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詩と暮らすための招待状【シロクマ文芸部】

詩と暮らすための招待状が届いた。

歩いている私の帽子の上にひらりと乗った。

それは桜紅葉の落ち葉にしか見えない人にはただの落ち葉だろう。

でも帽子に手を伸ばしてそっとつまみ、顔の前に持っていった瞬間、私には分かった。

それは詩と暮らすための招待状だと。

それを手にしている間は私は詩と共に暮らすことが出来る。

ほら、もう始まった。

葉っぱをじっと見つめれば

小さな穴が細く細く妖精の風を吹き通す

そこを通り抜けた風は透明なリボンになって

歩いている少女の髪に絡む

風のリボンが絡んだ髪は楽し気に揺れて

陽の光ときらきらと遊んで

遊び飽きたらまたどこかへ飛んでいく

そんな様子をみている私の足取りも風のように軽くなる

詩人というのは重い足取りで重い心で

明るい日にも鬱々と歩くのではないだろうか?

そんな詩人もいるだろう

心に乗せると重く感じる詩もあるだろう

どんな詩と共に暮らすかは自由だ

私は軽やかに空に広がって行くような詩を連れて歩きだす

詩と暮らすということは

降り注ぐ言葉を手のひらで受け止めて

ガラス皿にこんもり乗せてみたり

テグスでつないで首にかけたり

スープに浮かべたり

本にはさんでしまったり

好きなようにすればいい

私は招待状を親指と人差し指でしっかりとはさんで

降ってくる言葉は口笛にのせて

そのリズムのままに家へと向かった


*小牧幸助さんの企画に参加しています。


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