2023.8.8日記(オーランドー)

ヴァージニア・ウルフの『オーランドー』を再読中。青年貴族のオーランドーは、イケメンで女王エリザベス1世からも寵愛され、人生イージーモード。特に努力せずとも金はあるし、放っておけば女は寄ってくる。でも時々虚無感に襲われる。「人ってどうやら死ぬらしいじゃん」なんてことをぼそっと呟いたりしちゃう。特権階級的な厭世観。でもある日ロシアの皇女サーシャと恋に落ちる。

この女(ひと)を見つめていると、澱んでいた血がとろける、血管の中で氷が融け美酒と化し、せせらぎ、鳥はさえずり、凍りついた冬景色に春の泉が湧き溢れる、男が目覚めた

ヴァージニア・ウルフ『オーランドー』、杉山洋子訳

男が目覚める。うおー、この女を抱くために俺はこの世に生まれてきたんだぜ‼︎ってなもんでめちゃくちゃ人生楽しくなる。サーシャとフランス語で宮廷の同僚や先輩の悪口を言ってゲラゲラ笑ったり、宮殿を抜け出して市民たちの日常を見物に行ったりする。

「俺ら最高じゃんね、このまま一生一緒にいてくれや」ってマジでヤンキーなノリで駆け落ち提案して向こうも乗り気。意気揚々と約束の時間、約束の場所に行く。…だけど、待っても待っても彼女は来ない。…裏切られた!

毎夜死を少量ずつ服用せねば、生きるというこの仕事をやってゆけぬようにわれわれはできているのだろうか?こちらの意志に拘りなく最奥の秘所に浸透して、何よりも大切にしているものを変えてしまう、この不思議な力は一体何か?オーランドーは極度の苦悩に疲れ果てて、七日間死にそして蘇ったのか?とすれば、死とは、生とは、何なのだろう?このように自問して、もう三十分ばかり考えてみましたが、いっこうに答えが浮かばないので、さて話を続けるといたしましょう。

同上

「毎夜死を少量ずつ服用せねば、生きるというこの仕事をやってゆけぬようにわれわれはできているのだろうか」なんて、深夜3時の病みツイートばりに、オーランドーのナイーブな内面が溢れ出たかと思いきや、突如として「30分考えたけどわからんから次行こかー」って突き放してくる語り手が出てきてドッキリ。この辺のウルフの物語に対する距離感大好き。

こっからまたオーランドーは詩人を目指したり女性になったりと物語はどんどん面白くなっていきますが、今日のところはお時間いっぱい。またの機会に書くか書かぬかはお楽しみ。