とても寒い夜なのに

公園にソフトクリームの店が出ていて

人が並んでいた。

なぜだろう、こんなに冷えているのに、と思って

私は手袋をした指にはあっと息を吹きかける

今年初めて白い息が見える

ほら、こんなに寒い

でも並ぼう。ソフトクリームを食べよう。

すぐに私の番がくる

選ぶ余地はない。バニラ一択だ。

でもバニラとは書いてない

「天の川ソフトクリーム」と書いてある

「ミルキーウエイを絞って作りました」と説明が書いてある

確かに天の川は白っぽいけれど無理すぎる

まあ、ネーミングだからね

私は心の中でツッコミを入れながら

スマホでバーコード決済をしてソフトクリームを受け取った。

「食べたらあなたも天の川」

へんてこなキャッチコピーの短冊が北風に揺れている

だめだ、天の川を絞って作った天の川ソフトクリームを食べてしまった

私はもう天の川だ

透きとおった甘味と不思議なミルク風味の冷たさがきらきらと

舌から喉へ、おなかへ、全身へ滲みわたり、

私は天の川になってしまった

先に食べた人達が空を流れている

私も一緒に流される

みんな楽しそうだ

私も楽しい

寒い寒い冬の空が

自分も天の川になってしまえばこんなに楽しい

私は流れながら家まで帰り

するりとベッドに流れ込んで眠りにつき

一晩中星空の夢をみた。