令和5年税制改正解説 相続・贈与税編

 令和4年12月16日に「令和5年度税制改正大綱」が発表されました。
かなり遅くなりましたが(記事投稿時点は8月)、今回はこの改正の資産課税について改正趣旨や実務上気を付けないといけない事について、わかりやすく解説していこうと思います。
(後ほど法人税編、消費税編についても投稿させていただきます。)

 今回の資産課税改正で大きく変わったのはやはり、暦年贈与と相続時精算課税制度の以下の見直しです。

①相続時精算課税に係る基礎控除の創設
 暦年課税制度では少額不追及の観点から基礎控除110万円が設けられていました。しかし相続時精算課税制度では、金額にかかわらず贈与税の申告をしなければならず、納税者の事務処理の手間がかかることからあまり利用者が増えませんでした。そこで相続時精算課税制度についても基礎控除を創設し、高齢世代から若年世代への資産の移転を活発にさせることで、経済を活性化させます。

②暦年課税による生前贈与の加算対象期間等の見直し
 生前贈与加算については、元々、亡くなる前に贈与をして相続税から逃れることを防止するために3年間を期限として設けられました。しかし3年間だけでは贈与をするタイミングによって、不平等が生じるために7年間に延長することで担税力を平等に保ちます。
(贈与をするタイミングによって得する人・損する人が生まれるのは不平等で、担税力によって税を負担すべき)
また、こちらも事務処理上の手間の問題から、相続開始前3 年超7 年以内に贈与により取得した財産については、総額100万円までを加算の対象から外しています。

それでは、上記の内容から実務上どのよう問題や変更が生まれるかについて考えていきます。

①生前贈与を利用した節税がしにくくなる
 これまでは、毎年こまめに少額の贈与をすることで、地道に財産を移していき相続税の課税対象額を小さくする方法が多く取られていました。
しかし生前贈与加算期間が3年から7年に延長したことで、これまでより長い計画で、かつ早めに対策をする必要がでてきました。

②暦年贈与と相続時精算課税制度の有利不利判定が複雑になる
 これまでは、どっちの制度を使ったほうがいいかシンプルな方法で有利不利判定ができていました。例えば、相続税がかからない人であればもちろん精算課税制度のほうが贈与税払う必要なく有利ですし、将来値上がりがする可能性のある財産があるとき、小規模宅地の特例が使いたいか等、それらの判定はシンプルなものでした。今後は経過措置に気を付けながら、またいつ亡くなるかなどの不確定要素も考慮しながらタックスプランニンをする必要があります。

ということで、質問などあればコメントください。

それでは。
 




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