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反ワクチンvs京大生のバトルと感想。

京都大学熊野寮で行われた『反ワクチンvs京大生

世界中がサッカーワールドカップに湧く中、京都大学の学生寮「熊野寮」にて、これまた興味深い試合が繰り広げられていた。

―反ワクチンvs京大生―
反ワクチンの方達をガチで招待し、京大生とバトルさせる。
京大生の勝利→反ワクの人はワクチンを接種する
反ワクの勝利→京大生は反ワクを信じる。

反ワクチンとは、新型コロナウイルスワクチンに反対する人のことである。
ツイッターの住人ならば共通認識をお持ちかもしれないが、反ワクチンとはかなり過激派のイメージだ。

そんな彼らが、日本トップクラスの頭脳を持つ京大生とバトルするというのだ。なんとも(無謀な、いや)興味深い戦いではないか!

ぼくがこの試合を知ったのは、このツイートがきっかけだった。



これは、行かねば。
行かなければ後悔する。
約260km離れた自宅で、ぼくは高まる期待を抑えられなかった。

幸いイベントには予約も必要なく、定員も定められていなかったため、当日参加をすることができた。
(当日出発し、自宅から車で5時間近くかけて熊野寮にたどり着いた。)

余裕を持って開始20分前に到着したが、長蛇の列。

正直予想外である。たしかに興味深いイベントではあるが、大学寮の食堂で開かれるようなイベントである。主催者もここまで観客が集まるなんて想定していなかったのではなかろうか。

「これほどまでに暇人が多いなんて…。」
260km離れた場所からわざわざこのためだけに訪れた暇人のぼくは思った。

聞くところによると、開始時間の頃には学校前まで列ができていたとのこと。


道行く人もびっくりだよなぁ。
学祭に有名アーティストでも出演するのならわかるが、この人たち全員、反ワクチンの人を囲むのを楽しみに集まったんだもの。

運営者っぽい人たちの「これ、全員入れなくね?」なんて声も聞こえる。
このイベントのためだけに県外から訪れた人も多数いた。(暇人はぼくだけじゃなかった。)

バタバタとした様子で、20分遅れて開会の挨拶がなされた。

この試合は、双方プレゼンをして戦うらしい。ディベートではないがそれっぽい、いかにも頭のいい人が考える紳士な戦いだ(と、少しだけ頭の悪いぼくは思った)。

開会の挨拶では再三にわたり「暴力の禁止」がアナウンスされた。
反ワクチン派と実際に対峙したことのないぼくは少々不安がよぎる。

まずは、反ワクチン側からのプレゼンを開始。


注目すべき1枚目のスライドは…

ワクチンを打つ人は奴隷。マスクをしている人は家畜』!!!

センセーショナルな一言で、会場には歓声と拍手が巻き起こった。

反ワクチン側の喝采なのか、京大生側のヤジのような茶化しの声援なのか、はたまた両方なのかわからないが、反ワク曰く”家畜”のぼくは圧倒された。


反ワクチン側の主張は大まかにこういうことだ。

・ウイルスが怖いならウイルスを移動&保存させるマスクは外すべき
・国は副反応のあった人に保証したくないからワクチン以外の死亡理由にしている
・ワクチンはアメリカの製薬会社を儲けさせる国家ぐるみの詐欺

なるほど。
よくある反ワクチンの人の主張って感じだ。
ぼくも思うところはある。


次は京大生のプレゼンだ。

こちらも反ワクチン側に負けない、センセーショナルな幕開け。

ババン!!

『江戸時代には天然痘のワクチンを打つと牛になると言われていた。情弱は何の根拠もなく踊らされる。』

反ワクチンの人は情報弱者ってわけか。
いきなり煽る、京大生。バッチバチにやりあう気だ。

ここでも会場大盛り上がり。
拍手喝采、スタンディングオベーション。

今気づいたけど、コロナ反ワクは他の人を家畜呼ばわり、江戸時代の反ワクは他の人を牛呼ばわり。どんだけ畜生になりたくないんだ。
さすが日本人、畜生道に落ちたくないとは仏教徒らしいな。


京大生(医学部)はその後、mRNAワクチンとはどんなものなのかを説明した後、狂犬病などを例に出し、ワクチンの必要性を説明した。

少々小難しく、頭に?マークが浮かんでいる人も多数見受けられた。

大きな声では言えないが、ぼくが見た限り反ワクチン派の観客は”人がよさそう”で”頭がわるそう”だった。(ただの所感だよ、真に受けないで。)

お互いの説明が終わり、ここからは参加者の質疑も交えたバトルタイムがはじまる。

さっそく一人目の質問者から手が上がる。

…!
来た甲斐があった…!
このイベントに来た甲斐があったぞ…!!

なんと、一人目の質問者、頭にアルミホイルを巻いているではないか…!
正真正銘の、反ワクチン派ではないかーっ!!!

初めて過激派反ワクチンの人を目の当たりにして、ぼくは興奮してしまった。

さて、過激反ワクチン派の質問者、何を言い出すのかと思いきや…

『これは科学の話ではなく、宗教と魔術の話だ。』

ふぁっ!?

科学の話ではないだと!?
そんなことを言ってしまえば、この試合はおしまいじゃないか。

前提条件が科学ではなくなってしまえば、京大生も手が出せない。

なんだよ、宗教と魔術って。
その魔術でワクチン推進派を家畜にしてやれよ…。

残念ながら一人目の質問者はお話しが通じないタイプの人間だった。
その後も訳のわからないことをグダグダ言った後に、自身の書いたエロ同人誌を会場に投げ込み、告知。一体何がしたいんだか…。

中立であるはずの司会者もさすがにブチギレていた。

そして彼は、このイベントで唯一会場から追い出される参加者となった。
(後ほどたたき出されたらしい)


2人目の質問者も反ワクチン側。
頭にはアルミホイルを巻いていない。

彼はプレゼンをした京大生への意見を述べる。
『致死率の違う狂犬病とコロナを一緒にするな』

さっきの質問者とは違い、言葉が通じる人間のようだ。

それに対して京大生は、
『確かにコロナと他の感染症は死亡率が違う。コロナで死ぬかワクチンで死ぬかの問題でしかなく、全体を見た時にワクチンよりもコロナの方がリスクが高く、それをふまえた上でそれぞれが判断すべき。』と主張。

それに対し、『それを大量の税金を投入して行うのはどうなんだ』と質問者。

ここで勢いに乗る京大生!!
『それは反ワクチンの話ではなく、反体制の問題である。あなたが批判するべきは、ワクチンではなく、今の政治体制です!!

会場、今日一番の大歓喜!!!
勝ちを確信したかのような笑みを浮かべる京大生!!

京大生は続けて声高々に主張する。
『反ワクチン派の人たちの中には反体制派の人たちも紛れ込んでいる!僕はそんな人たちを救いたい!!』

『資本主義では政治が腐る。政治が腐れば科学が腐る、労働が腐る、芸術も倫理も腐る。
この腐敗した政府を打倒しなければいけないんです!!』

反ワクチン派を科学的な根拠を元に、ねじ伏せていくイベントだと思い込んで参加したぼくは、いきなり政治の話になって混乱してしまった。

なるほど、ここは京都大学「熊野寮」である。
そういうことか。
そうか、そういうことである。

『ここで反ワクチン派の皆さんにおすすめの話があります、マイナンバーカードについてなんですが…』と京大生は、周到に用意したスライドを出して、マイナンバーカードについての問題提起を始めようとしたところで、審判(司会者)ストップ。

さすがに脱線しすぎだったが、これはこれでおもしろい話が聞けそうだったので少し残念。


一旦会場は落ち着き、もう一度討論タイムに。

再度言うが、これはディベートではないし、講演でもない。
観客も質疑や討論ができる参加型アドベンチャーである。


ここで京大生サイドの参加者からの発言。
反ワクチン派への反論である。

『反ワク側の話のエビデンスは全て出典不明な怪しいものだ!!
一方でワクチンは複数研究機関の査読をした上で、重症化しにくい等エビデンスがある。』
と、早口であまり聞き取れなかったが、海外の研究データを元に主張した。

それに対し、反ワクチン派は、
『効果があるのに、4回摂取しても感染者は減っていない。ワクチンの効果は証明されてない』と反論。

しかしそこで、京大サイドの参加者は
『お前の敗因は俺の話を聞いていなかったことだ!!!感染者ではなく重症化の話をした!』と、堂々主張。

癖が強すぎる京大サイド、盛り上がる会場、黙り込む質問者。

言葉の大乱闘が繰り広げられる。
ぼくは開会時の「暴力は禁止」とのアナウンスを思い出す。


会場はざわつくものの、両者ともに続投せず、この討論は終了。


続いて、別の参加者が発言する。
『僕はワクチンを5回打った反ワクチン派です!!
会場、大爆笑。

ワクチンを!
5回も打った!!
反ワクチン派!!!

パワーワードである。

そんな人もいるんだなぁ。
5回目なんて9割方打っていないだろうに。

※2022/11/30時点での日本人の5回目ワクチン接種率は、全人口の7.48%でした。(出展:デジタル庁)

『自分は健康のために打ったが、ワクチンを半強制する社会や、ワクチンパスポートによる区別に反対。』とのこと。

なるほど。
陰謀論的な反ワクチン派ではなく、ワクチンを半分強制される社会に疑問を投げかけている。

たしかに、その通りだ。
ワクチンを打つか打たないかは個人の自由であると、ぼくも思う。

会場でも強制はよくない、という流れになった。

ちなみに、今回のイベントで反ワクチン派が負けた場合「反ワクチン派はワクチンを打つ」ということになっていたが、「強制ではなく、最終的には個人で決めてもらう」と京大生サイドからアナウンスされていた。

さすがに熊野寮の京大生でも、そこまで過激なことはしないようだ。
京大生もちゃんと人間の心を持っていて安心した。


ここまで次々と白熱する討論を繰り広げてきたが、残り時間はあとわずか。
おそらく次が最後のターンになるだろう。
ここで発言したのは、反ワクチン派の発表者である。

『確かに、エビデンスはありません!!!

潔く、そして、堂々たる態度で主張。

やっぱりエビデンス、ないんかーい!!

なんでも、反ワク発表者のスライドは1時間で作ったとのこと。エビデンスを用意する時間もなかったのだとか。(おいこら、ちゃんと準備せんかい。)

この前提をひっくり返すような主張に「やはり反ワクチン派と京大生が、対話で決着をつけるなんて難しかったか…。」とぼくは思った。


『ただ、研究には金がかかるので、国や権力を持っている人たちが都合のいいものを準備できる』と、反ワク発表者は最後に言い残した。

正直この考えは、ぼくにはなかった。
うーん、それもそうかも。確かなエビデンスを元に議論を展開するためには、膨大なデータと労力とお金がかかるのだ。それは間違いない。


チン チン チン!

ここで討論は終了―!


『この議論を1時間で決めようというのがそもそも難しい。』と司会者。

引き分けに終わってしまうのか…、と
ひそかに楽しみにしていた「反ワクの人はワクチンを接種する」もしくは「京大生は反ワクを信じる。」という罰ゲーム(?)が見られないことを残念に思っていると…


『最後は皆さんに暴力で解決してもらいます!!』と、司会者からの驚きの発表。
暴力禁止ルールはいづこへ…?
まさか、ここからデスゲームが始まる…!?
反ワクサイドでも京大生サイドでもない、ただの冷やかしのぼくは、真っ先に始末されてしまうのでは…!??

焦るぼくをよそに、大きなスクリーンに映し出されたのは「大乱闘スマッシュブラザーズ」!!!

まさかのーーー!?

参加者も、反ワクチンvs京大生の決着がスマブラでつくなんて思うまい。
260kmを4時間かけて来たぼくも、最後にスマブラを見せられるなんて思うまい。
京大前の長蛇の列を見た道行く人も、こいつらがスマブラを見に集まっているなんて思うまい…!

そんな、ぼくや、道行く人や、”人がよさそう”で”頭がわるそう”な反ワク参加者の期待を裏切り、大乱闘は開始されたのだった。

反ワクチン側の挑戦者が選んだのはブラックピット。
京大生側の挑戦者が選んだのはDr.マリオ。

大接戦の末、勝利をつかんだのは、京大生操るDr.マリオ!!!


こうして、科学は正義ということが暴力によって証明され、今回のイベントは終了したのだった。(支離滅裂)


めでたし、めでたし。


個人的にMVPを授与したいのは「皆さんが批判すべきは今の体制(国家)」という、何とも熊野寮生らしい発言をした京大生の彼だ。素晴らしい活躍だった。

今回のイベントは、ガチバトルというよりはプロレスのような、エンタメ要素が強いイベントだったので、非常におもしろくて、めちゃくちゃ笑わせてもらった。
また、こんなイベントがあればぜひ参加したいなぁ。

終了後は「熊野寮の取り壊しに反対」や「〇月〇日に〇〇へ乗り込みます!
皆さんも来てください」などのアナウンスがされていて、最後までカオスな熊野寮だった。


▼これを見て熊野寮に入りたいと思った方は、こちらをご覧ください。

https://kumano-ryo.jimdofree.com/

▼これを見て、スマブラがしたくなった方は、こちらからご購入ください。


▼これを見てカオスな日常を送りたいと思った方には、こんなシェアハウスもございます。


はこにわ: https://haco-niwa.jp/


―さいごにー
帰りがけに頭にアルミホイルを巻いていた京大生を見かけた。
反ワクチン派が勝ったのかと一瞬思ってしまったが、どうやらふざけていたようだ。

そういえば「5Gに接続される」「ワクチン接種したところからトマトが生える」「マイクロチップを入れられる」とか、ぶっ飛んだ話も聞きたかったなぁ。

―さいごのさいごに―
ちなみに、ぼくはワクチン打ってませ~~~ん!!!

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