見出し画像

詩 "蟻と菫"【炭酸刺繡に寄せて】


小さな黒い蟻たちが

一粒ずつ運んでいるのはグラニュー糖

透き通った石のような砂糖

すぐ溶けてしまう甘い甘い砂糖

いいえ

もしかしたらあれは花の種、すみれの種

蟻が菫の種を運ぶから

庭中が菫だらけになってしまったとあの人が云った

あの粒が種だとしたら

砂糖ではなく菫の種だとしたら

透き通るような白い菫が咲くのだろう

蟻はその下に

菫たちの下の地中にまるで刺繍をするように

お家を作って住むのだろう

中に砂糖を積み上げて

私も運ぶ

グラニュー糖と菫の種を私の家へ

菫の花の砂糖漬けを作るために

私の庭じゅうに菫が咲くように

菫の種をぬすんできてぱらぱらと

私はもしかして蟻なのだろうか

砂糖を運び

そして菫の種を運ぶ

そのうち落ちている蝶々の羽も運ぶかもしれない


藤家秋さんの素敵詩集「炭酸刺繍」に参加希望です✨


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?