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怖かった なまけものの鏡

銀河鉄道999で忘れられない話がある。

いきなり銀河鉄道999の話をしてしまったけど、もう50年近く前のアニメなので知らない方も多いでしょうね。東映アニメーションのYouTubeで第一話が見られるので興味ある方はこちら(↓下の画面クリックすると第1話が無料で見られます)をどうぞ。

西暦2221年、地球には永遠の命を得られた裕福な機械人間と、貧しく暮らす生身の人間が暮らしている。機械人間は便利で発展した華やかな都市に、生身の人間はスラム街に。生身の人間は機械の体に憧れており、主人公の星野哲郎もそのひとり。母とふたりで永遠に生きられる機械の身体になる為に、無料で機械の身体にしてもらえる惑星プロメシュームまで走る銀河鉄道999に乗ることを夢見ている。そんなある日、銀河鉄道の発着駅があるメガロポリスという街へ行こうと母とふたりで歩いていると、機械伯爵たちの人間狩りに巻き込まれ、母親は銃で撃たれて死んでしまう。天涯孤独になった哲郎がメーテルと出会い、銀河鉄道に乗って機械人間になれる惑星プロメシュームを目指すSFアニメ。

私が見ていたのは恐らく再放送で、平日の夕方にやっていた。毎日銀河鉄道999を見るのがすごく楽しみだったのだけど、トラウマになるように怖かった回があり、その回の話だけが奇妙なくらい忘れられなかった。

その惑星は人が働かなくてもよくて便利になりすぎている。人々が肥満化しすぎて、家が壊れるという事故が多発している。その惑星に住む女性がこのままでは自分はダメだと思い、銀河鉄道999に乗ろうとしたけど乗れなかった。だいたいこんな話だったと思う。

これ見ていた時の私は肥満児だったので、見終わった後に兄が「お前も太ってるから、そのうちあんな風に家をつぶすくらい太るんじゃねーの?」みたいなことを言った。めちゃくちゃ腹立ちつつ、何かすごい恐怖感を感じた。それから「本当にあんな風になったらどうしよう…」「銀河鉄道に乗ろうとして、自分の怠け心の大きさに負けて銀河鉄道に乗れなかったら…」みたいな不安を何かずっと持ってた。

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↑ ちなみにこれが肥満児だった頃の私



ふと銀河鉄道999の肥満化する惑星の話の何が私は怖かったのかを確認したくなった。探したら見つかったので、この回を購入して見ることにした。

私はGYAO!で見たけどAmazonでも見られます。ちなみにこのサムネで見える肉の塊みたいなのが肥満化しすぎた人間の姿です…。

私はいったい何が怖かったのだろう? 私の恐怖の根源を知ろうとして見てみた。

結論。ちゃんと見たらそんなに怖くはなかった。怖かったという記憶や感情が勝手に恐怖感を膨らませていただけだったし、惑星にいた女性は置いて行かれたというより、自分で残ることを選び、自分の力で翌年に銀河鉄道に乗って夫とふたりで惑星を出る決意をするという終わり方だった。

なまけものの鏡という惑星は、機械人間に征服されずに済んでいる一見理想的な星。惑星内が機械化して、人間は何もしなくても寝食に困らずに暮らすことができてしまい(ベーシックインカムとかで暮らしてんのかな??)、人間が働こうとしても、それがすべて機械に奪われることで、その惑星の人々は意欲はなくなり、楽することばかりを覚え、肥満化しても政府が困らないようにしてくれるので安心しきってなまけたままに暮らしている。だけど、住人が惑星から出ようとすることには政府は一切協力しないというのが何かちょっと不気味だった。惑星から出ようと試みたサボリナさんは哲郎に銀河鉄道に乗せてほしいと頼み込むが、哲郎が車掌さんに喧嘩までする勢いで必死に頼み込む姿を見て、自分は人に頼って助けてもらうことしか考えてなかったことに気づいて、この惑星に残って自分の力で翌年に銀河鉄道に乗ろうと心に決める。

ついでに最終回の前半後半も購入して見てみた。あれだけ機械の身体に憧れていた哲郎が機械の身体ではなく人間として生きることを選らんだことは覚えていたけど、どんな理由で決めたのか忘れてた。

永遠の命を手に入れた機械人間たちは永遠という時間があるからか、ただただ飲んで騒いでいて、学ぶとか、成長するとか、何かをするとか、何かを作るとか、そういうことには興味が無くなっていた。逆に永遠の命があることで退屈過ぎて自殺する機械人間さえもいた。死ぬ恐怖がないということは決して良いことではないんだと思った。死なないと思っているから、予想外のことが起きた時には何もできない。死んでしまうかもしれないという恐怖感があるからこそ捨て身になってできることがあるし、今生きている時間が尊いんだなと思った。人間として限られた時間を生きていることを、もっと大切に感じていたな。


銀河鉄道999はSFアニメなんだけど、内閣府が発表しているムーンショット計画を見ると、何か銀河鉄道999の機械人間の世界も空想上の世界じゃないのかもしれないと思えてくる。

内閣府が発表している未来計画目標。

政府がどんな計画を立てていたとしても、不完全で、ダメなところが多くとも、私は私のままで生きて、人間としての私の魂が喜ぶ生き方をしたいな。

美しいのは、人が人を想う気持ち。森羅万象を祝福し感謝する心。

大切なものは便利さの中には見つけられないと私は思うな。そんなことを再確認させてくれた「なまけものの鏡」ありがとう。

怖かったのは、私自身の怠け心を、自分の醜い姿を見たくなかっただけなのかも。

***

ちなみに11月14日まで、銀河鉄道999の16話「蛍の街」が公開されています。

この話は「なまけものの鏡」と正反対の内容と言っても過言ではないと思う。貧しく不自由な中でも誇り高く、夢を忘れずに努力するフライヤさんがとても素敵だった。


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