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医学・医療かんたん解説シリーズ1 赤ちゃんレベルの基礎医学

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医学や医療、生命科学に関することをかんたんに解説するシリーズ第一弾。基礎医学シリーズです。 主に、私のメインブログである「ぱそろじすと・あっと・ざ・らぼ」(https://www… もっと読む
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記事一覧

赤ちゃんレベルの「ウイルスの話」その1 ~ ウイルスって何だろう

 簡単に基礎医学のところから医学・医療について書くシリーズを続けています。この記事もマガジンに含んでいます。  今回はウイルスとはなんなのかということの基本について少しお話をしたいと思います。  いずれ、昨今問題になっている、子宮頸癌について少し触れたいのです。そこで、そこにたどり着くために何をお話すればいいのか考えてみました。  子宮頸癌というのは女性の子宮頸部に生じる癌 (carcinoma) です。この疾患についてお話しするには、まず、腫瘍というのがどういうものか

赤ちゃんレベルの「腫瘍の話」その1 ~ がんと癌の違いなど

 「がん」と「癌」は違うよということを少しお話したいと思います。  ブログや note をつかって、ここ数回免疫学やゲノム編集の基本の基本の基本のエッセンスだけを書いてみようということをしたところ、想定外にたくさんの方に読んでいただきとてもうれしく思っています…ありがたい。  私はもともとは薬学部出で薬理学・分子生物学 (特に GPCR という受容体)の研究をしていて、医者になりなおしてからは、ウイルス学 (ヘルペスウイルスの専門家です)、病理学、免疫学をやっています。今

赤ちゃんレベルの「免疫の話」その3

 簡単に免疫システムを解説してみようという企画の第三回です。 前二回はこちら  ▶ 赤ちゃんレベルの「免疫の話」 その1   ▶ 赤ちゃんレベルの「免疫の話」 その2 振り返り さて、前二回は獲得免疫の話をしてきました。といってもすごくざっくりで、王道のみを行きました。  簡単にまとめなおすと、獲得免疫= adaptive immune system はリンパ球であるB細胞とT細胞によって担われていたのでした。  B細胞は液性免疫担当で、抗体をつくる。T細胞はヘルパ

赤ちゃんレベルの「免疫の話」その2

 第二回です。前回の note の引き続きです。  前回のnote ▶ 赤ちゃんレベルの「免疫の話」その1    どこまで話していたかというと、免疫システムにはそして獲得免疫と自然免疫がある。  そして獲得免疫をまず見ていくことにしていました。  獲得免疫の主人公の一つはリンパ球ですが、これはB細胞とT細胞に分かれていました。  そして、B細胞は抗体をつくって「液性免疫」を担い、T細胞は細胞を殺すことができて「細胞性免疫」を担う。という話まで来ていました。  さ

赤ちゃんレベルの「免疫の話」その1

 今、私はウイルス学を研究しているんですが、実際には免疫学をやっています。  細かいことはまた説明しますが、免疫学というのはとても広い分野であり、感染症の理解には必須ですし、現在ではオンコロジーといって、腫瘍・がんなどを研究する分野でも重要です。  感染症、ワクチン、がん…そういったものを理解するのにも免疫は基本的なところで、勉強しておいと損はないと思います。 免疫学はわかりにくい…   免疫学というのは非常に細かく大量のストーリーがあるのですが、簡単な本を読んでもそれ

赤ちゃんレベルの「HIV・エイズの話」その1

 12月1日は「世界エイズデー」でした。  この時期はHIV/エイズ関連の情報がたくさん流れてきます。  いくつかの SNS などで、「いまHIVでは死にません」というキャッチフレーズが流れてきました。発信源は「大阪HIV検査.jp」でした。  これはちょっと、「言いすぎな面『も』ある」キャッチフレーズだと思ったので少し考えてみたいと思います。  誤解がないように言っておきますと。「先進国においては」HIV感染症の診療は確実に、非常にすすんできており、未だに多くの人が

赤ちゃんレベルの「ゲノム編集」の入門の話

 医学や生命科学に関する事項を、できるだけ簡単に解説していこうというシリーズでの試み、今回はちょっと時事ネタに絡めて、ゲノム編集のお話をしてみたいと思います。 ゲノム編集で双子が誕生?? 2018年11月、中国でゲノム編集技術をつかってヒト受精卵の遺伝子改変をおこない、双子が生まれたというニュースがありました ▶ 毎日新聞 「ゲノム編集で双子」研究者、説得力ある説明せず ▶ BBC JAPAN 「世界初のゲノム編集赤ちゃん」の正当性主張 中国科学者  など。  こ