そういった特性は誰でもが持てるわけではありません。
しかし、それが悪い方に影響してしまうこともあります。
リーダーポジションになると、意思決定はメンバーの意見の総和で行うことではなかったりするので、彼の特性と、リーダーとしてのあるべき姿のコンフリクトを乗り越えるのが大変だったと思うし、そこの葛藤ってすごいんだろうなと見ていました。
営業リーダーになる時は「中川さんとしてどうしたいか?」という、確認のプロセスを大事にしましたね。

しかし、今では自己理解を深め、多様なフレームの中でメンバーと向き合いマネジメントできるようになったことは、大変素晴らしいなと感じています。

リーダーにとって、わかったつもりになるのではなく「他者のことはわからない」という前提を認識していることがまず重要。その上で、わからないと思考停止せずに「この人はどう物事をとらえているのだろう?」と理解する努力をし続けるのが大事だと、改めて思いました。


中川さん、ユーザベースでの約4年半、お疲れ様でした!
これからの活躍も全力で応援しています。


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