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【無料】基礎から分かる水産用語<202> テトロドトキシンとは

みなと新聞で毎週火曜日に連載している「基礎から分かる水産用語」を公開します。
みなと新聞の専門記者が、漁業、流通・加工、小売など水産で使われる一般用語から専門用語まで、分かりやすく説明する連載です。


テトロドトキシンとは

 トラフグなどが肝臓や卵巣に強く持つ神経毒。TTXと略される。細菌が生成した毒素を貝類が摂取し、さらにフグが捕食する生物濃縮で毒になるため、稚魚や、閉鎖循環式陸上養殖で適切な餌を与えれば猛毒を持つことは理論上ない。

 大分県では「フグの肝臓を食用に許可している(無毒の養殖フグなら肝を食べられる)」という俗説がある。2004年まで肝臓の提供を禁じる県の規定が定まっていなかったための誤解で、県担当者は05年に条例で禁止を明文化した上、それ以前からより効力の強い食品衛生法で天然・養殖を問わず禁止していると説明。現在も暗黙裏に肝を提供する店には「立ち入り調査などで厳正に対処している」と話す。

 天然のTTXは青酸カリの1000倍の毒性を持ち、トラフグ1尾が10人以上を呼吸中枢のまひで死に至らしめるが、石川県には卵巣を3年間、糠(ぬか)と塩に漬けて毒を抜く「子糠漬け」がある。これまで、フグの処理免許は各都道府県の条例・要綱で規定していたため、現状は県内の約20業者のみが製造している。

 近年、フグ食文化の少ない福島などで漁獲が増えたが、県免許を持つ職人不足など不具合も出ている。19年に厚労省が処理者認定の基準を発表。各都道府県が準拠を進め、6月に全国の免許が同一内容になることで輸出や消費拡大が期待される。

みなと新聞本紙2024年4月30日付の記事を掲載