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腕時計が紡ぐ、懐かしく情けない自分

私が初めて付けた腕時計は、赤いG-SHOCKだった。
当時塾に通っていた私に、「電車の時間とかテストの時間を見るのに使うだろう」と、親が買ってくれたのだ。
今考えてもいい腕時計だった。
たくさんの機能がついているのに頑丈で、荒々しい小学生の私の扱いにずっと耐えてくれた。
中学校では、同じ腕時計をしているということで話し始めた友人もいた。

だが、年が経つにつれ段々と「カッコいいモノ」に興味がわいてくる。
当時の私が好きなモノと言えば、もっぱら文房具であった。
授業が終われば帰り道の文房具屋へ行き、休日には梅田の文具店まで電車で行く。
今思えば往復2000円越えの交通費などよく払ったものだ。
ああ勿体ない。
それはともかく、文房具のようなレトロなカッコよさを持った腕時計が欲しかった。
だから誕生日に買ってもらった。
裏がスケルトンになっていて、中の部品が動いているのが見える。
当時の私は大そう気に入り、ずっと時計を裏から眺めていた。

それを買ったのと同じ年に、祖父が腕時計をプレゼントしてくれた。
祖父が昔働いていた会社で、『勤続30年』のお祝いにもらったらしい。
「そんな大事なモノ、もらっていいのか」と思ったが、どうも使い込んだのであろう細かい傷や、大人な雰囲気の漂うそれが、私を魅了した。
なにより、腕時計の面にカレンダーが付いているのだが、
その曜日が「月」「火」「水」と漢字で表記されることに『昭和感』を感じ、「いいの?いいの?」と聞きながら、もらう気満々であった。

大学に入って、父から腕時計をもらった。
ファッションに興味を持ちだした私は、仕事から帰ってきた父と夜中まで腕時計談義をしていた。
そして「そんなに興味あるならやるよ」と、TIMEXのウィークエンダーを渡された。
文字盤に特別なところはない。
だが、ベルトをNATOベルトといって、好みのデザインのベルトに変えることができる。
父からもらったベルト5本に加えて、数本自分で買い足したりしてみたが、どうも父のベルトの方がカッコいい。
今でも父のファッションセンスには敵わない。

20歳になった私は、成人祝いにずっと欲しかったHamiltonのベンチュラをもらった。
今なら「成人したんだから自分で稼いで買えよ」と思うのだが、当時の私はそこまで頭が至らなかった。
「世界一カッコいい」と、3年間憧れ続けた時計だ。
でも、高い腕時計を常に腕に着けて気兼ねなくいられるほど、私は立派ではなかった。

そうして買ったのが、TIMEXのアイアンマン。
がっちり「実用」に特化した時計で、頑丈さと機能の多さはG-SHOCKにも引けを取らない。
おまけにNATOベルトを通すこともできる。
毎日の目覚まし時計、作業中のタイマーとしても使用している。
普段はアイアンマン、少しかしこまった場にはベンチュラを着けていく。

これらの腕時計、壊れていないものはどれも持ったままだ。
腕時計には、情けない当時の自分と、家族の思い出を収めている。



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