見出し画像

ふきだしがかり(2)

本格的に始動する前のことです。
原作者チームで「原作を一人で完全に仕上げるのではなく、海外の映画やドラマみたいに話し合いながらつくってみたい」という話が出ました。
私が書いていた芝居の脚本の場合は演出さんや役者さんと話し合いながら修正することが日常茶飯事で共同作業そのものに違和感はなかったのですが、漫画では個人作業でカッチリ完成させるのが一般的だと伺って、畑が違えば「普通」の定義も違うんだと感じ入っておりました。

で、「一人の書いたプロット(もしくは原作)を他の原作者と編集者でレビューする」という形に落ち着くこととなります。

全員が合意するまでレビュー→修正→レビューを延々繰り返していくわけです。  私の場合はプロット・本編共にOKでるまで確か8回か9回くらい。二ケタにはならなかったなぁとぼんやり覚えてます。

一歩間違うと「船頭多くして船山に上る」になりかねない手法ですが、メンバー同士で解決策を持ち寄るメリットもありました。それぞれの原作に、他の二人のエッセンスが少し混入していますね。
話し合いの中で共通認識がとれていることもあったのか、その後の漫画家さんの前編のネームは1回の直しで終わっています。

と、ここまではよい話ですが、やはり相互レビューするときはエネルギーを使います。他の人の提案が受け入れられないときには、理由を言語化して返答する必要があるからです。
しかし、プロットの段階で「特定のシーンの絵がなぜか見えちゃって書かないといけない気がする」という箇所に関して提案をもらうと「理屈では説明できませんが私の生理的感覚が許さないのです」ということになり、Skype上で言葉の刃ならぬ鈍器をがしがし振り回して余計にエネルギーを消費するという効率の悪い行為を(私だけが)行っておりました。

今回は、「サクッと阿部定事件がやりたい!」という衝動がおさえきれず延々粘ってましたが、ある日憑きものがとれたかのようにその衝動がなくなりプロットからその描写を外してOKがでて、そこからまた原作本編ですったもんだして二回ほど大きな直しを入れてOKがでました。
結論としては当該場面は削除されましたが、見方によってはもっと大変なことになってる気がしなくもありません。いのうえさんがどういう絵にしてくださるのか今から楽しみです。
結局は原作者が世界観に最終決定権を持つことをチーム内で確認し、尊重し合う文化があったから共同作業であっても納得のいく結果になったのだと、今は思っております。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?