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どれだけ稼げば心休まるのか/デザフェスVol.58の感想

 こんにちは、minimumsのニシノ(夫)です。前回からわずか(?)1ヶ月ほどでのnoteの更新、自分で自分を褒めつつ書きました。そしてついに10,000文字超えの記事です。
 マドンナに「寅ちゃん今日お暇?」と聞かれて「鼻血出るくらい暇です!」と答えた時の寅さんくらい暇な時に読んでみてください。(毎回言ってるなこれ)



前回記事の簡単すぎる振り返り

 まず前回の記事をたくさんの方に読んでいただけたこと、心打ち震えるほど嬉しかったです!

 ハンドメイドイベントの在り方、今後について多くの方が思うところがありつつも、なかなか言いにくいのだということを、「いいね」の数で具現化できたことに、まず一作家として大きな手応えを感じました。

 さてそんな上記記事では、

①9月の東京のイベントで目標金額-40万円を叩き出してしまった
②イベント主催側だけでなく、各作家単位でイベントを積極的に告知する
③地域、会場、来場者に合わせた作品選び、新作&新ブース展開

 のようなことを書いていたのですが、今回の記事では、先日の2023年11月11-12日に開催されたデザインフェスタVol.58で、①と②についてどう改善したか&結果について書き留めたいと思います。
 ③の新ブースについては、書きたいことがありすぎて長くなりそうなので、次回に回します。


デザフェスVol.58(2023年11月11-12日)

いくぞ東京!新たなブースで!

 前回9月の東京の同会場別イベントでは、主催&各作家による魅力的な発信不足によって来場者数が見込みより少なく、minimumsでは目標金額の-40万円を叩き出してしまいました。
 過去2回出展してきたデザフェスでは十分すぎる結果を得られてきたのですが、「やはりイベントは人が集まらなくてはどうしようもない」という現実を目の当たりにしたため、いかにデザフェスと言えど、年々各作家のレベルも上がる中、何か早めに手を打たなくてはいけない…!と痛感しました。

 そこで、まず自分自身の改善点として、

・魅力的なブースを新たに設計&制作し、当日お披露目する
・新ブースと連動した新作を展開する
・主催に依存せず、独自にSNS等で宣伝する
・地域に合わせた人気作品を重点的に準備する

 ことを目標に2ヶ月かけて準備しました。新ブース、新作に加えて当日持っていく作品をつくりつつ、minneで販売する作品もつくる…だと…っ…!

 やれんのか!?やってやんよ!!


◉作品準備、SNSによる告知

 作品については、事前に売上目標金額を立てた上で制作スケジュールを組み、9月のイベント終了直後から作品制作を進めました。地域に合わせた人気作品としては、東京はドールやミニチュア作品が好きな方が多い印象なので、階段やアンティークシェルフなどのドールやミニチュアを飾って楽しめる作品を多く制作しました。
 また初めましての方向けに、金額的にも購入しやすくminimums感の伝わるサーカステント(ミニ)も多く準備しました。

 SNSによる告知については、苦手なハッシュタグを活用しつつ、

・30日後に答えがわかるデザフェスクイズ
・フォロワー、常連に向けた定期的な進捗報告
・公式のリポスト祭を活用したフォロワー以外への宣伝

 を中心に、主催の宣伝にのみ依然せず、作家単位でも積極的な告知を心がけました。
 デザフェスクイズでは、新ブース兼新作の画像を事前にお披露目し、1/1サイズでつくるのか、1/12サイズでつくるのかというクイズ形式で宣伝しました。正解は「どちらもつくる」なのですが、会場に来る楽しみや驚きを感じてもらえるような仕組みにできました。
 また、リポスト祭では公式の力を借りて多くのリポスト、いいねをいただけました。「リポスト祭を見て来た!」というお客様が非常に多かっため、これまでminimumsを知らない人へも効果的に告知ができました。
 今回特に事前にSNSでタグ(#デザフェス、#デザフェス58)で検索して知ってくれた方が多く、イベント前にも関わらず1週間でSNSのフォロワーも300人ほど増えたことも嬉しい誤算でした。出展者が日本一多いデザフェスでは、多くの来場者が事前リサーチを欠かさないことが伺えます。

↑デザフェスクイズで事前お披露目した新ブース&新作画像
↓デザフェス公式のリポスト祭り


デザフェス前日〜当日の流れ

 さあ作品とブースが準備できたら軽1BOXに詰め込み、愛知県から5時間かけて東京へGO!
 東京出展は朝早くから動き始めるので、前乗りしてホテルに泊まります。そういえばデザフェス出展が決まってからホテルを予約しようとしたのですが、2ヶ月半前でもビッグサイト周辺の(泊まれる金額の)ホテルは全て満室でした。キャンセル待ちも検討しましたが、電車1本で行ける浜松町あたりに今回はホテルを予約しました。これには驚き。

デザフェス初日の搬入〜開始までの動き
・05時30分/ホテル発
・05時45分/会場着、車搬入待機列に並ぶ
・05時50分/搬入口近くに駐車
・07時00分/搬入開始
・07時30分/ブース組立&作品,備品搬入完了→車を搬入口から移動
・07時40分/専用駐車場に駐車(車はこのまま2日間置きっぱ)
・08時00分/15分ほど歩いてブースに戻り、準備再開
・11時00分/イベント開始

 8時の準備再開から11時まで3時間もあるから余裕じゃん!と調子こいてたら間に合わなくなることを長年の出展感覚で分かっていますが、それでも作品陳列、朝一ラッシュ用の事前梱包(次項で説明)、裏側の整理整頓(地味に重要)をしていたらあっという間に時間が過ぎてしまい、いつもギリギリになってしまいます。
 デザフェスは出展者駐車場が遠いので、車の移動も大変ですね。ブースを無人にしてしまうので、防犯のため毎回近隣の方にお声がけしてから移動させています。

デザフェスでお披露目した新ブース1/1サイズ(卓上には1/12サイズも!)


◉イベント開始!さあ来い!

 作品もたくさん作った、事前告知もちゃんとできた、新ブースも見栄え良くできた、できることはやりきったので、あとはお客様に来ていただくのみ。祈るような気持ちで初日スタート。
 前回同会場での別イベントでは開始直後に目星のブースに駆け込む、通称朝一ラッシュ(ただし走ってはいけません…!)のお客様に恵まれず、ゆるやかにスタートしましたが、今回は開始直後からminimumsを1件目に選んで急いで来てくれるお客様がたくさん…!あっという間に20人ほどの行列ができました。

 あ、、、ありがたしーーーーっ!!

 この瞬間に2ヶ月に及ぶ苦労と不安から解放され、しばしの感涙に浸りたいほどですが、無論そんな時間はありません。朝一ラッシュのために開場前から並んでくるお客様(猛者)は、当然2件目も目星をつけています。数ある中で1番にうちのブースを選んでいただいている以上、お待たせするわけにはいきません。

 うちの作品は全て立体作品のため、会計前に梱包する時間が必要になります。そのため、朝一の混雑を解消するために卓上に並べた作品は展示用として、別にお渡しする用の梱包済み作品に分けて用意しています。これが前項で書いた「朝一ラッシュ用の事前梱包」です。

・卓上にある作品から選んでいただく
 (猛者は事前に欲しい作品、色を決めてくれています。感謝)
 ↓
・即計算して合計金額を伝える
 ↓
・お支払い準備待ちの間に梱包済みの作品を紙袋詰め
 (猛者は事前に合計金額を計算し準備してくれています。大感謝)
 ↓
・お礼とともにお釣りと作品をお渡し

 これで1会計あたり1分ほど。朝一で来ていただいているのにロクにお礼も言えないまま次の方へ。朝イチのお客様(猛者)はそのあたりも十分理解してくれているので、パッと一言「いつも応援しています!」「SNS見てます!」「パグ助かわいいですね!」等のお金以上に価値あるお言葉の他、差し入れやお手紙まで残して足速に去っていかれます。

 マジかっけぇ!とその姿勢をリスペクト。最早感謝しかございません。


◉朝一混雑と整理券の在り方

 今回は角ブースを取れませんでしたが、大通り沿いの配置だったため、「行列で人が通れない」という状況は避けられましたが、それでも両隣のブースには何かしらのご迷惑をおかけしてしまいました。
 開場前に近隣のブースへの挨拶は欠かしませんが、それで全てが許される訳でもなく。弱肉強食のイベント会場ではブランドの人気が高まるほど避けられない問題ではありますが、申し訳ない気持ちも勿論あります。

 うちにはペットホテルを獄中のように感じるベストフレンド・パグ助がいるため、泊まりの県外出展では奥様を連れて行けず一人で出展しています。お客様同士の気遣いで行儀よく並んでいただきつつ、状況に応じて声がけをして整列のお願いをしていますが、どうしても両隣ブースにお客様がはみ出ることがあります。
 両隣へご迷惑をかけないよう、お客様の整列と誘導をしてくれる人が誰かもう一人でもいてくれたら良いのですが、知らない土地で気軽に手伝ってもらえる人もおらず、誰か雇いたくてもそういったシステムも見当たらず。現状はとにかく迅速に会計を済ませられる事前準備の徹底しかできていません。

 一方、ベテランや人気作家となると整理券の配布などもしていますが、あれが何ともしっくりこない、というかそれがハンドメイドイベントの今後にとって果たして良いことなのかという疑問点が大きく2つありまして。

・朝一に並んでまで求める熱意に整理券配布で応えられているのか
・力のある作家が皆整理券を配ったら、初来場者はどう感じるのか

 整理券を配布したら、来場者は朝一に券だけもらって他のブースに行けるし、出展者も混雑を回避して慌てることなく会計ができます。
 しかし、朝早くに起きて開場前から並んで、一番に自分のブースに目がけて来てくれる。並大抵の熱意ではありません。作家としては何よりも喜ばしく誇りあるものです。その熱意に整理券で応えることが果たして正しいのか。その熱意を奪うことにはならないのか。

 また、力のあるベテラン、人気作家が皆整理券を配るようになったら、初めてイベントに参加した来場者はどう感じるのでしょうか。
 ハンドメイドのイベントがあると知った人が、ぜひ行ってみたいと会場に足を運んだのはイベント開始2時間後。素敵な作品がたくさんあって買おうと思っても、どれも整理券を持っていないと買えないものばかり
 そんな初来場の方を大切にしない「一見さんお断りイベント」に、また来てくれるでしょうか。開場前から並んで行かないと、お目当てのものを買う「機会」すら与えられないなんて、それがハンドメイドイベントの明るい未来に繋がるのでしょうか。

 出展者にとってイベントは弱肉強食の世界。ブースによって人気・不人気が生じることも、イベントにおける真っ当な世間の評価です。私も初めて出展した頃は、朝一に行列をつくる人気ブースに憧れ、嫉妬し、負けないよう努力を重ねてきました。

 コアファンの熱意、初来場者への積極的なアプローチ、そして出展者同士の弱肉強食歯軋りバトルが、ハンドメイドイベントの今の熱気をつくってきたのだと私は感じています。

 当面は事前準備の徹底と迅速な会計、そして朝一だけでも誰かに手伝いをお願いして、整理券の配布ではない混雑回避の努力をしていこうと思います。


◉朝一以降、二日目(最終日)の動き

 さて話をデザフェス初日に戻しまして、行列はその後も途切れることなく、11時開場から4時間ほどただひたすらお会計に追われます。ありがたや。15時過ぎに会計列が途切れてようやく視野が広がってきます。そうだ俺は東京にいたんだ、なんて思い出すほど大忙しでした。
 以降はリピーターの方、初めましての方、朝一ダッシュの方がまた来てくれたり。軽快に作品の説明をするのですが、東京もようやく馴染んできたのか、足を止める多くの方に購入していただけます。
 特に多めに用意していたサーカステント(ミニ)は、会場限定価格で1,800円→1,500円と購入しやすく、以前別色を買ったので今回はどの色にしようかな、と毎回違う色を順に集めることを楽しむようにご購入していただくことも多くありました。

 1日で他イベント2日分以上を売り上げ、怒涛の初日を終了。ホテル近くの居酒屋で一人しっぽりと喜びともつ煮を噛み締めつつ、久しぶりに泥のように眠ることができました。

 そして2日目となる最終日。初日閉場後に疲労困ぱいの中、翌日の準備を既に済ませていた自分を、世界一エライ子だと自画自賛しつつ会場着。初日ほどの数はありませんが朝一ダッシュの方を落胆させないよう、各日全作品全カラーを毎回用意しています。のんびり会場回ったりしようかと思っていた矢先、開場1時間ほど前に衝撃の会場アナウンスが。

「悪天候のため15分開場を早めます」

 なんとっ…!15年以上イベント出展してきましたが、こんなことは記憶にありません。向こう隣の仲の良い作家さんとも「こんなことある!?」と。
 確かに雨は降っていましたが小雨程度。この秋一番の寒さとは言えまだ夏の香り残る秋空。(この夏のコミケの異常な暑さ、ゲリラ豪雨に比べたら…!)

 開場15分前は最後の準備で大忙しとなるので、2日目のみ出展の方は大変だったろうな…と思いつつ、初日閉場後に翌日の準備を済ませていた自分は、宇宙一エライ子なんじゃないかと自画自賛しつつ、開場を迎えました。

 2日目も朝一ダッシュのお客様に恵まれ、大忙しのスタート。昼頃にはブースも殺風景となり、売り上げは緩やかに下降しますが、それでも絶えずお客様に来ていただきました。


デザフェスVol.58を終えて

みんな大好き売り上げについて

デザフェスVol.58の完売率と売上割合

 今回は主力となるメイン作品がほぼ完売し、狙い以上の結果となりました。前項で書いた通りサーカステントの完売率も高く、メイン作品が完売してもブースが殺風景にならないようたくさん用意したにもかかわらず、色によっては完売も目立ちました。
 一方ミニチュア作品はメイン作品の「ついで買い」をしてもらえるよう用意していたので、メイン作品が両日共に昼過ぎにはほぼ完売している以上、過去イベント平均に比べて低い完売率となりましたが、全売上において占める割合は大きくないため、メイン作品人気のための意味のある弊害とも言えそうです。

 結果、予想を大きく上回る売り上げ目標金額+40万円を達成!また初出展の前々回の売り上げから、前回+40万→今回+25万と売り上げも順調に伸ばせました。
 9月のイベントで目標金額-40万円を叩き出してしまいましたが、デザフェスで何とか巻き返し。これ全てご来場いただいたお客様のおかげでございます。本当にありがとうございました…!!!


◉改善点、反省点、次回に向けて

 冒頭でも書いた通り、今回は
・魅力的なブースを新たに設計&制作し、当日お披露目する
・新ブースと連動した新作を展開する
・主催に依存せず、独自にSNS等で宣伝する
・地域に合わせた人気作品を重点的に準備する

 に重点を置いて、前回イベントから改善をしました。これら全てが良い結果を生んだ要因だったと確信を得て、今後のイベント出展時にも毎回心がけることだと再認識しました。
 改善点としては、持ち込む作品数の増加とともにブースが手狭になってきたこと。2ブース借りようか、人員を増やそうかと思案中ですが、次回デザフェスは開始時間が1時間早まる一方、搬入時間も早まるのかは現時点では公式アナウンスがなく不明のため、取り急ぎ次回は様子見で、今回と同じMブース1つで臨みます。抽選受かりますように!

 良かった時は良かった点の、
 悪かった時は悪かった点の理由を探る

 当たり前のことですが、大事なことですね。

 また今回のイベントで特筆すべきは、ライブコマースが体感で激減したこと。懲りずにやっている人もいますが、堂々とカメラを向けられることは非常に減りました。
 というのも今回からなのか、デザフェススタッフの方々とは別に、警備会社から派遣されたであろう国際色豊かで屈強な(本当に屈強)アニキ達が、会場内をずっと歩き回ってくれていました。
 ライブコマース禁止の札を常に掲げながら歩いてくれるため、転売ヤーもさすがにあの風貌にはビビったのでしょうか。転売ヤーに辟易している私としては、超神対応と言わざるを得ませんでした。


どれだけ稼げば心が休まるのか

触れずにはいられないアノ件

 大成功で終えることができたデザフェスでしたが、イベント後に世間を非常に賑わせるアノ事件がありました。私には実害がなかったため、事件自体に言及することはしませんが、その背景にある大型イベントならではの課題と出展者の心の悩みについては書き留めておきたいと思います。

 そもそもの「イベント会場での食事」問題は以前からありました。

・キッチンカーで食べたいけど行列が凄くて並ぶ時間がない
・近辺のコンビニが少ないorあっても大行列
・食べる場所が少ない

 などなど。これらの問題を一部解消したのが、今回の事件の現場となった「フードエリア」での食べ物の提供でした。

◉フードエリアができたことで

 いつからか、私たちハンドメイド作家と同じ枠で、事前に調理済みのクッキーなどのお菓子やパンなどを販売する「フードエリア」が出現しました。
 キッチンカーと比べてその場で調理する必要がないため行列も少なく、気軽に買って立ちも食いできるフードエリアの食べ物は、出展者にとっても救世主でした。

 出展する際、食事の用意とタイミングは見落としがちな問題です。朝からイベント会場付近のコンビニも開場後のキッチンカーを大混雑で、一人出展では当然イベント中にゆっくり食事を買いに行く時間もありません。そんな時はトイレ休憩ついでの短い時間でフードエリアに寄って、即戦力となるエネルギー量の高い、それこそマフィンのようなものを買って空腹を凌ぐことも過去にありました。

 私は前夜や当日朝に宿泊先近くのコンビニで朝、昼、間食と、おにぎりやカロリーメイトなどの一日分の食事を購入し、自前の保冷バッグに入れてブース内に置いています。開場前に食べられるだけ食べて、お客さんがいない隙に昼食や間食をつまむような感じです。一人出展の多くの方は皆このようにしていることでしょう。

 フードエリアの充実は、来場者にとっては間食やお土産、差し入れとしては最適であり、出展者にとっては命を繋いでくれる貴重なエネルギー補給ポイントでもありました。


でもそれ、本当に大丈夫?

 しかし、私は「自身が出展時にフードエリアで食べ物を買うこと」はできるだけ避けていました。

 全てのフードエリア出展者がそうではない、と前置きをしますが、早朝の搬入口付近では我々と同様にフードエリアの方々も搬入作業を行います。
 夏場でも冷蔵機能のない普通の車(ハイエースや1BOX)で会場に持ち込んでいる人を散見するし、いつ調理しているかは分かりませんが、朝5時に自分の店から販売物を運び出したとして、少なくとも開場するまで5-6時間は屋外、車内、室内常温の中を食べ物が移動していることになります。
 地元の大型イベントでは夏場でも開場直前にならないとエアコンが効いてこず、外気と変わらない環境下で保管されています。

 気になるのは、今回のアノ件は、アノ出展者、たった1ブースだけの超レアケースなのかどうか

 アノ件のように5日前ではなく例え前日〜当日に調理いたとしても、冷蔵庫から出してから販売するまでの過程に、果たして問題がないのか。上記の状況を毎度見ている早朝搬入組の出展者としては、どうしても気になります。

 何度も前置きしますが、全てのフードエリア出展者がそうではないとしても、一度ボロが出てしまった以上それがごく一部なのか全部なのか、違いは食べてみるまで私たちには分かりません。

 これはお祭りの出店にも言えることです。生まれた土地大阪でのお祭りでは、ふと垣間見る出店の裏側の凄惨な状況(夏場のドブ川のすぐ横でポリバケツにたこ焼きの液を蓋なし放置等)を多々見てきました。
 それでもお祭りの雰囲気と空腹に負けて買って食べて美味しい!となるし、「そんなことまで気にしていちゃ祭りに乗り遅れちまうぜ!」となるのですが、それはあくまで来場者としてお祭りやイベントに行った時のことであって、「出展者」としてイベント会場にいる以上は、体調管理には非常に敏感になります。

 その場で火を入れて調理、即提供しないことと、上記の通りフードエリア出展者の搬入作業を目の当たりにしている以上、出展時はなるべくコンビニで買った食事で一日を過ごすようにしています。
 どのように選択するかは各自の自由ですが、少なくとも私は会場で腹痛になったらもうそこで試合終了です。そしてイベント後にもブランドは続くし、本業のデザイン事務所の仕事もあります。個人事業主なので、体調を崩しても何の保証もありません。
 

 そもそも大型イベントで調理済みの食べ物を提供すること自体に無理はないのか。無理があるなら改善はできないのか。ブースによっては冷蔵庫をきちんと持ち込んでいるところもあるし、フードエリアだけでも前日搬入できれば、安全面はグンと上がる気がします。
 
 大型イベント時のフードエリアについて、資格や調理環境だけでなく、特に夏場の搬入方法、販売方法を主催者と出展者には見直してほしいところです。


もう一つの問題点、どれだけ稼ぐのか

 食の安全面はさて置き、もう一つの問題点として「より多く稼ぎ続けなくてはいけない」という心の悩みにも注目すべきかと思います。
 アノ件の方だけでなく、全ての出展者に言えることですが、私たち出展者はどれだけ稼げば心が休まるのでしょうか。先に結論を言えば、どれだけ稼いでも飽き足らず、心休まらないのです。

 今回私はデザフェスにおいて、問題点を克服して売り上げを伸ばすことができました。過去の自分にとっては大満足すぎる結果です。しかしその結果を通り過ぎた今、次はどれだけの売り上げを目指さなくてはならないのでしょうか。

 フードエリアはそれ以外の一般ブースエリアより大きな売り上げを出していると推察しています。ハンドメイド、デザイン、アートのイベントにもかかわらず、物欲は食欲には勝てないのです。(そもそも物欲と食欲を同じフィールドで展開すること自体も、デパ地下の「惣菜売り場」で「婦人服」が売れるのか、という疑問に発展しそうですが、脱線が過ぎるので今回は置いておきます)

 そんな売り上げ率の高いフードエリアで今回は1,000個売れたから次は2,000個つくろう。次は2,000個売れたから3,000個つくろう。資本主義社会である以上、常により高い売り上げ目標を立てざるを得ません。でも3,000個つくるのは1日では無理だから、2日前からつくろう。次は5,000個…となったら…?何日前からつくる?人員は増やせる?大量生産に耐えうる設備はある?

 フードエリアとそれ以外のブースとの違いはただ一点のみ「腐るか腐らないか」。私の作品は5日どころか半年、一年常温放置しても腐りも歪みもしませんが、フードエリア出展者は同じ出展者でも「つくるもの」はまるで別モノです。

 この2日間で必ず!一気に!売り切るんだ!

 という心構えと、

 まだ売れる!もっと売れる!

 という飽くなき向上心が、今回のアノ件の背景にもあるであろうし、必然と言えば必然。これが全ての出展者に共通する「どれだけ稼げば心が休まるのか」という心の悩みなのです。


「つくること」と「お金」のバランス

 正直、今年の年間の売り上げが向こう20年続くなら、我が家も安泰、万々歳です。しかし「売り上げを伸ばすこと」よりも「同様の売り上げを継続すること」の方がとても難しいことを、知っています。

 クリエイティブの世界にいる以上、変化がないことは進化もないことであり、変わらない何かと変わっていく何か、変わるべき何かを見極めながら、日々向上心を持って戦い続けなくてはいけません。
 今年と同じことをしていれば、来年も再来年も同じ売り上げを出せるものではなく、常に変化と進化に敏感になっていないと、個人事業主なんぞはあっという間に路頭に迷ってしまいます。

 しかし売り上げを伸ばすことに執着し過ぎてはいけません。お金を稼ぐということは目的でもゴールでもなく、絶えず繰り返すクリエイティブ活動を続けていく上でのほんの一部の事象でしかありません。

 お金を稼ぐことに重きを置きすぎては、今回のアノ件のように私も陥る可能性は十分にあります。

 我が家においてより多く稼ぐということは、昼は会社員として働きながらも夜や休日に手伝ってくれる献身的な奥様の負担が増えることを意味し、「もう付き合ってらんねぇ!あたしゃ出てくよ!」となってしまうことだけは、何よりも絶対に避けなくてはいけません。

 作家として、より良いものを(奥様の負担が増えない範囲で)より多くつくることだけを目標に、これからも自分に甘えず頑張っていきたいと思います。

「つくること」と「お金を稼ぐこと」と上手に付き合いながら。


大好きなビスケットブラザース/作品を可愛いと褒められる度に頭に浮かびます。

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