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日々、丹念に生きていく

「やりたいことや目標がないんだよね」。そんな話を友人から受けた。

まあ、別に私もこれといってやりたいことや目標があるわけじゃない。
仕事で出世したいとか、家や家族を持ちたいとかも、あんまり考えていない。

いや、もらえるお金が増えるのならもちろん出世はしてみたいけれど、
周りの人たちのレベルが高すぎて、あまり現実的ではないなと思ってしまう。

まず、今の仕事に就職できた時点で、
もう一生分の運や気力を使い果たしてしまった気がする。

家族を持ちたい以前に、今は恋人と呼べるような人はいない。

欲しいとは思うけど、現実は厳しいというか、
学生の頃のような失敗は繰り返せないよなと考えてしまう。
独りは寂しいけれど、誰かでこの穴を埋め合わせるのではなく、
向き合うべきは、まず自分のこの”内面的な焦り”なような気がしてならない。

自分自身が精神的に自立していないと、また同じ過ちを繰り返して、結局ひどく傷つくだけだ。そりゃ、取り急ぎこの渇きを潤したいとは思うが、誰かと関係を築くには、まず自身の心の成熟が必要なのだと、最近考えるようになった。

周りの人たちを見ていても、恋人がいたり結婚している人は、自分よりもっとしっかりしていたり、一言で言うと「大人」って感じがする。

いや、みんな大人なんだけど、
もっと内面的な意味で、精神的な逞しさが全く自分とは違うというか…

だから、今の目標を強いて言うのなら、「大人」になることだと思う。
幼少期にイメージしていた「大人」って、もっと自分のことは何でもできて、知らないことなんて何一つないような存在だった。

だけど、いざ自分がその年齢に達しても、
そのイメージには全然追いついていない。

人に頼ってばかりで、
自分のことすらままならなくて、
知らないこともたくさんある。

そもそもいくつから「大人」になるのかもよくわからない。

社会に出たら、当然大人扱いされる。
もう子どものように誰も甘やかしてはくれないし、
知らなかったでは済まされないことも多い。
だけど、大人たちだってすべてを知っているわけではなく、
本当に一つ一つを掴むようにして、
少しずつ理想の自分像に近づいていくのかもしれない。

***

金曜ロードショーで『コクリコ坂から』がやっていた。

毎回観て思うのだが、登場人物たちがまだ学生なのに、
精神的に大人だと感じる。

朝からコクリコ荘に住むみんなの朝食を作って学校に行き、
学校が終わってからも食材を調達してまたみんなの食事を作る。

自分が同じ年頃の時は、料理なんてまともにできなかったし、晩御飯の献立を考えたり、お金を管理したり、さらにそれを習慣として身に着けているのだから、主人公のメルは本当に立派だと思う。

メルが想いをよせる風間俊も、メルに進路のことを聞かれて、
「うちは貧乏だから国立狙いかな」と答えている場面が妙に印象的だった。

自分の家の経済状況なんて正直未だによくわからないし、加えて自分の家が周りの人たちと経済状況を比較したときに、どこらへんの立ち位置なのかも高校生の時の自分には何もわからなかった。

そういうのを意識し始めたのは大学に入ってからで、受験する時に予備校に通わさせてもらえたとか、奨学金をどれくらい借りたとか、そういうやり取りを通じて少しずつ理解していったのを覚えている。

後は二人の恋愛模様も精神的に洗練されているように感じた。

お互いに好意を寄せているのはわかっているはずなのに、敢えてストレートには表現せず、つかず離れずの関係を築いている。

自分が同じ頃はもっと胸をときめかせていたというか、もっとチンパンジーになっていたものだ。”恋は盲目”と言うけれど、まさにそれを体現した状態にあった気がする。

だけど、二人からはそんな動物の本能的なものは感じず、人間味がとても強かった。

最後はメルの方から気持ちを伝えて、無事に二人を自分たちの意思を確認した。それもとても素敵だと思った。

女性の方から好意を伝えるってとても勇気がいることだと思う。
いや、男性が気持ちを伝えるのももちろん大変なのだけれど、日本人の価値観的に女性から気持ちを伝えるって、”恥ずかしいこと”みたいな風潮がある気がする。

映画やドラマを見ていても、
大概は男性から「付き合いましょう」だとか
「結婚しましょう」と言って、男女は結ばれていくものだ。

今日では、男だから、女だから、みたいな”らしさ規範”から少しずつ解放されつつあるけれども、当時の女性にとって男性に想いを伝えるというのは、相当ハードルが高かったのではと思っている。

そういう気高さや逞しさが、メルという人物の魅力なのかもしれない。

***

最後に”日々、丹念に生きていくこと”が大事なことだと思った。

要はあらゆることに対して、丁寧に向き合っていきたい。
コクリコ坂を観ていても、朝からご飯を炊く、みんなで食事をする、学校に行く、という日常の描写が丁寧に映し出されていた。

我々の生活も一緒で、普段何気なくやっているような家事や習慣も、少し心を込めてやっていくだけでも、何かが変わるのではないかと考えるようになった。

職場の人たちとの関りや、友人と話すときも、いつもより相手のことを想ってつながりを意識することで、いつもとは違う一面や引いては自分自身についても明らかになることがあると思う。

今、こうしてnoteに綴っているのも、
1週間に1本は自分自身について振り返ろうと思って書いている。

振り返ることで自分の心の点検をしたり、
うまくできなかったことについて内省する。

”いつもの行いに心を込める”、”自分の行動を振り返る”
そういうのを少しずつ積み重ねていくことで、自分自身のことについて少しわかるようになったり、理想の自分に少し近づくのではないかと思う。

2023.7.16



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