見出し画像

【読書記録】月と散文/又吉直樹

又吉直樹さんの文章が好きで、目につくと読むようにしている。
「月と散文」は、そういう名前のオンラインコミュニティがあるらしい。

そこに掲載されたエッセイを集めたのが「月と散文」として発行されたらしい。
表紙は「鉄筋コンクリート」とか「ピンポン」の松本大洋さん。
読んだことないけれど、そんな私でも知っている。おお、と思うぐらいには知っている。
幾つかのエッセイの中に、きたろうさんとの舞台共演での思い出が書かれていた。
シティボーイズのきたろうさん。
この中の一つで、きたろうさんが劇場近くの地元密着型のコンビニのことを「セブンイレブン」とのたまい、「どうやら、きたろうさんはコンビニのことを全て『セブンイレブン』と呼ぶらしい」というエピソードがあった。
はい。
私の近くにもそういう人います。
はい。
私の夫である。
私がまだ夫の下で働いていた頃、会社のビルの一階にローソンがあった。
時々、社長(現夫)は「ごめん、ローソンでタバコ買ってきて〜」と当時一番下っ端であった私に言うことがあった。
いかんせん、そこにあるのはローソンであるので、特段疑問を抱くこともなく時を過ごしていたのだが、ある日皆でご飯を食べに行った時にも社長が「ごめん、ローソンでタバコ買ってきて〜」と言い、私の頭に「?」が浮かんだ。
なぜにローソン限定なのか?
ローソンにしか売っていないタバコなのか?
ローソンを探せと言うのか?
そこで、先輩社員がすかさず、「社長にとっては、コンビニは全部ローソンやから。」と耳打ちした。
え?そんなことってある?
んなバカな、と思いながら「ローソンで…」と言われるたびに近くのコンビニで用を足して、特別不具合なく過ごしていくこととなる。
そうして、紆余曲折あり、私は夫と結婚することになるのだが、
今の家に引っ越してきた時、一番近いコンビニはセブンイレブンだったのだが、夫はいつも「ローソン」「ローソン」と言う。私はもう下っ端社員ではない。妻である。
「(夫)くん、あれはセブンイレブンであって、ローソンではありません。」
「え?おれ、何て言うてた?」
「ローソン」
「え?ローソン?」
「ローソンは水色のコンビニで、うちの近くにあるのはオレンジと赤の7がトレードマークのセブンイレブンです。」
「…ほんまや!!!」
見えてなかったんだろうか。
夫曰く、「俺が若い時(コンビニができ始めた頃)コンビニといえばローソンしかなかったんや…」
まぁ分からんでもない。
田舎育ちの私も、始めに出来たコンビニはローソンだった。
しかし、それぞれのコンビニさんが名前を掲げて商売されてるわけですしね、それにこっちも混乱しますしね、ましてや子どもが盛大に「?」マークを頭に浮かべておりますよ。
「ローソン寄って〜」
「セブンイレブンな」
という会話を幾度となく繰り返し、最近では夫も適応能力を発揮し、「コンビニ」という言葉を覚えた。
又吉さんのエッセイに出てくるきたろうさんは、どのコンビニも「セブンイレブン」と言う、とあるのだが、「セブンイレブン」の方が言いにくいのになぜに「セブンイレブン」なんだろうという疑問がある。
その点では夫の方がまだマシなのでは?
夫は「ローソン」という言いやすい響きに惑わされているのでは、と私は勝手に思っている。
それに比べて、「セブンイレブン」って言いにくいだろうに。「コンビニ」って言った方が早いじゃん。まあきたろうさんと夫を比べたとて、マシとか言ったとて、だから何だ、という話なんだが。どっちも間違えてるしな。間違えたからといって二人とも誰に迷惑かけてる訳ではないけどな。
でも、年齢とともに、新たなカタカナが覚えられなくなる、というのはあるあるな現象のようで、実家の母がずっと「アクエリアス」が言えず、いつも「アクアエリアス」と言っていて、笑っていたのだが、ここ数年、夫もカタカナが言えないことが多くなってきた。(夫と母の年齢差14歳ほど)なんなら女優さんの名前も覚えられないようで、「武井咲」さんをいつまでも「たけいさき」さんと言っているし、「黒木華」さんをいつまでも「くろきはな」さんと言っている。テレビを見ながら会話をすることが多いのだが、訂正してもいつまでも覚えられないようである。まあ覚えなくてもいいじゃん、と思うかもしれないが、いつまでもどちらかというと若作りで割と前線で仕事をしている以上、若い社員さんの前で大声で間違えているのでは、と想像すると、間違いを訂正しておいてあげないと…と思ってしまう。
あと夫について言えば、最初に覚えたブランドを全てにおいて言いがちである。
例えば、研磨剤のことを何でも「ママレモン」と言う。
とにかく研磨剤が欲しいだけなのだが、「ママレモンとって〜」と言う。
ママレモンはおそらく研磨剤ではなく食器洗剤なのだが、研磨剤を使いたい時になぜか夫は「ママレモン」と言う。
夫の中ではしつこい汚れは「ママレモン」で落とす、という強い思いがあるようだ。
刷り込みとは恐ろしい。
ちなみに、刷り込みといえば、夫は傷があると必ず「オロナイン」を所望する。

あれ?刷り込みの話だったかな?
いや、又吉さんの本の話だったはずだ。
読みながら、つい、夫に「あなたの仲間が他にもいたよ〜」と思ってしまったことからこんな感想になってしまった。



よろしければサポートお願いします!サポートいただいたお金は、新刊購入に当てたいと思います。それでまたこちらに感想を書きたいです。よろしくお願いします。