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養魚秘録『海を拓く安戸池』(10)~竹簀区画~

野網 和三郎 著

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(10)~竹簀区画~

 従来の綿漁網は汚れおよび腐蝕が早く、網の交換にも多大の手間を要するので、これを竹簀区画に、切り換えるための計画準備を進めていたのである。竹簀であれば二年ないし三年間は、腐蝕しないし特にこれを火で油抜きにしたものは、より腐蝕率が低いということであった。しかしこれを設定するためには、大きな支柱が必要となり、水深七、八メートルの安戸池の場合は、その倍の十四、五メートル以上の生の松杭の製作をしなければならなかった。直径二十五~三〇センチのもので、一本で真直にのびた松は殆んどなく、どうしても二本つぎ合せてつくらなければならなかったのである。なお伐採時期も冬季という制約があり、これを得るためには、早期注文をしなければならず、そして冬季伐採したものを四月から五月末頃までに、仕上げるには、各山持ちに依頼して沢山の松木を購入したのである。幸い当地方が有名な松材の産地であるため年々必要とするものは整えることが出来たのであった。

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