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snail mail かたつむりの手紙

「郵便です」
空耳のような小さな小さな声がしたので窓のほうをみると
ほんの少し開いた隙間からかたつむりが覗いていた。
触覚に小さな小さな白い四角い封筒を付けて差し込んでいる。
「あらありがとう」
私は急いでかたつむりの触覚から手紙をはがしとった。
かたつむりは仕事を終え、のそりと下に見えなくなった。
「いくら”snail mail”って言うからってねえ」
私はひとりごとを言いながら、机の引き出しからピンセットとルーペを出す。
そしてピンセットで用心して小さな封筒を開けた。
それはテントウムシからの手紙だった。
「こんにちは。まどのそとのちいさなおうちをとうみんにおかりします。テントウムシ」
私はルーペを置いて考える。
「ちいさなおうち?」
そうだ、夏にすごく小さな家を木で作ってみたくなって、キャラメルの箱くらいの家を作ったっけ。
あれ、どこに置いたかな?
そうだ、窓にぶらさげていたけど…
窓を開けて覗くと、小さな家は窓の下に落ちていた。
入り口の穴からなんとなく見えた。
中にたくさんのテントウムシがいるのが…
「役に立ってよかったわ」
屋根を赤い色に塗ればよかったな…
そう思いながら私が窓を閉めようとしたとき
強い風がせっかくの小さな手紙をどこかに吹き飛ばしてしまった。

(了)

*postcrossingという、海外の人達と絵葉書をやりとりするオンラインプロジェクトに参加していたとき、手紙に関するいろいろなことを知りました。
基本英語でやりとりをします。私は英語が苦手ですが絵葉書に書く程度はGoogle翻訳を頼りながらなんとかなりました。
どこかの国からのハガキに「snail mail」と書いてあったので意味を調べたら、「mail」と比べてかたつむりのように遅い普通の「手紙」のことだと分かりました。
日本だと「メール」と「手紙」と書き分けるから分かるけれど、英語だとどっちもmailだからか~とフムフムしました。
そんなことを思い出しながら書きました。

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