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コロナ禍前後のECモールにおけるユーザ属性別購入金額比較

こんにちは。データストラテジストの古谷です。

2020年から始まったコロナ禍の新しい生活様式により、自宅にいながら買い物ができるECサイトのニーズが高まってきました。このようなニーズの高まりを受け、ECサイトへの取り組みを開始した事業者も多いのではないかと思います。

ECサイト上で商品を販売するうえでは、実店舗での知見がそのまま転用できるところもあれば、ECサイト独自の販売戦略として新しく検討していかなければならない点もあります。一例を挙げるとAmazon・楽天市場・Yahoo!ショッピングなどの複数のECモールをどのように利用していくかという販売チャネルに関する戦略です。

さらに別の例を挙げると、自社商品のターゲットとなる消費者がそもそもECサイト上でいくらまで使えるのかという予算水準がオフラインとは異なることがあります。実際に、ECサイト上での予算感を把握したいというニーズに基づいてEC購買データの市場レポートを提供しているサービスが複数存在しています。しかし、これらのレポートはクレジットカードの利用履歴や、ユーザの自己申告情報をもとに集計していることが多く、決済手段が多様化している現状や、自己申告漏れなどにより網羅性に懸念があります。

マインディアで収集しているEC購買データはサービス利用者からの適切な許諾取得のもとECサイトで購入時に通知されるメールデータを集計しています。そのため、複数ECサイトをまたぐことはもちろん、複数決済手段もまたいだデータを保有しています。この特性により、消費者がECサイトで使用できる予算感を網羅的に把握することが可能です。

本記事では、網羅性の高いEC購買データを用いてコロナウィルス感染拡大前後(コロナ前・コロナ後)の違いがわかるように、2016年から2022年の間でEC上で一人当たりの購入金額がどのように推移しているかを分析しています。

※弊社が保有するEC購買データの網羅性などの特徴についてはこちらの記事をご覧ください。

分析要件

ソース:Mineds for EC Data
期間:7年間(2016年~2022年)
サイト:4サイト(Amazon、楽天市場、Yahoo!ショッピング ※PayPayモールを含む、LOHACO)
指標:1ユーザあたりの月次購入金額中央値

解析

まずはMineds for EC Dataで1ユーザあたりの月次購入金額を図1に示しました。図より、コロナ禍の始まる2020年以前からコロナ禍突入後で、感染拡大をきっかけとしてECモール上での購買単価が1.3~1.5倍ほどに増加していることがわかります。

図1:2016年から2022年までのECモールにおける1ユーザあたりの月次購入金額の中央値。12ヶ月移動平均をとっている。

図1の購入金額の上昇の内訳を調べるため、ユーザを新規と既存に分けた上で、新規・既存それぞれのユーザについての平均月次購入金額・平均購入回数・平均購入単価の中央値推移を図2〜4に示しました。なお、新規とは、その月に初めてECモールでの購入をしたユーザとし、そのユーザが翌月以降に購入した場合はすべて既存として扱っています。ここで、

1ユーザあたりの購入金額=購入回数×平均購入単価

と分解できることを念頭に図2〜4をみると、1ユーザあたりの購入単価はコロナ禍前後でほぼ変化なく推移している一方、購入頻度については新規、既存ともにコロナ禍後に1.3~1.5倍程度まで上昇していることがわかります。これより、ECモールにおける購入金額の上昇は新規・既存問わずコロナ禍に入ってからECを活用する機会が増加したことによりもたらされていることがわかります。


図2:新規・既存別の1ユーザあたりの月次購入金額中央値
図3:新規・既存別の1ユーザあたりの購入頻度中央値
図4:新規・既存別の1ユーザ・1回あたりの購入金額

結論

本記事では、コロナウィルス感染拡大前後でのユーザ一人当たりのECサイト上での購買予算がどう変わったのか、それが、何によってもたらされているかという点を、ユーザの特性、および行動指標によって検証しました。
検証によって、

  • コロナウィルス感染拡大前後でユーザ当たりの購買単価は1.3〜1.5倍程度に上昇

  • ユーザを新規/既存別でみると、いずれのユーザも購買頻度が1.3〜1.5倍程度上昇

  • 購買行動を要素分解すると、ユーザ当たりの購入金額上昇要因は1回あたりの購買単価ではなく、購買頻度の増加に起因

という結果を得ることができました。
この結果から、コロナウィルス感染拡大をきっかけとしたユーザ当たりの購入金額上昇要因は、それまでのECモールの利用状況にかかわらず全体的な頻度の増加が影響していると言うことができます。単発的には店頭の品薄をきっかけとした買い溜めなどもあったと想定されますが、長期的にはユーザの年間消費支出額は増えていないことを考慮すると、オフライン購買がオンライン購買にシフトしたことにより、相対的にオンライン購買の頻度が上昇していると考えられます。


最後に

マインディアでは、ユーザを軸としてオンラインアクションデータを蓄積、分析可能なサービスを提供しています。これによってユーザ単位の購買全体からインサイトを得ることができます。サービスにご関心をもっていただけた方は、ぜひ一度こちらからお問い合わせください!

マインディアのデータストラテジストポジションに興味をもっていただけた方は、ぜひカジュアル面談にてより深いお話をさせてください!