見出し画像

チューリップの中で眠る

どうしていいか分からなくて夜の公園を歩く。
自分でも何を悩んでいるのか分からない、または本当はわかっているのだが分からないふりをしている。そんなふうではいつまでたってもどうしていいかなんてわからない。
本当は。どうしたいとかではなくて悩みたいだけかもしれない。悩むふりをしながら歩く夜の公園は楽しい。それか何かをやめたいのかもしれない。やめたいことばかりやって過ごしてきたような気がする。
と自分の心を考えているとたくさんのチューリップが眠っている。チューリップは夜はしっかり眠るのだ。赤や黄色のチューリップたちはまだ背が低く、地面に近いところで眠っている。
でもまぶしい外灯のせいでほんの少し目を開けているのかもしれない。寝ぼけながらわたしにいう。
なあに?なにかなやんでるの?それなら。
好きなチューリップの中に入って朝まで眠っていっていいわよ、と。
え、いいの?そうしたい!親指姫だ。
どのチューリップに入ろうか?
赤、黄色、白、ピンク…私はわくわくしながらチューリップの花壇を見回す。ああ、もっとワンピースとか、かわいい服を着てくるんだった…
でも。
50代で親指姫はないだろう…
しゅんと心がしぼむ。もっと早いうちにいろいろやめなければいけなかったのだ。もうチューリップに入れない。
はあ…
チューリップたちのため息がきこえる。
なんでも遅いって思っちゃダメよ。
次の瞬間、私はもうチューリップの中で眠っている。
チューリップの中で、いくつもの前世の夢なんかみながら、まるくなって眠っている。
わたしね、チューリップの中で寝たの。親指姫みたいでしょう?
だれかに言いたいなと考えながら眠る。そんなこと、誰に言えばいいの…ああどうでもいい。もうずっとここで眠っているから、どうでもいい。



*stand.fmで自分で朗読してみました


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?