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オールタイムベストを更新!映画「Before Sunset」感想

 Filmarksによる、90年代の名作を映画館でリバイバル上映する企画「 Filmarks 90’s(フィルマークス ナインティーズ)」を楽しみにしている。第5弾は1995年に製作された『Before Sunrise』であった。
 目黒シネマでは『Before Sunrise』の続編『Before Sunset』も続けて上映しており、ついでに鑑賞してみたらこれがとんでもなく良かった。評判の良い作品の続編てたいてい期待を大きく外すものと思っていたのに、前作を超えるなんてことがあるんだね。

 本映画は映画内の設定と同じ前作「Before Sunrise」の9年後に撮影され、2004年に公開されている。監督:リチャード・リンクレイターと主演の二人イーサン・ホークとジュリー・デルピーも同じ。監督に加えて二人の主演俳優も脚本に名を連ねている。自然体の会話が心地良い。


◆あらすじ

前作『Before Sunrise 恋人までの距離』

パリ行きの列車の中、男は隣の席に移動してきた女に声を掛けて話が弾み、食堂車に誘う。二人は意気投合、男はお金がないからホテルへは泊まれないが、ウィーンで翌朝のフライトまで一夜限定で楽しもうと女を誘う。男はアメリカ人のジェシー、女はフランス人大学生のセリーヌ。二人の会話は弾み親密さを深めていくが、だらだらと関係を続けても煩わしいし今夜一晩限りの関係にしようと約束して公園で朝を迎える。しかし別れ際のホームでお互いの気持ちが高じ、半年後12月16日の18時に同じホームで再会することを約束して別れる。

『Before Sunset』

出会いから9年。ジェシーは作家になっていた。あの一夜を題材にした小説のプロモーション活動でヨーロッパを回っているジェシーは、パリの書店で開催されたインタビューで、この小説は実話なのか、実際には再会できたのかと尋ねられる。答えをはぐらかすジェシーがふと横を見ると、そこにセリーヌが立っていた!ジェシーは気もそぞろになりインタビューを早々に打ち切ってセリーヌをお茶に誘い、本のサイン対応も断りセリーヌのところへ向かう。ジェシーは今夜の飛行機でパリを後にしなければならないが、再会した二人は互いの近況を語り合うのだった。

◆二人は再会できていなかった

 一番気になっていたことだ。再会早々9年前の約束の日の行動を探り合う二人。あくまで軽く、冗談のように。「そういえば約束してたけど行かなかったわよね?」「う、うん。もちろん俺も行かなかったよ。」
 セリーヌはブダペストに住む祖母が亡くなり葬儀の日が重なって行けなかったことを詫びる。最初ははぐらかしていたジェシーだったが、実は約束通りウィーンを再訪していたことを打ち明ける。

◆カフェ、セーヌ川遊覧船で会話を重ねる2人

 セリーヌは3年間ニューヨークに留学していたことも明かす。残念がるジェシー。実はジェシーもニューヨークに移り住んでいたのだ。ジェシーは学生時代の彼女と別れたりまた付き合ったりしているうちに子供ができて結婚し男の子の父となったが、妻との関係はうまくいっていない。もしかしたら前作でせっかく会いに行ったのに素っ気なくされた彼女だったのかもしれない。セリーヌも恋愛を重ね現在も彼氏は居るが、幸せそうではなかった。
 二人は9年前の出会い以来お互いを忘れられずにいたことがわかっていく。いよいよ飛行機の出発時間は近づき、ジェシーは送迎車でセリーヌを家まで送ると言う。部屋にあがったジェシーはセリーヌが作った歌を聴かせてほしいとせがみ、セリーヌはジェシーへの想いを綴った曲を弾き語る。

◆深入りすることに臆病な2人

 前作「Before Sunrise」の二人は互いの住む距離の遠さから、重くならない関係に留めようと心にブレーキをかけていた。しかし一晩過ごして離れがたくなり、約束したのだ。半年後、再び同じ場所で会おうと。今作でも、はじめは熱い胸の内を隠しながら会話を始める。
 映画内の時間はほぼ現実の時間と同じ尺で作られている。映画冒頭で二人は出会うので、たった80分の会話の中で、9年間どんな想いで過ごしてきたかを確かめ合うのである。
 ジェシーがあの一夜を題材に小説を書いたのも、セリーヌに届いて欲しいという思いからだった。ジェシーは結婚式の当日までもセリーヌを想っていたことを告白する。セリーヌはジェシーへの思いを歌に込めていた。留学先をニューヨークにしたのも、再会したい気持ちからだろう。

◆文化が違うからこそ惹かれ合う2人

 セリーヌは、思い込みが激しく時々エキセントリックで男性は持て余してしまうかもしれない。ジェシーも前作で言っているが緊張すると同じ話を何度もしてしまう癖があり、つまらない男に思われてしまう。でも、互いの文化が違ったら。細かいことはおおらかに受け入れられるのかもしれない。

◆映画『フォー・ウェディング(Four Weddings and a Funeral)』を思い出した

 同じような状況である。イギリス人のチャールズ(ヒュー・グラント)は、同じ結婚式に参列していたアメリカ人の女性を一目見て夢中になり、一晩過ごした後忘れられなくなる。やがて彼女は結婚してしまうが自分の結婚式に離婚した彼女が現れ、結婚を取りやめてしまうのだ。
 この映画も大好きで、実は何度も観ている。

◆一晩で、こんなにも夢中になってしまう恋って、あるんだね

 いや美男美女にしか起こりえないだろうけど。ラストのイーサン・ホークの表情が良かった。セリーヌが自分と同じ思いで9年という時を過ごしていたことがわかって、もちろん嬉しくて顔がほころんでしまうのに、自分はすでに結婚し子供が居る現実が影を落とし、複雑な表情を見せるのである。
 9年前、お互いのファーストネームしか聞かなかったことをどんなにか後悔したことだろう。神様を呪ったかもしれない。鑑賞後涙が止まらなくなった。

 この人ではないと思いながらも何となく結婚するなんてこと、あるのかな。運命の人は別にいるのに。叶わないからこそそこにドラマが生まれるのかもしれない。

 Beforeシリーズ3作目の「Before Midnight」のあらすじをチラ見してしまったが、この二人結局結ばれるんだね・・・それを願っていたはずなのに、何でだろう、ちょっと興味が薄れてしまうのは。でもラストを飾る作品もそのうち見たいな。


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