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エッセイ・戦争の本【シロクマ文芸部】

平和とは、夏休みに戦争の本を読むことだ、と頭に浮かんだ。
戦争に関する本を読まされるのは平和だからだと思う。
最近のことは分からない。私が子供だった頃は毎年、夏の課題図書で戦争に関する悲しい本を読まされた。敢えて「読まされた」と書いておく。私は自ら悲しい結末の本は手に取りたくないからだ。涙もろくて絶対泣く。
『ガラスのうさぎ』を泣きながら読んだことを思い出す。
あれ?もっと読んだはずなのに思い出せない。
そうだ、さっきikue.mさんのことろで平和のために嫌なことも良いことも忘れてしまおうと決心したからだ、きっと。そうでなければ更年期の物忘れだ。

でも一冊、泣かずに読めた原爆の本がある。洋館の小さな椅子がコトコト歩く推理仕立てのファンタジー、松谷みよこさんの『ふたりのイーダ』だ。ファンタジーだけど胸を打つ。泣きながら読まなくても子供心に原爆というものへのイメージが持てる。

これがシリーズものの一作目だと知ったのはずいぶん後のことだった。
続きが読めるのかと思ったがそうではなく、それぞれの巻が同じ主人公のもとで別の問題に切り込んでいる。アウシュビッツ、戦争中の人体実験、公害問題、私は全部は読んでいない。

この前、句会で私の俳句の先生から、安易な終戦日の句を作ることについて注意する話があった。戦争を経験していない私はどうしたらいいのか分からないと思いながら聞いていた。まだ答えはみつからない。
そのため今回の「平和とは」というお題に対して、いつものように小説仕立てで書くことが出来なかった。
でも戦争を経験していないとみんなが萎縮していたら、そのうち誰も何も書けなくなってしまう。その前に答えを見つけなければいけないと思っている。

*小牧幸助さんの企画に参加しています。


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