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去年の雪 その現象が現在のものとは限らない

江國香織著 角川文庫 2020/2/28出版 2023/4/21読了

同じ地点、同じ視点、同じ季節にも、時空を超えてそこには違う景色が広がる。

ふとした瞬間のその儚い思い出は、その前にも後にも残らないと思い込んでいるけれど、その場所にある空気というのは案外長い間残るもの。

植物ならずっとそこにいたかもしれない。

動物なら何度か生まれ変わった後にそこに戻ってきたのかもしれない。

人間はそういう自然の流れに導かれてそこにたまたま居合わせるのかもしれない。

季節が移り変わるように、そこで起こった特別な出来事は過ぎ去ってしまうけれど、また時空を超えて起こることがあるのだ。

今いる時点だけに固執してしまいがちな忙しい世の中で、立ち止まって前後の時空間を覗く余裕をくれる。

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