【演劇】『LGBT、治します。』(11/16)

シーン11 タカフミからの相談

どこかの公園。ハルカはベンチで誰かを待っている。待っている間、何かの参考書を開いている。

タカフミ: ごめん、待たせて。
ハルカ: どうしたの? 急に。
タカフミ: ちょっと、ね。
ハルカ: ふーん。

タカフミもベンチに座る。

タカフミ: ちょっと、なんだろう。相談したいことが、あって。
ハルカ: なに?
タカフミ: ……ハルカってさ、今幸せ?
ハルカ: え? ……まあまあ?
タカフミ: そっか。まあ、ハルカってなんでもできそうだもんね。
ハルカ: 全然。できないことばっかりだよ。
タカフミ: でも、頭もいいし、行動力もあるし、ちゃんと親の期待にも応えてるでしょ? たぶん。
ハルカ: うーん。どうだろうね。私は全部、自分のためにやってる……つもり。
タカフミ: そっか。
ハルカ: うん。
タカフミ: 自分さ、全然頭も良くないし、怖がりだし、全然お母さんの期待通りじゃないんだよね。本当、いつもごめんって思ってる。みんなに。
ハルカ: そう、なんだ。
タカフミ: 学校でもちょっかいだされたりとかしてるんだけど、仕方ないのかなあって。
ハルカ: ふーん。
タカフミ: ハルカはそういうことなさそうだもんね。
ハルカ: ちゃんと努力して偉くなれば、誰もいじったりとかしてこなかったよ。
タカフミ: そっか……。そうだよね。
ハルカ: で、何の話?
タカフミ: ああ、ごめん……。
ハルカ: あといっつも謝り過ぎじゃない? なんでタカフミっていつもそんな卑屈なの?
タカフミ: うーん……。ハルカはヘテローシスを飲んで、どうなりたかった?
ハルカ: それは――、楽になりたかったよ。
タカフミ: そうだよね。自分もそうだった。
ハルカ: 楽にならなかったの?
タカフミ: なんだろう、もうなんか、わからない……。

沈黙。

タカフミ: ヘテローシス飲んでまともになれば、誰も嫌なことしてきたりとかしなくなるのかな、とか、お母さんの期待に応えられるのかなって思ってた。でもね、全然そんなことなかった。「なにオカマ隠してんの?」とか言われたりして、結局全然何も変わらなくて。
ハルカ: そう、なんだ。
タカフミ: ノートトイレに入れられたりとかしてさ。
ハルカ: もう高3でしょ? レベルひくっ。
タカフミ: うん……。お母さんもさ、まだ期待してくるんだよね。ヘテローシス飲んだから、今度はちゃんと男っぽい格好して、大学はちゃんとスポーツして、みたいな。
ハルカ: ふーん……。
タカフミ: どうすればいいんだろう……。ごめんね、全然話がまとまんなくて……。勉強で忙しいのに……。
ハルカ: まあ、頑張るしかないんじゃない?
タカフミ: …………そうだよね。
ハルカ: 大丈夫?
タカフミ: うん。多分。じゃあ、(立ち上がる)行くね。ありがとう。ごめんね、わざわざ。
ハルカ: あ、うん。じゃあ。

二人、別々の方向に退場。

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