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妄想レビュー #15

⬛︎ミムコの妄想レビュー
世界的に有名な芸術家が亡くなった、その1週間後。
日本のとある田舎町で彼の作品が発見された。
そこには「この下に私の最高傑作が埋まっている。」という立札が。掘り出してはならないと注意書きが添えてあるが、そこには一体どんな作品が? いや、作品は本当に埋まっているのか。作品をめぐり起きた事件とは。

このレビューは、美大時代に彫刻家の先生から問われたことが元になっています。この方は生徒たちに「アート作品とは何なのか」ということを教えるために来ていた特別講師で、授業の一番最初に必ずこの質問をしていると言っていました。

「この下に作品があります」という立札が立っている。これはどんな作品が埋まっているのか、見る人に想像させる現代アートである。では、作品は本当に埋まっているのか。みんなに考えてほしい。

皆さんはどう考えますか?
答えはないんです。
アート表現は様々で、このような立札だけでもアートとして成立するのです。想像を掻き立てるアート、ということです。では、誰にも見られることがない作品を本当に埋める必要があるのか。それは君たち次第だが、僕はそこに作品があってほしいと思う。先生はそう仰っていました。

私もあってほしいと思うし、何も埋まってないとしたら悲しい。


この先生の授業には、実際にアート作品を制作する授業もありました。「空気」をテーマに何かを展示しよう、という課題です。作らなくてもいい。物をどこかに展示して、作品として成立させるという課題です。

私はビールのミニ缶をピカピカに研磨して、ギャラリーの展示台に置いた記憶があります。磨くという手間をかけることで、「日常の物がアートに変わる→纏う空気が変わる」みたいなコンセプトだった気がします。「何も言わなくていい! 美しいからよし!」と言われました。笑

あまり他の人の作品は覚えていないのですが、ひとり、衝撃的な作品を提出した人がいました。


授業直前に黒いゴミ袋に空気を入れて結び、プレゼンの時に平気な顔で「自分の部屋の空気を展示しました」と言ったんです。同級生たちは彼の行動を知っていますから、小難しい彼の長話をまともに聞く人はしませんでした。事実を知らない先生にも酷評されていたような......

先生のあの問いかけに対して、「俺は埋めません」と言ったも同然。でも......そんな作品であっても、著名なアーティストが美術館に展示したら成立しうる。良し悪しは別として。

すべてのジャンルにおいて作品というのは、中身も見せ方もとても難しいなぁ、と今でも思ったりします。


こちらは私がゆるりとやっている、
企画「妄想レビュー」です。
今はまだ存在しない記事の架空のレビュー。
このレビューが気に入った方は、
ぜひ書いたり、描いたり、奏でたり
してみてもらえると嬉しいです。

企画内容はこちらからどうぞ。



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