見出し画像

ルドン、ロートレック展

年末、三菱一号館美術館に、「1894Visions ルドン、ロートレック展」を観に行きました。
https://mimt.jp/visions/highlight.html

これ、1月17日(日)までの企画展なんです。
推したいと思いつつ寝かせてしまった。

熊谷守一もボナールもムンクもゴッホもルオーもそうなんだけど、画家のなかには、晩年に向かうにつれて画風がどんどん明るく(陽気に、という意味ではなく、絵そのものの彩度や明度が劇的にあがってゆく)人たちがいて、どうも私はそういうタイプの画家の作品がとても胸にくることが多い気がする。

ルドンもそうだ。
繊細で詩情に満ちた雰囲気はずうっと持っているのだけど、使う色の振れ幅がものすごい。ピンと来ない人は「ルドン」で画像検索してみてほしい。

若いころは真っ黒。
鉛筆や墨だけのモノトーンの細密な絵を描いた。
沼に咲く人面の花や気球のように空を飛ぶ一つ目の生き物といった、不気味で儚い、ユーモアとペーソス、ちょっとした気の良さとさびしさの漂う真っ黒な絵。
気持ち悪がられ、迫害される無力なバケモノのイメージ。

それが、豪奢な花束や薔薇色の頬の乙女、静かに輝く神さまといった色彩豊かな絵を描くようになってゆく。
深い青と鮮やかな朱色やピンクといった鮮烈な色遣い、本当にすごい。
そんでカラフルな絵でも一つ目の巨人なんかを描いている。

今回目玉の作品「グラン・ブーケ」は、城の食堂を飾る壁画として描かれた大作で、縦2.6メートル横1.6メートルだったかな、思ってたよりずっと巨大で、ぶわあああっと咲き誇る花々と青い花瓶の真っ青さに吸引されて、強引に感動させられてしまった。
もう全然写真に出ない凄み。

彼の絵は、花瓶の花を描いていても、何らかの精神を描いているように見える。
いったいどういうことなんだろうなあ。

私は彼のモノトーンの絵も、カラフルな絵も、ああ、ルドンという人がいたんだなあ、と胸を打たれる。ルドンはいいやつだと思う。手を繋いで、あなたの絵はとても素敵だ、あなたが心惹かれるものたちのことを私もとてもよいものだと思う、と伝えたくなる。

一方ロートレックは女優や踊り子も顔を歪ませむちゃくちゃ巧みに描きあげており、絶対こんな似顔絵描かれたら嫌だなー、仲良くなれそうにないなー、人嫌いの寂しがりみたいな人間だったんじゃないのかしらん、とこれは子供の頃からずっと思っている。
カエルのペン画なんかもどちゃくそ上手かった。
まったく仲良くなりたくない。
性格悪そうな絵だな、と思いながらも、クリーンな版画からもムーランルージュの猥雑な活気と匂いが立ち込めているようで、観てしまう。すごい。

周辺作家、モネやピサロやシスレーやルノワールやセザンヌやモローなんかの絵もいいものがたくさん並べてあって、とても良かった。
「その作家の、わかりやすくいい絵」をちゃんと選んでる。
セリュジエとドニ、素敵だった。好きだ。

あと、「琳派と印象派展」(アーティゾン美術館)と「エジプト展」(江戸東京博物館)が気になる。

ことしは、頭と身体を使って生きていこうと思っている。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?