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鶯の声で目覚める

目覚める、というけれど
目は最後にやっと開く。
ああ、鶯が鳴いている…、そう思いながら眠りから覚めた。
目が覚めたのではなくて
眠りの世界から意識がぷかりと浮かび上がってきた。
今は山鳩が鳴いている。
耳はちゃんと起きているのに
まだ目は眠いと言って閉じようとする。
ふと手術で麻酔をしたときのことを思い出す。
十年ほど前なのに意識が戻った時のことをよく覚えている。
お医者さんや看護師さんの話し声、道具のかちゃかちゃする音…そんな周りの音がかすかに耳に入り始め、切ったお腹がぎゅいんぎゅいんと渦巻くような痛みのような痛くはないような、そんな感覚を訴えていた。
そして目を開いた。
看護師さんが声をかけてくれた。
そんな風だった。
そうだ、目を開くと周りに起きたと分かってもらえるのだ。
目を開かないと、頭と耳に意識が戻っていたとしても起きていると思われない、それは毎日の朝でも同じこと。
たぶん、他の何かでも同じこと。
目が開いていないと他人には起きていると分からない。
まだ眠っていると思われてしまう。
目覚めていないと思われてしまう。
実際目覚めていないのかもしれない。
もう鶯は鳴いていない。
また眠ってしまいたい…

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