忘れたいのに

忘れたい思い出、なかったことにしたい思い出は、ある。そして、そんな思い出を抱えている自分が、あまり好きではない。なかったことにしたいなんて、かっこ悪いから。
普段はすっかり忘れたつもりでいるのに、その場所に行ったり、似たような音とか、匂いとか、そういうものに意図せず触れてしまったとき、わたしの五感はいやな思い出へとわたしを突き出す。

身体に染み込んだ跡は、消せない。頭で消そうとしても、五感はしぶとい。しぶといというか、ばかみたいに素直すぎるのだ。
本当は、そういう思い出も、寛容に受け入れられたらいいのだろうけど。
清算するのはきっと難しい。

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