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【vol.3-5 2022春号】 耳すま企画「熱きレッズレディースサポーターのお二方と、女子サッカー・WEリーグについて語り合う」

 少し前に、「WEリーグ元年を振り返る」という記事にて、観戦レビューをチームごとに整理したものを発信しました。

 今回は、私個人の自己完結的な発信ではなく、WEリーグクラブサポーターさんと語り合うことを通じて、改めて振り返ってみようという企画です。既にリーグ終盤に交流会企画を実施していて、記事にしていますので、興味のある方は、是非こちらも読んで頂けると幸いです。

  さて、本題にうつります。6月4日(土)20時半~、note&Twitter仲間である「ken@たっくん(@ken_20141124)さん / Twitter」(以下kenさん)と「びえぇんるささん」のお二方と、WEリーグの話題を中心にしたZoomによる交流会の場を設けさせて頂きました。

 その直前に、私個人は、耳すまとして下記のWEリーグのトークショーにも参加していました。

 そんなこんなで、6月4日の夜は、他の人のお話を伺いながら、WEリーグのことを振り返り、考える機会となりました。

 本投稿では、kenさんとびえぇんるささんとお話したことを振り返り、WEリーグと私たちの関係性がより良いものになることを願いながら書いていきたいと思います。会話をそのまま書き起こしてしまうととてつもない文量となり、まとまりもないため、耳すまライター西出の独断編集にて書いていきます。ご了承ください(笑)。

1.kenさんと、女子サッカー・WEリーグ


 まず、三菱重工浦和レッズレディースを前身クラブの時代から長く応援してきたkenさんについてご紹介いたします。
 kenさんはTwitterを中心に頻繁に女子サッカーやWEリーグに関する話題を積極的に情報発信されている方です。
 kenさんと女子サッカーの出会いは2004年のなでしこJAPANの北朝鮮戦まで遡るそうです。

 この試合は私もテレビで観ていて、とても感動したことを強く覚えています。世間一般には2011年のワールドカップ優勝が知られていますが、その前から女子サッカー日本代表の試合は、魂のこもった心が揺さぶられる内容のものばかりでした。kenさんはレッズレディースの前身であるさいたまレイナス時代から応援し始め、かれこれ20年近く女子サッカーを応援し続けてきているそうです。私や、びえぇんるささんのように、WEリーグから真剣に女子サッカーを見始めた勢としては、長く女子サッカーを応援してきているkenさんのような存在は本当にありがたく、つい最近、「#WEリーグありがとう」「#ありがとうWEリーグ」のハッシュタグがTwitter上で盛り上がりを見せましたが、この交流会では、#kenさんありがとう、ですね、といった内容となりました。kenさんのように長く女子サッカーを支えてくださった方がいるからこそ、現在WEリーグを楽しむびえぇんるささんや私のような人間が出てきたわけです(特にびえぇんるささんは、kenさんのTwitterでの楽しそうな発信に影響を受けて女子サッカーに興味をもったそうで、直接的なきっかけになった人のようです)。しかし、そういったお話をしていたら、kenさんから、kenさん自身も、過去に女子サッカーを応援し続けた人の背中を見てきたというお話もしてくださいました。こうして脈々と女子サッカー応援の歴史は受け継がれてきているのだなと感じました。この女子サッカー応援の歴史を受け継ぎ、未来にバトンを渡していけるのか?と考えると、身の引き締まる想いになりました。

2.びえぇんるささんと、女子サッカー・WEリーグ

 続いて、WEリーグ後半から突如現れ、SNSを通じた豊かな表現力でWEリーグを盛り上げたびえぇんるささんをご紹介します。
 びえぇんるささんは、note、Twitterを中心に活発に情報発信されている方で、またお仕事で培った経験を生かして、WEリーグに関する「ユーザテスト」を行ったりする等、最近、精力的にWEリーグをはじめとする女子サッカーの応援に力を入れている方です。つい最近も、ユーザテストの結果と考察に関する記事を書いていました。是非、「WEリーグを盛り上げるためには?」を一緒に考えてみたい方は読んでいただきたい内容となっています。

 当初は、娘さんと一緒にWEリーグに魅せられていたびえぇんるささんですが、この日(6月4日)も、WEリーグロス状態のびえぇんるささんに、NWSLで杉田妃和選手所属のポートランドと遠藤純選手所属のエンジェルシティの試合がありますよ、と伝えてみたところ、かなりの熱量ではまりこむなど、もはやWEリーグを越えて、女子サッカー全体を盛り上げていきたいという強い気概を感じる方です。

 以上、お二方の紹介をさせて頂きました。お二方に共通することは、浦和レッズ(男子チーム)を長年応援してきたという経験があるということ。さらに、私自身も、小中学生の時に清水エスパルスに熱狂した経験があるので、Jリーグに熱狂した経験をもった3人が、今度はWEリーグにはまっている、という流れで今夜の企画に至ったということになるわけです。なんだか感慨深いですね。

3.女子サッカー・WEリーグを通じた交流


 今回の企画もそうなのですが、観戦をきっかけにしてサポーター同士の交流が生まれる、ということが話題に挙がりました。WEリーグでは、サポーターの方々が、気軽に観戦に誘ってくれるような交流が生まれているそうです。また、Jリーグ等男子サッカーでは他クラブサポと交流するなど言語道断!!みたいな雰囲気がある側面もあるらしいのですが、WEリーグでは他クラブサポと交流を深める雰囲気が当たり前のようにあり、推しクラブサポでありながらも、WEリーグや女子サッカー界全体を応援する「箱推し」の雰囲気の人が多いという話がありました。このことは、次の章の話にもつながってきますが、女子サッカー・WEリーグの魅力のひとつとしてカウントできるのではないでしょうか。

4.女子サッカー・WEリーグの魅力


 交流が生まれていることが、ひとつの女子サッカー・WEリーグの魅力であると述べましたが、女子サッカー・WEリーグに魅せられた3人からは他にも次々と色々な魅力の話が出てきました。
 まず、なでしこリーグ時代から女子サッカーを観てきたkenさんからは、WEリーグが誕生して変わったこととして、子どもや若い層の観戦者が増えたというお話がありました。
 また、びえぇんるささんからは、社会人になってサッカーを観る時間がなくなってサッカーから離れていたが、WEリーグを観たことをきっかけにして、サッカーに対する情熱を思い出したというお話がありました。男子サッカーとは違って、女子サッカーには「手作り感」があり、そこも魅力のひとつであるといった話もありました。「男子チームを元々応援してきた人たちを惹きこむ魅力がWEリーグにはある」とびえぇんるささんは話します。WEリーグには、男子のJリーグクラブから生まれた女子サッカークラブ、女子サッカー単体としてのクラブ、いろいろありますが、Jリーグの勢いを生かしたり、女子サッカーならではの独自性を生かしたり、それぞれの良さを発揮して多様性を保持しながら発展していけばよいのではないかと感じました。
 そして、びえぇんるささんからは、ちふれの観戦に行ったときに、「完全に商業施設型のつくりに変えていってるな」と感じたというお話もありました。そのことの意味とは、「敷居を下げて」「ファミリー層も滞在できるようなつくりになっている」ということだそうです。そういった特徴からしても、「社会人になって忙しさでサッカーから離れてしまった層(働き盛り世代)を取り込むのにWEリーグは使える!」という力強いお言葉を頂きました。Jリーグ開幕時にサッカーにはまった年代は今、ワークステージ・ライフステージの観点から働き盛りの年代ですが、子どもを連れていきやすい雰囲気がWEリーグにあるというのは、大きな強みではないか、と。
 特定のクラブのサポーターでありながらも、「箱推し(WEリーグ全体を応援する)」の雰囲気があるのも魅力、という話は、前述しましたが、選手同士の間でも、ファウルしたときに手を差し伸べたり、審判に対しても笑顔で接したり、全体として「リスペクトの雰囲気がある」というのもWEリーグの魅力であるという話もでました。
 WEリーグ終了後、WEリーグに対して批判する声も多かったですが、それだけWEリーグが気になって仕方ないということで、無関心なわけではないということだと思います。このことは、ポジティブな現象としてとらえてよいのではないかな、と私は思いました。
 「WE=みんなで」という雰囲気があることは非常に魅力的だ、という点も3人で共有できました。ライト層からヘビー層まで、多様な入口があることはWEリーグの魅力です。「こういう人でないと女子サッカーには関われない」というような閉鎖的な雰囲気がないことは、きっとこれから先も大切になってくると思います。いろいろなアプローチで女子サッカーを盛り上げていけそうな機運があることは、これからの発展に向けて良い傾向なのではないでしょうか。

5.女子サッカー・WEリーグの課題


 さて、魅力について語ってきましたが、これからも女子サッカー・WEリーグが持続・発展していくために、何が課題としてあるのか、ということも少し考えました。
 kenさんは、コロナ禍が明けて、完全に声出しOKになったときに、選手たちに第一声、まずなんと声をかけようか?などブレイク期間もサポーターとして考えることは沢山ある、と真剣に話されていました。
 発信していることの意義についての話題も出ました。「人のいないところに人は来ない」「(発信していれば)みてくれている人はみている」とびえぇんるささんは話します。これから先も、シンプルに、女子サッカー・WEリーグを楽しむ姿勢を発信し続けていくことの大切さを再確認することができました。
 限られた時間の中で、例えば、男子サッカーを多く観ている人が女子サッカーを観る時間も割いてくれるのか?という視点から考えていったときに、男子の観客層を狙うべきではない、という声もあります。男子も女子も、という風に、長い時間を割くのは、正直に言えば体力的にきついという現実はあります。時間を割いてでも女子サッカー・WEリーグを観たい!そんな欲求が生まれるように、これから先も、魅力をさらに深め、掘り下げ、発見し続けていく必要がありそうです。また、男子サッカーであったり、他の競技・他の分野のコンテンツと、「時間を奪い合う」と考えてしまうのではなく、お互いの良さを認め合いながら、協調していくようなムーブメントを続けていくことも、長期的に考えると大切なことなのかもしれないです。
 「理念先行」という批判もあったWEリーグですが、元競技者の私からすると、男子は「男子サッカー」と言わないのに、女子のサッカーには「女子サッカー」と呼ばれ続ける長い歴史を背負ってきているのだから、多少ジェンダーを意識せざるをえないのはしょうがないと感じてきましたし、理念先行とか、社会性の色彩が強くなるのはいたしかたないのではないか?という話もしてみました。この意見は、元女子サッカー競技者ならではの発想なのかもしれませんが。
 新規ファンの方々に対するアプローチの話も出ました。スタジアムでの体験をいかに充実したものにしていくか?、試合数を増やして観る機会を増やしていくことは必要不可欠だ!、とkenさんは力説していました。女子サッカー・WEリーグに触れる機会がそもそも少ないと、普及しようがないので、持続的に、多様な入り口をもって、身近で日常的な存在として、女子サッカー・WEリーグが存在していくような工夫がこれからもっともっと必要なのかもしれません。観戦機会を増やすことも大切ですし、「WE ACTION DAY」のような地元地域のコミュニティとの交流企画も長期的にとらえると普及するにあたって、じわじわと大きな力を発揮していきそうな気がします。WEリーグのクラブは、関東クラブが多かったり、地域性に偏りがある傾向が今はあるので、女子サッカーのチームが少ない地域での開催を行うなど、日本各地で女子サッカーを日常的に観戦できる機会がつくられるということも大切かもしれません。

6.浦和レッズレディース南選手の話題


 この日は、WEリーグのファーストシーズンが終わり、退団選手のニュースが多く飛び交うタイミングだったということもあり、退団する選手の話も出ました。欧州移籍が決まった南選手、これから楽しみですね、と私が話を振ると、kenさんは、南選手に対しては、何か他の選手と違う雰囲気を以前から感じていたと話していました。今欧州で活躍している熊谷選手も、なでしこリーグ時代から、他の選手とは何か雰囲気が違っていたそうです。世界トップレベルを目指す選手というのは、発しているオーラからして違うということのようです。私はそこのオーラの違いのようなものは全く気づけなかったので、長年女子サッカーを観戦してきているkenさんはさすがだと感じました。
 南選手の最後のセレモニーに、kenさんとびえぇんるささんは駒場で立ち会うことができたようですが、とてもグッとくるセレモニーだったと回想されていました。こういった退団する選手に対するセレモニーがしっかり行われるようになったことも、WEリーグができてよかったことのひとつとして挙げられると思います。

7.これからの私たち


 「それぞれの立場で、『楽しい』を発信していこう、でいいんじゃないですか」とびえぇんるささん。これからも素晴らしさを発見し続け、掘り下げ続け、なんとか豊かに表現し続け、普及につなげていくこと。女子サッカー・WEリーグを応援する立場としてできることってそれだけなのかもしれませんが、でも、実は、WEリーグの存続・発展のためには、必要不可欠でとっても大切なことなのではないか、と私も共感しました。

8.編集後記

 今回、このイベント直前で、パソコンの調子が悪くなるというアクシデントに見舞われてしまった耳すまライター西出。一時は今回の企画を延期することも頭をよぎったのですが、スマホで強行で実施し、無事企画を終えることができました。スマホからだとZOOMの録画も難しく、困っている状況の中で、びえぇんるささんが代わりにパソコン画面で録画してくださるなど、助けられながらの企画となりました。kenさんについては、ひとつひとつ丁寧にお話しする姿が印象的で、長年女子サッカーを観てきた人としての、女子サッカーに対する深い情熱を強く感じました。びえぇんるささんはkenさんの楽しそうなTwitterの発信がきっかけでWEリーグに興味をもったそうですし、そういうきっかけをつくることができたという話を聴いて、kenさんも非常に嬉しそうな様子で、続けてきてよかったという雰囲気が漂っていました。今回の企画も、非常にリスペクトあふれる雰囲気で終わることができ、よかったですし、これから先も、この雰囲気・気持ちを忘れず続けていくだけでなく、どんどん発展・普及していったら素晴らしいなと感じました。
 kenさん、びえぇんるささん、素晴らしい時間を、本当にありがとうございました。

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