20人の男たち(2/20) 2年かけてストーカーした末に逆ナンしたFくん -5

あの日以来、以前のように故意的に一定の距離を取るわけでもなく、それぞれの生活のルーティンの中にお互いの存在を認め合うようになった。

近かろうが、遠かろうが気にせず自分の好きな席に座る。

普通に至近距離に座る頻度も増えていったし、
うっかり通学路で遭遇すれば振り返り、お互い見なかったふりをする。

正直、当時彼が何を考えていたかなんてわからない。

なんか鬱陶しいヤツ、ここにも出没した…それくらいにしか思われてなかったかもしれない。
それでも私は恋に恋してる感じが楽しかった。
私は、彼の受験が終わる頃には絶対に声をかけようと決めていた。


10月。
運動会の練習で、放課後図書館に通う余裕がなくなり、図書館の前を通って自転車の有無だけを確認して直帰する日が増えた。

(今日も勉強してる…やっぱり頻度が増えたなぁ)

彼の存在だけ確認しながら私は図書館脇を通って帰っていた。

ある日、彼が来ない日が1週間続いた。
(あれ、最近見かけない…)
あれだけの頻度で来ていた彼が突然来なくなったのだ。

(もしかして…)

私は気付いた。
私はら彼は大学受験のために勉強していて、2月くらいまでがピークだと思っていた。
よくよく考えたら彼は付属の高校、内部進学の結果が出るのは秋口から年末にかけてだ。

そう、彼の内部進学の受験は終わり、図書館に用がなくなったのだ。
盲点だったと思いながら、私は今度はわざわざ彼の家の前を通る通学路に変え、
彼の暮らしを遠巻きに観察するようになった(この辺からまじストーカーw)

朝の通学、もう登校してるのかなと自転車の有無で確認。
放課後、ローファーが干してあったら今日高3は授業ないのかなとか、自転車がないなら犬の散歩がてら20時くらいにまた近くを通ってみたり。

なんなら、偶然に遭遇しないか高校のそばまで散策に行ったこともあったし、家の側で帰宅待ちを3時間くらいして、巡回しているパトカーに声をかけられたりした。

(「ずっとここにいるけど大丈夫?最近変な人が多いから気をつけなさい」って。
ストーカーは私なんだけど…と思ったりw)

結局はどれも実らず、再び出会えることなく年を越した。


3月。
高校3年生になる春には、私は彼のことを諦めかけていた。
結局のところ、母が言うように恋に恋していただけ。
一人で舞い上がって終わってしまったけれど楽しかったなぁ…なんて思いながら、自転車で地元の商店街を走っていた矢先。

見慣れた赤い自転車の後ろ姿が私を抜かして行った。

(あぁ、Fくんが懐かしいなぁ、あんな自転車乗ってたなぁ…???)

まさか…と思い、力を入れて加速する。
サッとみた横顔、確かにFくんだ!

自転車を抜かしてしまったが、どうしよう、
こんなに待ち焦がれたFくんがすぐ後ろにいる!

この時、頭が真っ白になりながら、友人の一言を思い出した。

「人は行動した後の後悔よりも、行動しなかった後の後悔の方が大きいんだよね」

友人の声が脳裏をよぎった瞬間、私はふっと力を抜き、また私を追い抜いて行った彼に向かって、声をかけた。

「あの!すみません!!」

言った、言ってしまった。

彼はゆらりと自転車を止めて振り返る。

「あの!前に、図書館でよく勉強していませんでしたか?!」

彼は私の顔をじっと見て答える。

「あぁ。君、そういえばよく図書館にいたね。最近も行ってるの?」

「あ、はい!」

「そうなんだ、俺もう行ってないんだよね。君よく勉強してたよね。」

なんたる展開!
私のこと、覚えていてくれた、なんならよく勉強してたって?!
こんな幸せなことあるかい!
私はあなたを見ていただけで、勉強していた記憶はないぞ。

「あ、いやそんなことないです!何年生ですか(知ってるけど)、私はこれから受験で…」

「春から大学だよ。これから受験かぁ、頑張ってね。」

「ありがとうございます、高校はどこなんですか?(知ってるけど)」

「XX高校だよ、場所わかる?」

「あぁ、知ってます!じゃぁ、家もこの辺なんですか?(知ってるけど)」

「そうそう、XXの方で、そっからチャリ通。」

だいぶフランクに話してくれる彼の好意的な態度に安心して、
いよいよ私は大事な一言を言った。

「そうなんですね。あの、前から迷ってたんですけど、タイミングがなくて。
よかったら、連絡先教えてください!!!」
言った、とうとう言った。

「あぁ、いいよ。えっと、電話番号言うね。」
「じゃぁ、連絡して。またね!」

ぬぉぉおおぉお、なんとあっさりgetしたりFくんの連絡先。

というか、ナンパされ慣れてるのか?女の子慣れしてるのか?
なんと流暢なコミュニケーション、そして颯爽と帰っていく。イケメン!

私はまたその後ろ姿に惚れ惚れしながら、携帯を握り締めて、
しばらく立ち尽くした末に、フラフラと家に帰っていった。

(続く)

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