ミニ四駆に戻ってみた。12 超大径の誤解
2016.4/23(土)
PM1:30
新潟市中央区 ホビーロード
「 ホビロの大会申し込んだぞ」
「は!?」
昼休み。
会社を抜け出してホビーロードに来た俺は、宿敵ヒロから届いたメールに腰を抜かした。
ちょ待てよ、俺まだエントリーするって伝えてないぞ!?
思いがけない先制攻撃。申請スピードですら俺より速いか。やるなヒロ!
ちなみにヒロが申し込んだのは初級〜中級者向けのミドルクラス。
エキスパートも気になったがヒロがミドルに出るというのなら俺もミドルで出場しよう。
大会はゴールデンウィーク最終日の5月8日(日)。
やばい、今から楽しみすぎる。
だがその前にもうひとつ、個人的に大きなイベントが待っていた。
そっちの方は期待と不安が半々なのだが...まぁ予定は決まっているので後はやるしかない。
上手く作れるといいんだけど。
☆
4/26(火)
AM 10:30
ほっと家 2F
「すげぇ!」
とある休日。
いつもの自宅。いつもの作業部屋。
そんな日常の一場面に、非日常が現れた。
「かっけぇぇぇぇぇ!」
平面速度を追求した極限進化。井桁超大径のマシンがそこにあった!
え、なにこれ? シャーシは何?
「裏から見るとすぐに分かります」
裏返してみるとニヒルに片頬を釣り上げたシャーシと目が合った。
「VS…ですね」
「S1遣いなので普段は組まないんですけどね。
普段からVSを組んでいる人に『S1遣いの組んだVSには負けないでね♡』って言ってます」
厳しい(確信)。
という訳で、今日のゲストはうみはねさん、その内容はなんと『超大径タイヤ作り』だ!
我が家までご足労願っての一大イベントなのだが、スタートから既に濃いぞ!?
きっかけは数日前の世間話。
「超大径とアトミやってみようかな」
「やり方教えれます」
ありがてぇ...マジでありがてぇ!
これはお願いするしかない。しかし作製するにしても必要な道具が足りていない。
そんな訳で給料日まで待って頂き、ノギスやらデザインナイフやらを揃えてからの開催となったのだ。
ふ、こづかい増やしてくれないかな...。
しかし本当に綺麗だよなぁ。
機能美とでも言うのか。以前バイク仲間にヤマハのWRを見せてもらった時と同じ感動があった。
もう見た目の時点で圧倒される。絶対に速い。
この特徴的な超大径タイヤ。果たして俺にも作れのだろうか?
いやいや、作れるようにならねば!
まずはうみはねさんがお手本として一本作ってくれることになった。
その準備として、うみはねさんが作成した超大径タイヤの作成動画(!)を見せて頂く。
解説動画まで作っちゃうのか。この人本当にすげぇな。
次に取り出したのは本格的なルーター。Amazonで購入すると一万円くらいとのこと。
作成用のホイールに1.8mmピンバイスを使ってシャフト貫通用の穴を明け、ブレが無いようにそれを取り付けた。
そしてバレルタイヤを履かせ、デザインナイフでスパスパと輪切りにしていく。
「ほら、水を付けると切り口に吸い込まれていくでしょう?」
刃先に水を滴らせたデザインナイフがいとも簡単にハードバレルタイヤを切り裂いていく。
濡れた刃が対象を両断していく様は、さながら里見八剣伝の村雨のようである。
あっという間にタイヤを切り分けると、今度は接着作業を開始した。
装着したタイヤを持ち上げながら接着剤を流し込んでいく。
反対側からも流し込んだら乾かして接着OK。乾いたことを確認してからヤスリがけに移った。
チュイィィィィ
ヤスリがけに使用したのは俺がホームセンターで購入した300円の棒ヤスリ一本である。
「おお〜」
あっという間に整形されていくタイヤ。続けて2層目となるタイヤを伸ばしながら履かせると、先程と同じ工程で整えられていく。
あれ? 超大径ってこんなにスムーズに出来ていくの?
腕が良いのか、超大径タイヤはあっという間に錬成されてしまった。
最後に汚れを落とせば一輪目の完成!
マジか、一時間も掛かっていないぞ!?
「へぇ~、こんなに綺麗に出来るものなんですね!」
「ね? 簡単そうでしょ?」
簡単『そう』という台詞が少し気になったがあえて気にしない事にしよう。
完成したうみはねさん作の超大径タイヤは我が家の家宝として頂戴し、今度は俺がワークマシンで作ることとなった。
「あ、軸受けがPOMだとすぐ熱で駄目になってしまいます。精度の良いベアリングが良いでしょう」
という訳で620を使用することに。
まずはワークマシンを組むところからなのだが…
(じーーー)
うっ。
速い人に見られながらマシンを組むのってメチャクチャ緊張する。プレッシャーが半端ない。
そんな訳で作業開始。
まずはホイール貫通の義から。
うおおおプルプルする!
「ここで無理をして軸がブレる人も居ますので」
余計プルップルする!!
過緊張の作業だったがそれでも何とか完了し、ワークマシンに取り付けた。
お次はタイヤの取り付けだ。
「こんな感じで良いですか?」
「ほっとさんが良いと思えば良いんじゃないですか?」
ぐあっ、急に突き放し系!?
うぐぅ...
「だって2個目・3個目の時には自分は居ませんからね(ニヤリ)」
うぐぅぅぅ(石動雷十○)。
ええいっままよ! ワークマシンを起動するぞ!
お手本の通りタイヤを薄くカットするよう意識し、デザインナイフを差し込んでいく。
スッ
「……!」
浅い! ていうかビビる!
「もっと手応えを感じるように。ホイールに当たったと思ったら止めれば良いのですよ」
言われた事を意識しながら、刃先に水をつけてデザインナイフを当てていくと。
「おお~!」
切れた。
スパッと切れた。
ヤバいこれ楽しいぞ!?
そのまま土台となる部分と二層目となる部分もカットしていく。
出来るやん。これ、出来るやん!
そして一層目を接着(苦労しながら)してからは、いよいよヤスリ掛けである。
ルーターと違ってトルクが心配なワークマシンではあるが、つい先程うみはねさんの動画で問題なく作れる事は確認済みだ。
ええいっ、疑う余地は無いのだからやるしかない!
チュイィィィィ
ああでもない、こうでもないと悩みつつ。
手が止まる度にアドバイスをもらいつつ。
ゆっくりとではあるが、だんだんとタイヤの表面が平面に近づいてきた。
「ふぅ……!」
どうだろう? 綺麗な平面になったように見えるけど。
「斜めに削れています」
だそうで(泣)。
「ちょっと良いですか?」
ワークマシンと棒ヤスリをうみはねさんに渡すと、そのまま半分だけ削っていく。
ブイィィ
「見てください」
うみはねさんに渡されたタイヤを見て驚いた。
自分が削った部分とUさんが削った部分、綺麗さがまるで違う!
まっ平らなUさんの加工した部分と、凸凹曲線になってしまっている自分の加工部分。
ああ、悲しいほどにくっきりと別れている。
再度確認するが道具は同じだ。普通のワークマシンと300円の棒ヤスリである。
出来るのだ、手持ちの道具で。
☆
まだまだ平面になっていないが、とりあえず休憩。
昼食を取りながら、ここまでの作業を振り返っていた。
超大径タイヤ。
初めてネットで見た時は、その異形に驚かされたものだった。
そして思った。『こんなの作れっこない』と。
それは超大径に限った事ではない。今流行りのペラタイヤだってそうだ。
どうやっていいのか分からず、とりあえずネットで調べたり動画投稿サイトで検索を描けてみる。
すると出てくるのはタイヤセッターなどの専用工具ばかりで、初心者には敷居が高く感じてしまった。
だから今まで避けてきたのかもしれない。やれた方が良いんだろうな、とは思いつつも。
「道具が無いから作れない、そういう訳じゃないんですよ。ワークマシンでだって時間を掛ければ作れるんです。
だから余計、やってもいない内から『ルーターが無いから出来ない』とか言ってしまうのはどうなの?って。
ひとつ3000円もしない工具で作れるんですよ。自分が教えた小学生だって小遣いの範囲で揃えた工具でちゃんと作ってました」
そう。『丁寧に作ろう』という気持ちひとつで簡単に出来るのだ。
壁なんてない。本当の事だった。
☆
「すんません嫁のストップが掛かりました」
楽しい時間はあっという間に過ぎ去り、嫁ブレーキによって強制終了となった。
だがしかし貧乏でも超大径マシンが組めることが分かったぞ。
『超大径やペラタイヤは作るのが難しい』というのは誤解であって、丁寧に作業すれば誰だって出来るのだ。
その事に気付かせてもらったのが本日最大の収穫だろう。いずれはエキスパートにも出てみたいなぁ。
「そういえば、これを...」
「おおっ!」
ででーん!
こ、これが充電器!
うみはねさんが単3電池用に加工したもので、現在使っていないからと格安で譲ってもらえることとなった。
うおおおおお、なんだか一気に本格的なレーサーになった気分だ!
行ける、これは行ける! この充電器を使って大会でヒロに勝つぞ!!!
「そういえばこの前ホビロで良い速度が出てる人がいましたよ」
「あ、そうなんですか?」
「アトミであのコース8秒台でしたよ」
「うっ」
アトミで8秒台!?
うみはねさんがわざわざ言うってことは、もちろんエキスパートではないだろう。ということは?
「ローラーセッティングだけ教えておきました。あの速さであれば入賞出来ると思います。
あ、ミドルクラス出場をお勧めしておきましたよ(ニヤリ)」
ナニシテクレタンディスカ!!?
そんなに速いライバルが出てくるだなんて。というか、どうやったらそんなに速くなるんだ...?
「あ、ちなみにこの前のベルクカイザーも8秒台でしたよ」
そういえばスイッチがなくて走らせられなかったんだっけ。
重たいプラボディのポン組みMSで8秒台とか、やっぱりこの人すごいな。
しかしそれが入賞ラインなのか。
「それとミドルクラスとエキスパートクラスの両方に出場する事は出来ません。同じ人ばかりが勝ったのではレース人口が頭打ちになりますからね、
基本的に実力で住み別けるようになったのですよ。まぁいつまでもミドルにいる人がいるので、結局はあまり変わりませんけどね」
ほっと「ああ〜」
ふとアーケード時代の鉄拳5を思い出す。
あれも既に上手い人が多キャラでカードを作っては初心者狩りして過疎の原因になってたなぁ。
ふむ、仕方ない。次回からは俺もエキスパートに!
「ミドルクラスで優勝してからエキスパートに来て下さいね」
ぐあっ、俺がエキスパート行くには優勝しないとダメって事?
チューン系で8秒台の人達が参加する中で?
え、俺まだチューン系で8秒台出したことないんですけど!?
このままじゃヤバい! 俺もこのゴールデンウィークで8秒台を出さなければ!
なんとしても優勝! それしかない!
ぐぬぬぬぬぬ!!!
【 次 回 予 告 】
ホビロの常設コースで8秒台!? そんな激速レーサーがミドルクラスに出てくるかもしれないだって!?
俺がダッシュ系モーターを使ってやっと出せるタイムなのに、それをチューンで出せるだなんて速すぎだろ!
焦る気持ちとは裏腹に全く成長しないS1レブ。そして次々に現れる強力なライバル達の存在に俺は完全に冷静さを失ってしまう。
負けられない、俺がエキスパートに行くためには絶対に負けられないんだ!
必ず優勝し、エキスパートクラスに行かなければ。その為だったら、俺は……どんな手でも使ってやる!
次回、ミニ四駆に戻ってみた。
「ホビーロードミニ四駆大会(前編)」
何がなんでも優勝しなければならないんだから。勝てるマシンを……何としてでも8秒台を!
ほぼ毎夜10時頃~YouTubeにてゲームorミニ四駆の生配信を行っています!お気軽に遊びに来てください!https://www.youtube.com/channel/UC38sxZzD1yC-rTQzTaS7h5A