夏なのにスズランのブーケをもらった
家に帰ったら玄関にそっと置いてあった
誰がくれたのだろう
夏のどこにスズランが咲いているのだろう
でもなんて嬉しいんだろう
スズランのブーケなんて
一年のいつもらっても嬉しい

ロシアのお話を思い出す
大みそかに花や苺を欲しがるわがままなお姫様
それを雪の森に探しに行かされる心優しい継娘
継娘を助ける12月の精霊たち

…いやいやいや
心をロシアの冬の森から
目の前のスズランに引き戻す
でも手に取ろうとしたら
ブーケは消えてしまった

酷暑のまぼろしだったのだろう
熱中症なのかもしれない
淋しいのかもしれない
早く家の中に入って冷房をつけよう
そして水を一杯飲んだあとで
冷凍庫にしまってある
スズラン色のアイスクリームを食べよう
涼しい部屋の中で、裸足で。