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投資ブログを19年運営するブロガーの、悩み続けた投資スタイルについて詳しく聞きました

少しずつ長期でじっくり投資に取り組む「コツコツ投資」のスタイルをとる人たちがふえてきています。投資を続けてきたみなさんに、投資をはじめたきっかけや今に至るまでの変遷、心境の変化などをリポートします。

今回はブログ「かえるの気長な生活日記。」を運営するかえるさん(47歳)のストーリー。最初にお会いしたのは2008年のリーマン・ショックの真っ只中。「今日も日経平均が〇円下がりました」というニュースが日々流れていた頃です。

かえるさんは2005年にブログを立ち上げてから、資産運用を長く続けていくための情報を個人投資家目線で発信しています。現在は福利厚生サービスを提供している会社に勤めていて、個人FPとしても相談業務やコラム執筆などをこなしています。ご自身はどんな投資をしてきたのでしょうか。東京・茅場町のカフェでお話をうかがいました。

きっかけは国民年金の受取額に愕然としたこと

――かえるさんが投資を始めようと思った「きっかけ」はなんですか?

かえる:高校卒業後、土木系の会社に就職しました。若かったこともあり、お金のことは気にせずに、遊びまくっていました。当時はお金を貯めようという意識はなかったですね。

その後、1999年(23歳の時)に設計事務所で個人事業主として働くことになり、国民年金だけの加入になりました。相変わらず、友人との付き合いなどでお金が貯まらない日々を過ごしました。

ところが、2004年(28歳の時)にニュースを見ていたら、自分が将来受け取る公的年金の額が(このままずっと国民年金だけに加入していたら)満額でも月額7万円に満たないことを知り、愕然としました。今、払っている家賃より少ないじゃないか、とても暮らしていけないぞ、と。でも、お金を貯める自信はない。なら、思い切って儲けてみるか、と思い立ちました(笑)

個別株投資と投資信託の積み立てを始める

――突然、将来が不安になったわけですね。最初にどんな行動をしましたか。

かえる:たまたま弟が買っていたマネー雑誌をみたら、投資のことが載っていて…。それで、最初に個別株を買いました。ちょうど松井証券が10万円まで売買委託手数料を無料にすると打ち出していたので、口座を開設しました。初めて買った株はスターバックスです。

――あまり悩まずに証券会社に口座を開設して、株を買ってみたわけですか。雑誌を読む以外に何かしましたか。

かえる:投資を始めてから、その頃ふえてきた投資関係のブログを読んだりはしました。当時は投資信託よりも個別株のブログのほうが多かったように思います。参考になったのは、企業価値について書いてあった、山口揚平さん、板倉雄一郎さんの本などでしょうか。

――投資信託の積み立てはいつ頃から始めたのですか。

かえる:2007年頃から、投資信託のブログや書籍を読んで、インデックスファンドの積み立てを始めました。海外は会計などもよくわからないので、海外の企業に投資するには投資信託を活用したほうがよいと思ったからです。

それで、三井住友信託銀行で、先進国株のインデックスファンド(外国株式インデックス・オープン)を積み立て始めました。証券会社ではなく、銀行にしたのは、振込手数料などの優遇を受けられたからです。

同時期に、販売会社を通さずに運用会社が直接投資信託を販売する、"直販"のセゾン投信が投信の運用をスタートしたことを知り、直販投信でも積み立てをするようになりました。

個別株投資は難しい。けれど、楽しい。投資先の企業に興味が持てますし、投資信託の積み立てとは別に、個別株投資は続けています。

――リーマンショックも経験しているわけですが、怖くなって保有する株式や投資信託を売ることはなかったですか。

かえる:リーマンショックの時には個別株や積み立てていた投資信託は、ほぼ半分になりました。SNSでは日々「わー減ってる!」と大騒ぎで、心が折れそうになりました。

ただ、保有する投資信託やバリュー株はいつかは戻るだろう、と思って、撤退はしなかったです。新規資金で追加投資もできませんでしたが、売ることもしませんでした。

そして、淡々と投資信託の積み立てを継続しているうちに、だんだん価格も戻り始め、分散して積み立てるという王道は大事だな、と思いましたね。

最近は陶芸にハマっている

――その頃、転職もされていますよね。

かえる:リーマン・ショックの後、民主党政権になり、土木業界は仕事がなくなったんですよ…。それで、2009年に、ブログをきっかけに声をかけてくれたメディア運営を行う会社に転職し、投資信託や投資、証券会社・運用会社の取材記事を書く仕事をするようになりました。

そして、もっとお金について勉強したいという気持ちが強くなったこと、そして、あるFP(ファイナンシャルプランナー)さんとの出会いもあり、2011年にFP会社に転職しました。

――リーマンショック後は激動の3年でしたね。

かえる:そうですね。その後、交流するようになった、ブログ「いい投資探検日誌」を運営するm@さんなどの影響もあって、鎌倉投信などを知り、社会的な投資にも関心を持つようになりました。セキュリテで寄付などもしています。

この頃から、ブログだけの繋がりに加えて、直販投信のセミナーや投資家さんの交流会などを通して、リアルにおつき合いする人がふえてきました。人と会うことで、自分と同じように投資している人たちがいるんだ、と実感できたことは大きかったですね。

――現在、どのような投資をしていますか

かえる:つみたてNISAは三井住友信託銀行を利用していましたが、2024年からはNISA口座を楽天証券に変更しました。

NISA口座のつみたて投資枠では「ひふみプラス」と「農林中金<パートナーズ>長期厳選投資 おおぶね」を積み立てています。成長投資枠では個別株を購入しています。基本は長期保有です。個別株は特定口座で保有するものを売り、成長投資枠に移し替えていってます。

投資資産のほとんどは株式です。日本株の割合が高めですね。

投資信託を選ぶ基準は?

――投資信託を選ぶときの基準はどこにおいていますか。

かえる:お金をふやしてくれ、自分にもいい影響をあたえてくれる投資を心がけています。投資は預貯金に勝てればいいと思っていて、単純にリターンだけを追い求めているわけではないですね。

やや飽きっぽいところもあるので、「持ち続ける理由」を探すようにしています。例えば、「ひふみ投信」なら、自分ができないような運用をしてくれる、「セゾン資産形成の達人ファンド」は世界中のいい投信を自分の代わりに選んでくれる、といったことです。そうしたことに対するコストはある程度許容できます。

自分は弱いので、並走してくれる人がほしい。そういう意味では(直販投信などは)運用報告会を実施したり、定期的にセミナーを開催してくれたりして、投資を続ける、という点では助かりました。今は、自分はネット証券に商品を集約しましたが、妻と子どもは直販投信で積み立てを続けています。

かえるさんが保有する投資信託
◆NISA口座
:楽天証券→メイン
<つみたて投資枠>
・ひふみプラス(レオス・キャピタルワークス)
・農林中金<パートナーズ>長期厳選投資 おおぶね(農林中金全共連アセットマネジメント)
<成長投資枠>
・個別株(特定口座とあわせて15社)

◆旧NISA(つみたてNISA):三井住友信託銀行
・世界経済インデックスファンド(株式シフト型)
・米国株式インデックス・ファンド

◆特定口座:SBI証券
・SBI・全世界株式インデックス・ファンド(雪だるま(全世界株式))
・EXE-i 全世界中小型株式ファンド

投資スタイルはずっと迷いがありました。自分なりに、迷ってだした答えは「天才やプロに任せるのが賢い方法ではないか」ということ。個別株への投資は経営者(経営のプロ)に任せる、投資信託への投資は運用会社(運用のプロ)に任せる、ということかな、と。信頼できるところにお金を置いておくことが、続けるコツだと思います。

かえるさんご自身が作成した、投資スタイルまとめ

――iDeCo(個人型確定拠出年金)も早い段階から加入していますよね。

かえる:iDeCoは2009年に加入しました。個人事業主だったので、節税も兼ねて。金融機関(運営管理機関)は鹿児島銀行にしました。当時は口座管理手数料が安い金融機関があまりなくて、その中で、鹿児島銀行は手数料の安さでいうと3番手か4番手くらいでしたが、親の出身地が鹿児島で、鹿児島が好きだったこともあり、決めました(笑)。

ただ、2017年からiDeCoの対象者が拡大され(注:それまで自営業などの国民年金第一号被保険者と企業年金のない会社員だけが対象だったが、企業年金のある会社員や公務員なども加入できるようになった)、口座管理手数料の引き下げや低コストのインデックスファンドを加える動きが相次ぎました。そこで、鹿児島銀行からSBI証券に変更し、資産を移換しました。

でも、2021年には会社がSBI証券の企業型確定拠出年金(以下、企業型DC)を導入。当時はiDeCoは(加入者ではなく)運用指図者になるか、企業型DCに資産を移換するか、の2つしか選択肢がなかったので、やむなく企業型に移換することに。

2022年に転職した会社には企業型DCがありましたが、選択制だったことと、商品ラインアップが今ひとつだったこともあり、自分でiDeCoに加入することにしました。

一度現金化されて何百万円と他の金融機関に移すと、何%で運用できているのかがわからなくなります。通算加入期間は表示されますが、トータルでいくら掛金を払った(積立元本)などは表示されないですし。DCには振り回されっぱなしですが(苦笑)、掛金+運用益はだいぶ積み上がってきました。

奥さんは楽天証券でiDeCoに加入しています。毎月2万円ほどセゾン資産形成の達人ファンドをコツコツ積み立てています。

iDeCoで保有する商品:SBI証券
◆毎月積み立て(3分の1ずつ)
・ひふみ年金(レオス・キャピタルワークス)
・農林中金<パートナーズ>長期厳選投資 おおぶね(農林中金全共連アセットマネジメント)
・セゾン資産形成の達人ファンド(セゾン投信)

◆保有中
・SBI・全世界株式インデックス・ファンド(雪だるま(全世界株式))(SBIアセットマネジメント)

必要な時には躊躇なく引き出す

――現預金はあまり持っていないのですか?

かえる:ほとんど持っていないですね。奥さんが持っているので、大丈夫かな、と。あとは必要なときには売ればいいと思っています。

これまでも、必要な時には、損していようと、税金がかかろうと、気にせず売却してきました。例えば、家や車を買う時、子どもの学費、結婚のお祝いなど、その時々で必要があれば、投信を一部解約して使っていますね。

特に使う予定がなければ、投資信託は長期保有。個別株は決算などを見て、内容が悪かったりしたら、売ることはあります。

――投資にどのくらい時間をかけていますか?

かえる:
今は投資にかけている時間はほぼありません。引き落とし口座の金額チェックの方が多いかもしれません。

本気でお金ふやすには集中投資をするか、起業するか、でしょうが、それには向き不向きもありますよね。自分は今のスタイルでよいかな、と思っています。

家族との対話、お金の使い方

――家族やお友だちとお金の話をすることはありますか。

かえる:仕事柄投資の話をすることは多いです。家族とは投資というより、ビジネスの仕組みなど、もう少し本質的な話が多いかもしれません。

例えば、子どもと一緒にテレビを観ている時に、繁盛するお店の特集をやっていたりすると、「なぜ利益をあげられるのかな?」「なぜ安く売れるのかな?」など、社会のしくみや会社のビジネスモデルを一緒に考えたりしています。

お子さんの教育資金

――お子さんの教育費はどのように貯めていますか。

かえる:ふたりとも、直販の運用会社に口座を開設して、投資信託の積み立てをしています。長男は独自の価値観で頑張ってほしいと思い、「ひふみ投信」を、長女は世界に目を向けて広い視点を持ってほしいと思って「セゾン資産形成の達人ファンド」にしました。

お子さんが保有している投資信託
◆長男
・ひふみ投信(レオス・キャピタルワークス)
◆長女
・セゾン資産形成の達人ファンド(セゾン投信)

子どもと一緒にひふみ投信のイベントに参加したこともあります。子どもには「この人が君たちのお金を運用してくれているんだよ」と運用担当者さんを紹介しました。頑張って運用してもらわないと(笑)。

イベントに参加した記念に、
レオス・キャピタルワークスの藤野英人さんと一緒に写真を撮ってもらった

――投資以外のお金の使い方で何かこだわりはありますか。

かえる:少額ではありますが、毎年何かしらの寄付(ふるさと納税はでない)はしています。数年前から、少しでも役にたてればと思い、献血もしています。

投資の機会はだれでも平等

――投資を始めたことで、投資のリターン以外に、何かリターンは得られましたか。

かえる:大きなリターンということでいえば、投資がキッカケでお金に関わる仕事に就いたことでしょうか。

また、投資のリターンというよりは、投資に付随して社会保障などを含めてトータルでお金の勉強をしたことが、大きなリターンです。お金に対する知識を得たおかげで、国民年金の受給額を知った時ほどの不安はなくなり、明るく過ごせるようになりました。お金を理由に行動できない、ということも減った気がします。

投資ってある意味平等じゃないですか。何かハンデがあっても、何歳でも、リターンの率だけでいけば、同じ投資をしたら同じように返ってくる。まっとうな投資信託を選んで長期で積み立てていけば、それなりにふえますし、投資を続けてきてよかったな、と思いますね。

――ゴールはどこにおいていますか。

かえる:65歳以上で働いている人のアンケートをみたら、男性は「お金のため」、女性は「生きがい」という理由を挙げる人が多かったように思います。ある程度まとまったお金があれば、働き方も選べます。今は、お金のためだけに働きたくない、と考えるようになりました。

当初は「65歳で〇〇万円」というふうに目標を捉えてきましたが、物価も上がってきたし、目標も固定するのではなく、何年かに一度はアップデートしていかないといけないな、と思いますね。

編集後記

将来不安を感じて、投資を始めたかえるさんですが、今は将来不安も和らぎ、お金を理由に行動できない、ということも減ったと言います。

自分なりの軸を持つ
投資は未来に向けて企業などにお金を投じる行為です。ただ未来は不確実ですし、投資は絶対も、正解もない世界。だからこそ「自分の納得できる方法」で、続けられることが大切です。

コツコツ投資家さんのインタビューをまとめたマガジンをみても、シンプルにインデックスファンドを積み立てていくというスタイルの方もいれば、かえるさんのように、アクティブファンドや個別株への投資を組み合わせる方もいます。

かえるさんはご自身の投資スタイルにずっと迷いがあったといいます。本を読んだり、人に会ったり、セミナーに参加したり、といった試行錯誤を繰り返すうちに、自分なりのスタイルにたどり着きました。これから投資をはじめる方も、焦らず、じっくり自分なりの軸・投資スタイルを見つけて、長期で投資を続けていけるとよいですね。

資産形成+キャリア形成は一体
もうひとつ印象的だったのは、かえるさんが、自分のキャリアについても真剣に考え抜かれていたことです。現役時代はお給料の一部を貯蓄や投資に回していくわけですから、投資をするには、その元となる収入の確保・アップはとても大切です。

転職し、個人事業主から会社員になったことで、厚生年金に加入。将来受け取る公的年金の額も(国民年金だけに加入していた場合と比べて)ふえて、障害年金や遺族年金といった保障も手厚くなりました。

「将来が不安」と口にするだけでは何も変わりません。仕事でも、投資でも、自分で調べて、考えて、一歩ずつでも行動にうつしていくことが、未来を拓くことにつながるのではないでしょうか。

最後までお読みいただき、ありがとうございました! 今後もコツコツ投資家さんへのインタビューを続けていく予定です(毎月第2、第4金曜日更新予定)。ご意見・感想などがありましたら、お寄せください。取り入れていきたいと思います。

いただいたサポートは取材に協力してくださる投資家さんへのお土産と、遠くに住む方に会いにいくときの移動代に充てたいと思います。あちこち飛んでいきたい!