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実は高級食材? 青森県の大型フジツボ

青森県の日本料理店「日本料理 百代」が提供するミネフジツボ料理(写真提供:日本料理 百代)

青森県のうまい海産物を選りすぐった「七子八珍(ななこはっちん)」に選ばれているフジツボ。といっても直径がピンポン玉ほどある寒流系のミネフジツボという大型種で、「カニのような」と評される濃厚なうまみが特長です。青森市中央卸売市場の卸売価格は最需要期の8月、大サイズでキロ4000円(前年比14%高)を付けました。主に県内の観光客向けに日本料理店、旅館、寿司屋などで根強い需要があります。

厄介者から高級食材へ

今から三十数年前、養殖ホタテの貝殻に付着する厄介者だったミネフジツボに着目し、食材として世に広めた日本料理店「百代」の浪内通副社長。みなと新聞は、今も料理長として活躍する浪内さんにミネフジツボの魅力をうかがいました。同店は現在、ゆでたミネフジツボを1皿税別4000円(15~16個入り)で提供しています。

日本料理 百代 浪内料理長の話

ミネフジツボは肉もおいしいが、何と言ってもスープがおいしい。カニをゆでたような風味があり、少し緑がかった琥珀色の濃厚なだしが取れます。当店の人気メニューで、県外からフジツボ目当てに来店するお客さまもいらっしゃいます。

レシピは簡単。砂を抜いたフジツボを鍋に入れ、出汁コブを入れ、水と日本酒を10対1の割合にして、フジツボが隠れるくらいの水量でゆでます。フジツボ自身が海水を含んでいますが、塩が足りなければ足せば良いだけ。コツはお湯を沸騰させないことです。

フジツボは何個もくっついて塊になっているので、料理店としては使いづらかった。鶴見先生が1個ずつバラバラに養殖できる技術を開発されたので、養殖物に期待しています。

みなと新聞記者によるインタビュー

実はかつて東京の料亭でミネフジツボのおいしさが話題になり、産地への注文が増加。卸値が高騰して資源減少を招いたことがあります。現在、天然物の漁獲は低迷しており、天然採苗は不確実、人工種苗生産技術も確立されていませんでした。

八戸学院大学 鶴見浩一郎特任教授らによる種苗生産技術研究

供給量が限られ、地元でしばしば品薄状態が起きるミネフジツボ。八戸学院大学の鶴見浩一郎特任教授らはこのほど、懸案だった種苗量産化にめどを付けたといいます。

ミネフジツボの幼生飼育の様子(写真提供:鶴見特任教授)

鶴見先生は青森県栽培漁業振興協会の松橋聡専門員とともにミネフジツボの種苗生産技術を開発。また、北里大学と共同で、ミネフジツボを効率的に養殖生産できる技術に関する特許を所有しています。この特許技術を使えば、群生する習性のあるフジツボを1個ずつバラバラに養殖でき、料理店が扱いやすい形で提供できるそうです。

陸上養殖技術で全国での生産も視野に

鶴見先生が着目しているのが、陸上養殖の可能性。水温をコントロールできる循環式養殖システム(RAS)を使えば、冷たい海水を好むミネフジツボを日本全国で生産でき、海面養殖のような漁業権も必要ないというわけです。

鶴見浩一郎 八戸学院大学特任教授登壇
オンラインセミナー開催

みなと新聞では、長年にわたってミネフジツボの人工種苗生産や養殖技術を研究し、養殖用種苗の量産化にめどをつけたという鶴見浩一郎 八戸学院大学特任教授を講師に迎え、10月27日午後1時半からオンラインセミナーを開きます。

講演では、ホタテ養殖の邪魔者だったミネフジツボが高級食材に出世した経緯、種苗生産の問題点と量産技術確立までの道のり、鶴見先生らが特許を所有する効率的な生産方法、アワビとの養殖試験に関する知見、陸上養殖の利点と可能性などをお話しいただく予定です。現在、マーケットには天然物の他、天然種苗を漁業者が海面養殖した養殖物が出まわっており、流通やマーケットについても言及いただく予定です。

・フジツボを養殖して新たな名物に育てたい
・陸上養殖にフジツボを加えて収入を増やしたい
・機器・資材で陸上養殖を支援したい
・ミネフジツボの初期餌料や飼料について知りたい
・生産者の所得を増やすヒントが欲しい

という方は、この機会にぜひご参加ください。

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