【海外ドラマファンのためのマガジン第９回】

俳優の平岳大さんが、英国アカデミー賞テレビ部門主演男優賞にノミネートされたという嬉しいニュースを第８回でお伝えしました。

2010年くらいから（体感です）、アメリカのテレビ界では、キャストが白人に偏らないように、アフリカ系、ラテン系、アジア系を均等にキャスティングしようという配慮がされています。

なので、日系の俳優さんたちにもチャンスがあります。脇役だけではなく、主演も夢ではなくて、さらにエミー賞などを獲得できる可能性だって十分にあります。今、エミー賞に一番近い日本人俳優は、真田広之さんでしょう。

真田広之さんは、2003年に映画『ラストサムライ』に出演して以降、活動の場をアメリカに移していて、海外ドラマ『LOST』『HELIX -黒い遺伝子- 』『ザ・ラストシップ』『ウエストワールド』など、かなりの実績を残しています。

「アジア系俳優」というくくりで考えると、韓国系カナダ人女優のサンドラ・オーの成功が記憶に新しいです。サンドラ主演のBBCアメリカのドラマ『キリング・イヴ』が大ヒットしたことにより、アジア系俳優のチャンスは、過去最大級に広がっていると言えるでしょう。

2018年に『キリング・イヴ』に抜擢されたサンドラは、「アジア系の俳優が、プライムタイムドラマの主役になれる日がくるなんて！」とコメントし、本人が一番驚いていました。

サンドラは、大ヒットドラマ『グレイズ・アナトミー』に出演し、知名度を上げ、エミー賞やゴールデングローブ賞にもノミネートされているキャリアを積んでいる女優さんです。海外ドラマ界では、アジア系の星ともいえる活躍をしてきています。しかも、カナダ生まれなのでネイティブの英語を話せます。

ところが、平岳大さんは、英語のネイティブスピーカーではないのですよね。
だからこそ、英国アカデミー賞にノミネートされたということは、ものすごい偉業だと思うのです。

平さん主演ドラマ『Giri/Haji』は、日本とロンドンを舞台にしたドラマで、日本語と英語が半々くらいの割合で進んでいく内容なので、日本語で話している部分は、あちらでは英語字幕が入るわけです。
欧米の観客は、「字幕嫌い」と言われていますが、最近少し緩和されてきたとはいえ、テレビで字幕付きのドラマを見て、「面白いね！」となってもらえる。しかも、日本の俳優が主演で。

「夢じゃないか？」と思いました。そんな時代がくるなんて感慨無量です。

平さんには、「もっと海外ドラマ界で活躍してもらいたい！」と思いましたが、ご本人はすでにアメリカでの活躍を目指し、ハワイに移住されていました。さすが！

平さんが、日本の名優、平幹二朗さんと佐久間良子さんのご子息ということは存じ上げておりましたが、15歳からアメリカに渡り、ブラウン大学を卒業なさっているとは知りませんでした。

アメリカでドラマや映画に出演するためには、演技力とか以前に、まず英語が喋れないと難しいです。例えば、日本の超有名俳優さんが、「ドラマに出たい」とアメリカに渡ったとしても、「英語はNGです」では、出演することは厳しい！
もともと、キャスティングされていれば別ですが、ドラマの役は、基本的にオーディションで勝ち取るものです。誰にでもチャンスはありますが、アメリカ中の才能が集まる業界なので、勝ち取れるのは、ほんのわずかの狭き門。

「今回のオーディションに受からなかったら、俳優をやめて故郷に帰ろう。」と思っていた人が、オーディションに受かり「人生が変わった」なんてことが良くあります。俳優の知名度ではなく、才能や個性をみるのがアメリカのエンタメ界です。

ただ、ここ数年、アメリカのエンタメ界は、ダイバーシティ化を進めていて、人種、ジェンダーの平等化問題にかなり敏感になっています。アカデミー賞などの賞レースも、候補者が白人だけだと「白すぎる」と批判もされる状況です。

アジア系の俳優たちには、今チャンスなんじゃないかなという空気は感じています。アジア系キャストという枠が以前よりは多くあり、その競争を勝ち抜けば、役をゲットできます。（理論的にはですが……。）

平さんは、ネイティブスピーカーではないというハンデはありますが、日本語の演技が半数を占めたドラマで賞にノミネートされたということは、その存在感を買われたということなので、大きな武器になると思います。
平さんが、FBI捜査官役で犯罪捜査ドラマのメンバーの一人になっている姿が、さっそく想像できますよね。雰囲気のある俳優さんです。

ぜひ、プライムタイムドラマの出演を勝ち取って、サンドラ・オー、そして、日本を代表する海外ドラマ俳優、真田広之さんに続いてもらいたいです。