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【無料】基礎から分かる水産用語<134> 黒潮大蛇行とは

みなと新聞で毎週火・金曜日に連載している「基礎から分かる水産用語」を公開します。
みなと新聞の専門記者が、漁業、流通・加工、小売など水産で使われる一般用語から専門用語まで、分かりやすく説明する連載です。


黒潮大蛇行とは

 通常は九州南部から房総半島沖に向けて直進する黒潮が、紀伊半島―遠州灘の海域で大きく南に曲がるルートを形成する現象。気象や海上輸送など幅広い分野に影響を与え、水産業においてはカツオをはじめとした回遊魚の平年と異なる漁場形成、海藻類の生育不良といった事例が報告されている。

 黒潮はフィリピン海を発し、台湾東部―東シナ海を北上した後、日本列島南岸に沿って東進する暖流。列島の近くに位置する冷水の塊を迂回(うかい)するように南下し、再び列島近くまで北上する流路が一定期間、定着すると大蛇行と呼ばれる。気象庁では大蛇行の発生を①潮岬(和歌山)で黒潮が安定して離岸している②東経136~140度での海流が北緯32度以南に位置する―と定義。

 大蛇行は、記録が残る1965年以降、計6回観測されている。発生期間は年で違い、短い場合は1年1カ月で解消。2017年8月~23年7月現在も継続している今回の大蛇行は、4年以上と長期にわたり、23年4月に過去最長を更新した。

 大蛇行は下層の栄養豊富な海水を巻き上げ、好漁場を形成する潮目を広げるため、黒潮にのり来遊するカツオやビンナガなどの魚種で漁獲量増が期待される。一方、紀伊半島沿岸などでは冷水の影響で、イワシやシラス漁が振るわないなどの傾向がみられる。

みなと新聞本紙2023年7月25日付の記事を掲載