見出し画像

舞台「ちょっと今から仕事やめてくる」を観てきました

舞台「ちょっと今から仕事やめてくる」を観てきました。

江中みのりと申します。
noteをご覧いただきありがとうございます。
舞台を観てきたので、感想など残してみます。


さて、「ちょっと今から仕事やめてくる」=「ちょいやめ」舞台。
キャスト発表時に「永夢くんとシンケングリーンが仕事やめてくるに……!」と叫び、特撮クラスタの一人として楽しみにしていた舞台です。

原作は言わずと知れた、メディアワークス文庫賞の偉大なる先輩、北川恵海先生。
原作が大好きなので、どんな舞台になるんだろう? と一ファンとしてドキドキワクワクしながら行きました。

まだあと公演期間が一週間あるし、ネタバレしない感想をまず言いますと、面白かった! です。
ストーリーを知っていても、この先、青山がどういう選択をするんだろう? どうやってここから抜け出すんだろう? とドキドキしながら観ていました。
観に行ってよかったー! と思う舞台でした。

この先、展開のネタバレなど多少ありますので、未見で情報を入れたくない方はご注意ください。


まず青山役の飯島くん、いい意味で「死んだような目」がめちゃくちゃ上手いんですよね(本当に純粋に褒め言葉として)。
エグゼイドのときから思ってたんですけど、光のない目をするのがとても上手い。
生気がないとかじゃないし、表情がないわけでもない、でも感情の死んだ目をする。
その「何を考えているか読めない不気味さ」と「目が離せない危うさ」のようなものが、あの目の中に詰まっていると思うんです。

私は友人に「あなたは目力が強い人が好きだよね」と言われたことがあります。
確かに自著でも、やたら登場人物の目の描写が多い。多分フェチっ気が多少あるんだと思います。力の強い目フェチ。強い光の宿る目が大好き。
そんな私にとって、飯島くんの「死んだ目」は、本来ならある意味好みの対極にあるのかもしれません。
しかし、飯島くんの目にはすごく惹かれる。
永夢くん贔屓補正も多少は入っていますが、それを抜いても。
「その暗い瞳の奥に何があるのか知りたい」という好奇心なのかもしれないし、「その瞳にいつか訪れるかもしれない輝く瞬間が見たい」という期待の感情なのかもしれない。
分からないけど、ただならぬ目をしている。
底の見えぬ深淵だからこそ、人は覗きたくなるんですよね。どんなに綺麗でも浅い泉をわざわざ覗き込もうとは思わない。

そんなわけで、私は自分でも今まで気づかなかったのですが、飯島くんのあの「死んだような目」が結構好きなようでして、その目をフル活用できる舞台、配役だな……! と感動しました。
死にそうになってるときの、「この人ほんとに飛び込み自殺しちゃうんじゃないかな」と思わせる説得力のある目。
飯島くんが演じたからこその、凄みがあったと思います。
本当にいい配役! と始まる前も思いましたけど、舞台を観て確信を深めました。
あの目を活かしきる、ナイスキャスティングであった、と。


ヤマモト役の鈴木勝吾さんも、とても良かったです……!
鈴木さんの出る舞台はあまりたくさんは観たことなくて、「コーサ・ノストラの掟」「瞑るおおかみ黒き鴨」「ミュージカル 憂国のモリアーティ」。あとはTVのシンケンジャーを見たくらい。
モリアーティは別として、どちらかというと「不良っぽさがあるけど根はいい子でちょっとやんちゃ」とか「うまく感情を出せない不器用」とか、そういうイメージの役が似合う方なのかなと思っていたのですが、先日のモリアーティで歌の上手さと声量と演技力に圧倒され、「この人はすごいぞ……!」とようやく気づきました。
私のような素人の目にも、昔より格段に上手くなっていらっしゃると分かる。

ヤマモトは、自由人っぽくていたずらっ子のようなところもあり親しみやすいけど、ミステリアスな人。
彼の持つ「謎」を感じさせる部分は、これまで私が持っていた「不器用やんちゃ」イメージとちょっとかけ離れるところ。
しかし、鈴木さんが演じるヤマモトの、魅力的なことといったら!
青山にグイグイ来る感じといい、笑顔といい、人たらしな雰囲気全開で、思わず好きになってしまう。
トークも上手いし、優しいし、ヤマモトって本当にいい人で、でもだからこそ、「何かあるのでは?」と裏を疑わずにいられない。
それでも、離れがたいと思ってしまう。
そんなヤマモトを爽やかミステリアスに好演なさっていて、あー、好きだなー! と思いました。
思えば、先日のモリアーティ(原作が好きなのでミュージカルをドキドキ不安なまま観に行ったらとても良くてより好きになってしまった)だって、演者のみなさま素敵だったのですが、何より誰より、鈴木さんのウィリアムが最高だったから、大満足して帰ってきたわけです。
にわかに鈴木勝吾ファンになりそうです。いや、単に「何も関心を向けない状態よりちょっと気にかけることが多くなる」程度をファンになったと呼ぶのがおこがましくも許されるなら、すっかりファンです。
すごい役者さんだなあ、素敵! と今さらめちゃくちゃ気になっています。
鈴木さんの出る舞台また観に行こう、と固く心に誓いました。
短期間にこんなに性格の違う役を演じていらっしゃる姿を観られたのは、とても嬉しかった。
声が、声量もだしトーンもだし、ものすごくいい。
「耳が幸せ」なんてレベル通り越して、心までダイレクトに響いてくる声をしていらっしゃる。
今回、シブゲキでマイクなし舞台だったので、あの声を直で聞けたの嬉しかったです。
私が鈴木さんを初めて知ったのは、このシブゲキで公演された「コーサ・ノストラの掟」でした。
あのときの役も好きだったなあ、などと思い出しました。
またこの劇場で演じている姿を拝見できた巡り合わせが嬉しかったです。
嬉しいばかり言ってますが、本当に観ていて幸せな気持ちになれました。


舞台セット。
駅のホームに模した空間で、会社のシーンとかどうするのかな? と思ったら、デスクやベッドが引っ張り出されるや、そこがオフィスや自宅になる。
空間の切り替えが上手い! と面白く思いました。
特に仕事やめてくるシーンの、後ろにヤマモトが見えているけど手前では会社の場面だったところなど、ヤマモトが見えていることに違和感がないのが観ていて不思議でした。
何て上手く演出したものだろう……! と。
舞台ならではのやり方で、とても印象的でした。

五人しか出ていないのが信じられないくらい、出てくる人たちに奥行きのある舞台で、アンサンブルの一人もいなかったのに驚きました。
こんな少人数であの話ができるんだなあ、と思って。
飯島くんは長台詞や説明台詞も多く、ほぼ出ずっぱりだし、とても大変だったろうと思うのですが、声の調子が聞き取りやすかったです。
私が知ってる飯島くんはエグゼイドと、一度だけ見たドラマプリレジェくらいなんですけど、こんな声が出せる人なんだ、こんな演技をする人なんだ、と思いました。
さっきは目のことばかり言いましたが、演技もものすごく良かったです。
淀みなく場面を進めていく、堂々とした主演ぶりでした。


原作とやや違う終わり方と聞いていたので、どうなるのだろう? と思っていましたが、幸せで優しい終わり方でした。
運命的に出会った二人に相応しい、運命的な再会の仕方で、「ちょっと今から~」と二人が言い合うシーンに、ああ、素敵な終わり方だなー! と思いました。
最後の再会のときに、青山くんが着ている服、白なのは何でなんだろう、「まっさらになって再出発する」とかかなと思ったんですけど、終演後ふと、「ヤマモトが贈ってくれたネクタイの色だ!」と思いました。
ライトの関係か、ちょっと黄色がかった白に見えたので、あのネクタイの色に似ていたかもなと。
自分に新しい人生を歩むきっかけをくれた、自分を大切に思ってくれる人が贈ってくれたものと同じ色の服で、再出発に向かう。
勝手な解釈ですが、そう思うと、あの服装とてもよかった! と思います。
何よりかわいいですよね。もこもこしてて。


観に行ってよかったなー! と思う舞台でした。
原作を大切にしつつ、原作の世界を膨らませて、テーマを届けてくれる舞台でした。
働くすべての人に「仕事とは何か? 生きるとは何か?」を問いかける原作の世界が、目の前で、生きている人間の姿をもって再現されていました。

原作未読状態の友人と行ったのですが、舞台から原作に入った人が、どんな風に読むのか楽しみです。




ものすごく余談ですが、シブゲキのすぐ一階下のフロアで、今日まさに観劇中の時間帯、推しのバースデーイベントやってました(お誕生日おめでとうございます!)
このnoteの以前の記事をご覧いただいた方ならお察しかもしれません、メロンの君を演じたあのお方です。
イベントが今日なのも会場名も知ってましたが、会場の場所がシブゲキと同じ建物なの知らなかったので、めちゃくちゃ驚きました。

「推しのイベントなのに行かないのか?」と問われると、「接触系のイベントに行って推しの目に一瞬でも人間として認識されるのがおそれおおい。私は限りなく空気として、舞台の上で演技をしている推しをこそ見たい」とずっと言い続けてきたのですが、舞台斬月の余韻醒めやらず、なにわほわほわには参加します。
参加される方は会場ですれ違いましょうね。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?