【演劇】『LGBT、治します。』(9/16)

シーン9 「ふつう」なハルカ家

ハルカ母・ハルカ父・ハルカが帰宅している。巨人の帽子をかぶっていたり、タオルを肩にかけていたり、メガホンをもっていたりと、野球観戦に行っていたことがわかる。

ハルカ 母: あのときの盗塁が良かったわねー。
ハルカ: あれなかったら多分負けてた。よね?
ハルカ 父: ああ。
ハルカ 母: ちょっと久しぶりにはしゃいじゃったわ。
ハルカ: もうさ、超恥ずかったんだけど。
ハルカ 母: ああいうとこでしか騒げないんだから。仕方ないじゃない。
ハルカ 父: ハルカも楽しかったか?
ハルカ: うん! 久しぶりにみんなで出かけて楽しかった。
ハルカ 母: そうね~。ハルカの受験が終わったらまた行きたいわね。
ハルカ: うん、行きたい!

ハルカ、一度手を洗うために退場。
ハルカ父、リモコンでテレビをつける。

ハルカ 母: お父さん。
ハルカ 父: ん?
ハルカ 母: ちゃんと手を洗ってから触ってちょうだい?
ハルカ 父: ん? ……ああ。

ハルカ、ハンカチで手を拭きながら再入場。

ハルカ: あー、また明日学校。
ハルカ 母: そろそろ期末テスト?
ハルカ: うん。

ハルカ父、再入場。テレビを見ている。
テレビでは、同性婚訴訟のニュースが流れている。

ハルカ 父: ああ、そういえば。気づいたか? 今日、右前にいた男二人組。
ハルカ: その二人がどうしたの?
ハルカ 父: そいつらが、やたらベタベタしてたんだよな。手をつないだりして。
ハルカ: へえ。気づかなかった。
ハルカ 父: 公の場でやるのはなんか違うよなあ?
ハルカ: まあ。
ハルカ 父: このニュースも気色悪いし。同性婚(笑)

しばらくみんなテレビ画面を見ている。

ハルカ 父: こないだ会社で研修あったんだよ。LGBT研修っていうの?
ハルカ 母: あら、進んでるのね。
ハルカ 父: いや、進んでるっつーか、乱れてるっつーかなあ。LGBTがなんだか知らんけど、もっと控えめに、失礼じゃないようにやればいいのにな?
ハルカ 母: そうねえ。
ハルカ 父: それでオカマくさい講師が出てきていろいろ言うんだ、これが。オカマって言っちゃいけないとかなんとか。でもオカマはオカマだからなあ?
ハルカ 母: そうねえ……。
ハルカ 父: ホモとかレズとか言うのはやめましょうって、別にこっちは偏見持って言ってるわけじゃないんだからなあ? 
ハルカ: ……気持ち悪いのは、しょうがないよね。
ハルカ 父: そうだよ、ほんと。プライベートなことなんだから。それにな、この同性婚もOKしたらなんでもありになるだろうに。子どもも産めないんだし、男同士で子育てもできないんだからあきらめればいいのにな。
ハルカ: 差別じゃなくて区別……だよね。
ハルカ 父: そうだ! 世の中は、俺たちみたいな普通の人達が作って回してんだ。変なやつらがいきなり特権を認めろとか、うるさいんだよな。ちゃんと義務を果たしてから権利を要求しろって。こいつら。
ハルカ: そういう人ってなんでいるんだろうね。
ハルカ 父: 何か脳に異常とかあるんだろう。治してあげる薬とかないのか?
ハルカ: もしあったら?
ハルカ 父: まあ、いいホモとオカマは、薬を飲んだホモとオカマってことになるだろうな。
ハルカ: そうだよね。飲まないLGBTは……
ハルカ 父: 頭おかしいんじゃねえか?
ハルカ: そう、だよね。
ハルカ 父: そういえば、ハルカも前はオナベみたいだったな。髪短くしたりして。(笑う)
ハルカ: (笑う)そう?
ハルカ 父: ま、俺はハルカがまともになって安心した。もしあのまま行くなら、学費も生活費も出してやらなかったかもな(笑)
ハルカ: えー、ひどっ(笑)
ハルカ 父: 俺別に偏見ないけど、やっぱりホモとかオカマが家族にいるのは無理だろ、普通に考えて(笑)知り合いならいいけどさ。
ハルカ: そうだね。
ハルカ 父: ハルカ、世の中、やるかやられるかだ。ハルカはやられる側を選んじゃだめだ。
ハルカ: うん。
ハルカ 母: ああ、そうだ。昨日買っておいたケーキ! みんなで食べましょ。悪くなっちゃうから。

ハルカ母、出ていく。

ハルカ 母: 二人ともー! どれがいいのかちょっと選んでー。

ハルカとハルカ父、立ち上がる。

ハルカ: 私はショートケーキー!
ハルカ: お父さーん?
ハルカ 父: 何があるー?

ハルカとハルカ父、一緒に出ていく。ハルカ父、ハルカの頭をポンポンと撫でる。

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